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まわれ映写機

椎名誠 2003年

・あらすじ
「汝映画を作りなはれ」アフリカで僕は確かに神の啓示を受けた。その日から、素人集団によるムボーな映画製作が始まった。僅かな予算、ロケハンなし、撮影スケジュール無視、連夜の宴会…。そうして誰もが完成を、危ぶむ中、ようやく公開に漕ぎ着けた『ガクの冒険』は、予想外の大成功を収めたのだった。映画への情熱に溢れた大河私小説。

本書後ろのあらすじより引用

・感想
今まで、椎名誠さんは作家というイメージが強かった私でしたが、映画を過去に作ったことがあるということは、本当に初めて知って驚きました。

子どもの頃に趣味で8ミリカメラを使うことから始めた映像に対しての興味は、大人になってゆくにつれて、徐々に思いが強くなっていき、最終的に劇場映画を作ってしまうほどに。その中には一筋縄ではいかない様々な困難に見舞われることもあるようでした。

子どものときに何となくで始めた趣味、ただその時は何も分かっていなくて、手探りでカメラを使って覚えていっている様子が見て取られました。その後、趣味を磨き最終的に劇場映画をつくることになるのですが、撮影では、わざわざ四万十川まで行き、キャンプをしながら撮影をしたり、実際にそこに生息する虫や動物を使ったりしていて、凄い熱量が伝わってきました。また、撮影が終わって、東京に帰ったあと、映像を確認したときに納得がいかない場面があったときは、何と、夏なのにも関わらず、撮り直しをしていました。

こうやって、その作品を撮るためなら、危険な場所にも足を運び入れ、不備が見つかったら、わざわざ撮り直しをするために、また同じ環境の場所で、撮影し直す。その業界の人は今までずっとやってきたことなのだろうなと感じました。凄いなぁと率直に思います。

普段映画を観るとき、内容ばかりを気にしてしまいますが、その背景には、スタッフさんや役者さんたちの苦労の末に出来上がっていることを実感させられました。いつも、忘れてしまうことです。

この方は中学の時に国語の教科書に載っていて知った作家さんでしたが、過去に映画を制作した経験があることは、これまで全く知りませんでした。本当に意外尽くしの読書体験となりました。

・書籍情報
初版刊行日:2007年2月10日
刊行元:幻冬舎
定価:本体571円+税
備考
この作品は2003年11月幻冬舎より単行本として刊行。

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