この夏の星を見る
辻村深月 2023年
・あらすじ
・感想
2020年春、私はこの時中学3年生で高校受験を控えていました。まだ最近のような感覚ですが、もう3年前のことなのですね。この3年間でコロナの状況もだいぶ落ち着いてきたように感じます。この作品はコロナ禍になったばかりの何もできず、ただ周りに翻弄されているだけの状態から、自分たちでこの状況でできることを見つけ、成長する姿が描かれています。今回は印象に残った章をすべてではありませんが、紹介できたらと思います。
・第一章 いつもが消える
1回目の緊急事態宣言が出され、全国の学校が一斉に休校へ。先行きの見えないくらい日々の中、どうすればいいのかわからないそれぞれの学生たちが途方に暮れている様子が描かれていました。私もこの頃、休校状態が続き時々、登校日が設けられるくらいであとは自宅学習。日を重ねるにつれて、巣ごもりすることが嫌になっていきました。ここに出てくるそれぞれの登場人物たちも同じだったようで、3年も前の感覚ですが、確かこんな感じだったと思い出しました。
・第二章 答えを知りたい ~ 第四章 星をつかまえる
やっと感染状況が下引きになり、登校が再開となりました。しかし、こういう状況の中では感染リスクがあるということで、さまざまな行動制限が行われました。修学旅行や文化祭、体育祭は中止。夏の大会も中止。3年生にとっては最後の晴れ舞台がなくなってしまいました。その中でどうにか思い出を作りたいと考え、様々な妥協や試行錯誤の末に、いくつかと学校と「スターキャッチコンテスト」をリモート形式で行うことに。コロナだから何もできないという状況を、何とか抜け出そうとする学生、教員たちの姿が描かれていました。「ただ上が決めたルールや制限に従って生活しているだけでは、何も思い出に残らない、あまりにも味気ないし、勿体なさすぎる」という想いは、この当時中学生だった私も感じていましたし、周りにもそんな雰囲気があるように感じました。
コロナによって人と人の物理的距離は離れても、それによって新たな出会いもあったということをこの作品は伝えています。リモートでのイベントを通じて、最終的に50校以上の学校が参加し、翌年も開催され、毎年の恒例行事となっていく様子が最後には綴られていました。環境や周囲に流されず、できることを行おうとするそれぞれの姿。諦めないことの大切さを実感し、ここまでの大規模なものでも誰かと手を組むことでそれに匹敵する大きな力になることを実感することのできる作品でした。
・書籍情報
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