台風19号をコーヒーで支える

長野市東和田で水道工事会社を営んでいる宮澤誠さん
台風19号災害で開設された避難所の1つ、長野市三才にある北部スポーツ・レクリエーションパーク(通称:北レク)で、台風災害後すぐの10月14日から避難所閉鎖までの約40日間、毎日コーヒーの提供をされていました。

自分の特技をいかした被災地支援

宮澤さんは、自身の会社紹介の一環として「いいあんべえ屋」という名前で、おいしい水を使ったコーヒーをイベントなどで提供していて、かねてから知識や道具などをお持ちでした。
ちなみにコーヒー豆は大阪から取り寄せるほどの本格派!

「日本全国で災害が起きると、何かしたい気持ちはありましたが、東北などは遠くてなかなか行くことができませんでした。台風19号では地元長野市でも被害が発生したため、今回は協力にいけると思い、家屋の片付けなどはいろんな方ができるだろうから、自分はコーヒーの提供に行こうと決めました。」

それから宮澤さんは、午後7時頃から午後9時頃まで、仕事終わりに毎日北レクに通いました。

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(5日目)

北レク14日目

(14日目)

北レク17日目

(17日目)

コーヒーを提供する理由

「避難所にいる被災者の方はもちろん、ボランティアの方の支援にもなれば。それぞれがホッとする時間になればいいな……と。」

宮澤さんが毎日通っていた時間は夕ご飯も終わり、避難されている方は就寝前の落ち着く時間。ボランティアの皆さんはボランティア活動が終わる時間。
その時にコーヒーを飲んでホッと一息ついて欲しいという願いがありました。

宮澤さんがコーヒーの提供に行っている時に、被災者の方が、避難所生活でのストレス、不安、悲しみ、やりきれない感情のやり場がなく、ボランティアの方に強くあたってしまったことがあったそうです。

「被災者の方もきっとボランティアの方にあたっても、どうにもならない事はわかっているのでしょうが、やり場のない気持ちをぶつけてしまったんでしょうね。そんな気持ちをくみ取りながら、ボランティアの方は協力されていたとは思いますが、それぞれやりきれない気持ちになったでしょう。」

そんな時に宮澤さんが提供する1杯のコーヒーは、とても大きな存在だったに違いありません。避難所で過ごされていた方やボランティアの方で、宮澤さんを知らない方がいないくらい「北レクのコーヒー」「宮澤さんのコーヒー」と親しまれたそうです。

届けたのは、人のぬくもり

自分の特技をいかして被災地支援に行き、多くの人の体と心と温め続けた宮澤さん。
避難所が閉鎖する最後の日、宮澤さんは避難されていた方から似顔絵をもらったそうです。

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宮澤さんが届けてくれたものは、どんな時も決して忘れてはいけない「人のぬくもり」だったことが伝わってきました。

台風災害から1年……。

『あの時北レクの避難所で飲んだ宮澤さんのコーヒーが飲みたい』『北レクのコーヒーが飲みたい』という声を聞いて、また皆さんにコーヒーを提供する機会を作ろうと、宮澤さんは、2020年11月15日に台風災害の大きかった津野地域の知り合いのお宅で、「りんごの薪の焚き火であった会」を開催しました。

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この会は、自らも被災して、地域のためにと活動を続けている被災者支援非営利団体HEARTY DECO(ハーティデコ)の皆さんと一緒に開催。北レクで避難生活をされていた方々などが焚き火を囲んで交流されていました。

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皆さん宮澤さんのコーヒーを飲んで楽しいひとときを過ごされていました。子ども達の明るい声も響いていました。

「またイベントを開催してほしい! という声をいただいたので、機会をみて開催したいと思います!」

笑顏で語ってくれた宮澤さんの周りには、たくさんの笑顔の人たちが集まっていました。

災害支援を通じて、人と人がつながり、広がっていく。
そんな風にして、また街が少しずつ元気になっていく。
希望の姿を見ることができました。