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死が二人を会わすまで

注意

※当noteは西沢5ミリさんのC100新刊『ぼくらは呪いを受けて生きていく』に収録されている『ぼくらは呪いを受けて生きていく』の感想noteになります。
まだ読んでない人は回れ右して今すぐ西沢5ミリさんのpixivに飛んでください。
ここで読めるので!今すぐ読んでこい!頼む!

感想前のもろもろ話:

正直な話をするとコミケに来た段階ではあんまり目をつけていなくて、というかどこでどんな本を出すかも把握していませんでした。

というのも普段見ているFPSつよつよVtuberと某ホロの精神年齢クソガキVtuberのママをしていることや、ツイッターに一口ラブコメ(便宜上そう呼びます)を時折載せてはバズり散らかしているのを知っているくらい(あと自分のコスプレ(?)をして踊ってみたを投稿してたり)で、絵が性癖ド直球180km顔面ストライク!ってわけではなかった。

買うことになった経緯は今朝8月13日、コミケの開場待ちの床座りでケツと腰と尻とヒップを破壊されそうになりながら暇つぶし兼モルヒネ代わりにツイッターを眺めていたらリツイートで西沢5ミリさんのサークルのおしながきが流れてきたのです。

ここで唐突にクソキモい癖を暴露すると、気になった人のツイート欄を少し遡ることがあり、それで今回感想を書いている『ぼくらは呪いを受けて生きていく』のツイートを見つけました。
最初の四ページだけ読んで、四ページ目で「おもしろそう!」となって買うのを決定した感じです。

これは余談なんですが、今見返したらツイートで漫画内容全部読めました。これ全部載せるのどうなっとる?腹デカすぎんだろ…(紫宮リスペクト言い回し)

さらに余談ですが、買った後の紙バッグがデカすぎて笑ってました。あれ持って歩いてる人を見て「ぼくもあのちょっとエッチでデッカい紙バッグ欲しい!」ってなったのも購入要因の一つです。キャラプリントされたでっけー紙バック持って帰るのコミケの醍醐味や。最高や。実際あれに買った同人誌全部ぶち込んで帰ってこられたので買って良かったです。

感想:

すっごい良かった(語彙力)。
間断なくインプットとアウトプットを続けている人の強靭な創作物って感じ。
全部良すぎたので、良かった点を具体的にピックアップして話していきます。
まず表紙が良い。かわいい。小指立ててるのかわいいね……

1〜4
1ページ目のドアップなポージングと二ページ目のとびきり笑顔。これはファンになりますわ!ガハハ!
そして4ページの急転直下。ここで物語にグッと引きこまれる。主人公の髭をそっていない顔を写すの、茫然自失となって何も手につかないことを一発で示す演出なのですごい。

5〜8
5ページと6ページの主人公の語りが細かい部分だけどすごく良い。
5ページの結局他人の死すらコンテンツとして消費して、悲しみもそこそこに乗り換える無情な奴らに憤る描写は上手いな〜!って声でたし、6ページの自殺についてのセリフもすごい。主人公の後ろ向きに頭が回る性格を表しているし、”練炭で失敗すると後遺症が残る”など、一歩踏み込んでリアリティを持たせた台詞によってグッと引きこまれる。
と思ったら逆さま沙月のドアップですよ。『死ぬほど好きってこういうことかぁ〜?』好き。

9〜12
死んだはずのヒロインの登場。そして生前と変わらぬキャラによって一気に展開が明るくなっている。絵柄(と言っていいのかわからないけど)をデフォルメ調にしたりしてコミカルな演出を一押ししたりと漫画が上手い。
あと沙月が佐藤太郎のTwitterをエゴサで知っていたり、グッズで部屋が溢れていたり、『チェキ会の時はもっと近かったじゃん』等のセリフで過去の積み重ねがあることを示す演出も上手い。あとあざとかわいい。かわいい。
閑話休題。
恋がしたい、という。これがこの物語の軸=メインになっていく。
そしてリアリティ②。アイドルたちの恋愛事情。『お気楽ワンナイトしたい人間たちの集まり』という”嘘か本当かはわからないけど、とにかくリアリティがあるセリフ”。すごいなあと思う。

13〜16
ここのシーンめっちゃ好き。こういう暗かったり苦かった過去の話を出して、それでも小さいナニカに救われていた、みたいなのに弱いです。このシーンだとヒロインの真面目さとそれによる不遇、そして主人公の一意っぷりによって救われていたことがわかる。めっちゃ良い。
そして16から主人公の卑屈タイム。と思いきや沙月怒涛のお説教。

17〜20
ここ、絵柄をデフォルメ調にして真面目さを緩和できるの、漫画とかのイラストがある媒体ならではの演出で羨ましいなと思う。小説ではできないので!
ちなみにここに書いてあること本当に全部その通りなので身だしなみ気を使ってないオタクは18で沙月が言ってることやりましょう。19は流石にオタクにはレベルが高いです。ここのいろんな笑顔かわいくて好き。
そして20のあざと上目遣い両手組みお目々キラキラおねだりポーズ、ズルがすぎる。こんなんチーターや!

