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コロナと潜水服

奥田英朗 2023年

・あらすじ

早期退職を拒み、工場の警備員へと移動させられた家電メーカーの中高年社員たち。そこにはなぜかボクシング用品が揃っていた――。(「ファイトクラブ」)五歳息子には、新型コロナウイルスを感知する能力があるらしい。わが子を信じ、奇妙な自主隔離生活を始めるパパの身に起こる顚末とは?(表題作)ほか"ささやかな奇跡"に、人生がいとおしくなる全5編を収録。

『コロナと潜水服』あらすじより引用

・感想

彩り豊かな5編の作品から成り立つ短編集です。名前だけは聞いた事はありましたが、なかなか手が出なかった作品です。タイトルを初めて見た時、「コロナと潜水服って、どういう関係なんだろう。なんでこんな名前なんだろう??」と思って謎かった🙄

いずれも過去と今を繋ぐ物語といった感じです。1章は幼くして亡くなった子どもの霊が住み着く家のお話、2章は工場で働く中年社員が物置に放置されていた用具を通して、自分が勤めている会社に実業部が昔あったということを知るお話、3章は段々うまくいかなくなる男女関係のお話、4章は新型コロナを感知する能力を持つ子のお話、そして最後は古い車を通して、以前の持ち主の軌跡を追うお話でした。

どの章のことも実際に起こりそうなことだけども、よくよく考えてみたらどこかおかしな点があり、その点と点を結ぶことが出来ない状態が描かれていました。実際に普段生活している中でも、「あのときなんでこうなったんだろう。それってちょっと変だよね。」と思うことがあるかと思いますが、そういう自分たちには見えない力がはたらいて何かが起こっているのではないかと考えました。

あと、5章を読んで感じたことですが、ものには魂が宿っていると感じました。「そんなわけあるか」という人もいるかもしれませんが、長年大事に使い続けてきたものを手放そうとするとき、名残惜しさを感じたり、その物が泣いていると思ったりすることと同じことのような気がしました。なんでも捨ててしまうことは勿体ないことだし、ものにだって人と同じような魂が宿っていそうに感じ、一度手に入れたものは大切に使っていきたいと改めて感じました。

霊感やオカルト話は普段生活している時では実物がないため、実感が湧かないものですが、何かがあるようにも感じますよね。物事は何事も見えない力によってコントロールされているのではないかと感じる作品でした。


・書籍情報

コロナと潜水服 奥田英朗
初版刊行:2023年12月20日
刊行元:光文社
定価:本体700円+税
ISBN978-4-334-10154-1
備考
すべて「小説宝石」
「海の家」2019年7月号
「ファイトクラブ」2019年11月号
「占い師」2020年4月号
「コロナと潜水服」2020年7月号
「パンダに乗って」2020年11月号

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