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やばー(短編小説27)

「ねー、もし今すぐさー世界が超平和になってさ、お金もなくなってさ、必要なものを分かち合いながら生きれたら、やばくね?」

「え、なにそれやばー」

「超平和ー」

コンビニの前でギャルたちが会話している。

「でもー、なんかそれ、暇じゃね?」

「あー、確かにぃ。お金稼ぐのとか、超かったるいけど、自分で働いた分をお金で手にしたとき、嬉しいしねー」

「え、なにそれやばー。超いい子じゃんうちら」

「え、基準どこよ?」

「え、細かいことはよくね?それともいい子イヤなわけ?」

「えー、なんかさー、優等生っぽいのは正直めんどいって思うー」

「あーわかるー」

「ちょっとダメなことするのが面白いよね。スカートとかも超短くしてー、メイクも派手にしちゃってー言葉もちょっと汚くしてー」

「うっわ、急に悪くなったw」

「やばー、うけるー」

ギャルたちの会話をこっそり聞いていた愛子は、心の中で思う。

ースカートとメイクと言葉で悪を表現してるつもりなの、めっちゃ可愛いー

ーそういうのをいい子っていうんだよー

世界の平和ですら、彼女たちには「うけるー」ようだ。

世界が平和になったら暇なんじゃないか。なんでもすぐ手に入って、何にもしなくても満たされてることは、暇なのか?

ギャルたちの問いは思考停止前ギリギリだ。

「あ、わかったー、だからスポーツとかゲームとかあるんじゃね?あれいつまでやっても楽しいじゃん」

「生きるってゲーム!やばーw」

元気な笑い声がコンビニ前に響いていた。


おしまい

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