21〜24
さとたろ劇的ビフォーアフター。
22の幸子の下り。ここ地味にめちゃくちゃ重要だと思っている。どこがどう、と具体的には言えないけど!『勝手に親近感湧いてた』からの『でもオレからしたら鈴宮沙月は鈴宮沙月だから』と突き放されてあのコマの顔になる。この一連の流れが感情値の観点でめちゃくちゃ大事な気がする!
と思ってたけど見返して考えてたら『デートのプランちゃんと考えるから』の部分の感情値調整な気がしてきた。多分そうだと思います!
あと24のパジャマ姿かわいくてビビり散らかした。生足魅惑のトップアイドル。
それとさとたろのセリフ長すぎて初見半笑いで飛ばしちゃった。許せさとたろ。

25〜28
この『……嬉しい』若干引いてない?だいじょうぶそ?
そしてここミッドポイント。
キスできるかどうか、正確にはキスをしてもらえるほどの恋愛感情を抱いてもらえるか、が次の焦点に。
26〜28にしざ〜節だな〜、と思った。えっちな方にぐん!と踏み込んでいくけどエロまでは絶対描かないこの感じ。一口ラブコメで何度も見せてもらったぜ!
あとさとたろが自慰行為をしなかった理由を言った時に『あたしのせいか……』ってなってるの沙月も大概優しい子だなと思いましたまる。別に死んだのもさとたろがインポになってたのも沙月悪くないのに!なお本当にEDになった時はきちんと医療機関にいきましょう。

29〜32
完全なミッドポイント。中盤の盛り上がり。
鈴宮沙月を”そういう目”で見たくない、と、拒絶するさとたろ。
そして怒られ大学へ。こういうところの演出コミカルなの良いな〜。
本当の負の見せ場のために純粋なそれをとっておいてあるのとても良い。

33〜36
良いよね〜こういう見返す演出。もう使い古されてるけど好きなものは好き。
あと彼女って宣言するの好き。そう、誰に何を思われようと自分から宣言したことが大事なんですよ。ただここの沙月の反応が黒トーン貼られてるのはなんでなんだろうって思った。デートのプラン考えるから、の時みたいにきらきらしても良いと思うのに。死ねる方向に順調に向かってるから、ってことなのかな。そんな気がする。
35、36の生活をしていくうちに細かい部分に気づいていくのもメッッチャ良い。完全にリアリティ③。ヒロインを完璧な偶像から自分(読者たち)に近しいものにして親しみを覚えさせる演出。う〜ん素晴らしい!でっけぇ口開けて笑うのも好き。アイドル時は歯並び気にして口を開けない笑い方なのもいいし、何より、心の底から笑わないとわからないことがわかってるのが好き。本当に良い。

37〜40
ここ、この作品で一番好き。この作品を超良作にしている一番の理由だとさえ思っている。”幽霊になってしまった彼女”という設定を遺憾なく発揮している。本当にすごいと思う。自分だったら思いつけてない。本当にここが作品として機能している良場面だと思う。

41〜44
41の沙月ほんとに好き。ちなみにこれを読み終えた後に表紙を見ると、影になっている部分の意図に気づけます。最高の表紙や。
そしていざデートへ。
『待ってないよ♡』の顔好き。あとこの辺もうさとたろの中での沙月の解像度が上がったのか肌荒れ見えてるのも好き。普段着で化粧あんまりしてない設定、みたいな感じなだけかもしれない。
デートの哀愁感じる瞬間めちゃくちゃ好きでエモだ…となっていた。

45〜48
そしたら今度はライブのエモだよ。エモ供給過多だよ。
と思ったらさとたろの悔恨。けれど、それを跳ね除ける沙月。
ここからが本当のエモであった。

49〜52
来世ではこうする、というのはつまり現世でやりたかったことで、それを語っているうちに涙が溢れるのは必然。
そして50ページ。個人的な好みでいっちばん好きなのはここ。
ここのさとたろの表情の違い天才だろ。自信満々に好きだと言えるアイドルの沙月と、複雑な経緯でこうなってしまったけれど、それでも確かに好きなフツーの女の子の幸子。
そしてキス。

53〜57
『沙月を見つけてくれてありがとう。アタシ(=幸子も含めた沙月自身)を好きになってくれてありがとう。』のセリフ本当に素晴らしいと思います。
そして最後の演出。もう言葉が出ない。
素晴らしいの一言に尽きる。
余分な言葉を付け足すとすれば、『オレは頭がおかしくなったのか』をここでもう一度持ってきてるの最高がすぎる。
あと『今のオレになれたよ』っていうセリフ選び。これは西沢5ミリのセンスを如実に表していると思う。
そして今ふと見たら最後の一コマまで髪の毛で左目が隠されているのに気づいて徹底してるな〜!と思いました。

終わり

ほんとすげえ作品でした。
良質な映画を見終わった後の気分。
この作品を表す言葉を考えた時、ふと思いついた言葉がこの感想記事のタイトルになりました。
pixivやTwitterで見た人もぜひこれは紙で読んで欲しい。それくらい威力がある。あとがきもめっちゃ良いのでぜひ……!
にしざ〜さん、本気で物語描いたらてっぺん取れると思うんですけどとってくれませんかね……?
とりま既刊の商業で出てるラブコメ短編集も買おうと思います。あとなんか百合?の新作もつい最近電子版で出たみたいなんで、電子は疎いんですけど頑張って読んでみようと思います。
完全にファンになってしまった……。これは宝物になってしまった。
創作意欲にめちゃ刺激を受けたので自分も頑張ります。

8月13日  20:15  台風が来ている中、Alexandros《閃光》を聴きながら



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