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10年間飲みかけの午後の紅茶に別れを告げたい

岡田悠 2021年

・あらすじ
ペットボトルやトリセツ、入浴剤など、家の中にあって、普段、身近で何気なく使っているモノ。それらになぜか狂気というべきこだわりを持った人がいる。人とモノがつながるエッセイ。

・感想
家族からの勧めで読んでみました。普段何気なく使ったり、見たりしている、ペットボトルや、取扱説明書など。それらになぜか、物凄い執念をもち、一風変わったようなことをする姿が描かれています。

特に印象的だったのは、第1章と第2章です。第1章は「午後の紅茶」の話です。ある日、飲みかけの「午後の紅茶」が出てきました。それを、捨てずに自分の彼女のように大切にしている姿が描かれています。ただの飲みかけの「午後の紅茶」を、まるで彼女のように大事そうにしていて、中身の状態を確認するために新品と一緒に、どこかの研究室に送って調査してもらったりしていました。そして、別れたいと言い出した時には、手紙まで書いて、ただの紅茶飲料を、ここまで人間味あふれるように書いているのが面白かったです。最後のほうの紅茶目線から書かれたところでは、「何この男?」みたいな感じで、気持ち悪がっている様子も書かれていて、にやつきながら読んでいました。

第2章は携帯電話の取扱説明書の話です。説明書に書いてある例文で、度々見かける「ドコモ太郎」のような、名前の人には人生があるのかという、これまた、誰も思いつかなさそうなことに疑問を持ってしまう、男の人の話です。

そして、400ページ以上あるトリセツ、554冊をすべて読み込み、その中に書いてある例文をもとに、物語が作られました。なかなか、面白かったです。現実世界ではありえないようなことが次々と起こって、「えっ、それあり!?」と思わず言いたくなってしまうような感じで、もうハチャメチャなので、皆さんも、是非読んでみてほしいです。

普段使っているモノも、よく見たり、捉え方を変えるだけでも、ここまでの物語が生まれてくることに、驚きと面白さを感じる本でした。

・書籍情報
この本は2021年11月20日、単行本として発売されました。


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