見出し画像

仁淀川

宮尾登美子 2000年

・あらすじ
満州で敗戦を迎え、夫と幼い娘と共に必死に引き上げてきた二十歳の綾子は、故郷高知県の仁淀川のほとりにある夫の生家に身を落ち着ける。農家の嫁として生活に疲れ果てて結核を発病した綾子に、さらに降りかかる最愛の母・喜和と父・岩伍の死。絶望の底で、せめて愛娘に文章を遺そうと思い立った綾子の胸に「書くことの熱い喜び」がほとばしる。作家への遥かな道のりが、いま始まったー。

『仁淀川』あらすじより引用

・感想
先々週末、図書館に行ったときにこの作品を見つけました。去年、一作品宮尾さんの作品を読んでおり、歴史作家ということは知っていましたが、まだまだ漠然としていて分からないことばかりでした。

戦後まもないないころ、敗戦したことで満州から日本に帰ってきたある女性の話です。農家の嫁であり、それを手伝う生活に疲れてしまったのか、結核を発症。さらには大切な父・母を短期間に相次いで亡くし、悲しみに明け暮れている様子も描かれていました。何度も生きることに疲れを感じ、折れてしまいそうになりながらも、ひとり立ち向かう強い女性という印象でした。

この本は「簡単なことで諦めてはいけないのだなぁ」と感じました。病気にかかり、高熱が出た上に、喘ぎあえぎ呼吸をしていつ死ぬかも分からない状態でも、誰かの助けを借りたり、薬に頼ったりしながら、なんとか、生きようと必死に藻掻いた結果、後年になって病状が良くなったと書かれていました。この当時、結核はまともな治療法もなく、治るのが困難だったそうです。この作品でも、綾子の親族が何人も結核で倒れたと書かれていました。なので、本当に奇跡のような話だと感じました。

自分がこの時代にもし生きていたとしたらどうなってしまうのか、まともに食事もすることが出来ず、飢えに苦しみ、ショッピングセンターに行って遊ぶどころか、満足に服も買えない状況が続く、しかも、そのうえで結核を発症したり、両親を亡くしたりするのです。多分、耐えられません。そう考えると、今の自分は本当に恵まれていると感じました。この時代の人は本当に忍耐強かったのだなぁと感じました。小さいことでくよくよするようではこれから先、生きていけないと感じております。

去年、『東福門院和子の涙』を興味本位で読んだことで宮尾登美子さんという作家を知りました。母が若いころ、この方の作品がとても好きだったようなので、その時の名残で今も本棚に何冊も入っているようです。また学校の教科書にもこの方の作品が載っていました。個人的に結構気になる作家さんになってきたと感じております。また別作品も読みたいと思っております。

・書籍情報
初版発行日:2003年9月1日
刊行元:新潮社
定価:693円(税込)
・備考
単行本:2000年12月

この記事が参加している募集

読書感想文

歴史小説が好き

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?