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猛暑と華

※これまでのあらすじ、もし、気になる方は、以下の話から、チェックして頂きたい。

 以降の話は、その後の大上百華(おおがみ ももか)と平島孝介(ひらしま こうすけ)の続きである。



「ん〜。いい香りだなぁ。こりゃあ〜。」

平島孝介こと、こうちゃんは、アロマの勉強の合間、よく、イランイランの香り勝手に嗅ぐ時がある。

「そんなに気に入った?」
イランイラン自体の香りは、私も、好きな方ではあるが、インパクトの強い花の香りは、その日の気分によって嗅がない。

「うーん。なんか初めて嗅いだ時はすごいパンチ食らったような、どきづい感じあったけど、無性にこの香り、嗅ぎたくなるんだよなー。」

精油のついたムエットを嗅ぐその漢の顔ったら、本当に締まりがない。
鼻の下伸ばして、垂れ目がますます垂れて、、、
はたから見たら、ただの匂いフェチ、動物でいうと、またたびにメロメロな猫って言ったところだろうか。

「もし、こんな感じの香水があったらさー、俺の華につけたら、やばいだろうなー。へへへっ。夜の可愛い子ちゃんが、いっぱい群がって、俺の虜に、、、。」

「はい‼︎もう、今日の勉強、終わり‼︎どエロ華男はお帰りください‼︎」

まだまだ、異常な暑さが襲うお盆休み。

今日はラベンダーやローズマリーのハーブ系の香りを勉強しているが、この変態漢のせいで、私の気分が悪くなった。

「あーーー‼︎すんません‼︎すんません‼︎大上先生‼︎ふざけてました。真面目にやるんで、どうかお許しを‼︎」

必死に頭を下げて、両手を合わせる華男。

「次はもうないからね。」
 冷たい態度を取りつつも、こうちゃんがつけたムエットから、イランイランの香りが漂う。ふと、引き締めた気がゆるむ甘く妖い香り、、、

「大上先生ありがとうございます‼︎ラベンダーの精油の続きします‼︎」
そう言って、ラベンダーのページに蛍光ペンで線を引く。

「ラベンダーかあ。この香りの香水もあったら、なんかおっしゃれーな感じもするけど、、、。あ、大上先生、質問。香水ってさー、精油も使われることあんの?」

「まあ、香水の材料で精油も使われることもあるだろうけど、普通、売られている香水は、それなりの材料とかで作られているだろうし、、、。」

「んじゃあさ、この目の前にある精油でも、香水に近いものはできるってわけだ。」
ニヤリと笑う華男。

もしや、、、
「大上先生‼︎俺からの提案です。」
威勢よくこうちゃんは、右手を高高と挙げる。言わせてたまるか。

「却下。」

「へ、俺まだ何も言ってませんけど⁉︎」

「どうせ、『イランイランイランの精油で香水作りたいです』って言うのでしょ。」

『なんで分かった。』と言わんばかりのポカーンと口を開けた、マヌケなこの漢の面と言ったら。

「そもそも、私も精油で香水作ったことなし、ましてや、イランイランの香水なんて、この暑苦しい時になんかドキづい感じして、合わない感じがする。」

「いやいや〜でもさー、ここのページにも、ほら、アロマオイル?とか、ディフューザー?の作り方のってるし、やってみよーよー。」

夏休みの自由研究じゃあないんだから、なんというお願いだろうか。 

「駄目。私も昔、いろんな香りのブランドしてみたことあるけど、難しいし、かえって変な香りになって、気分悪くなるかもしれないし。」

「んーじゃあさー、せめて、イランイランのお部屋?スプレー作ってみよよー。すんごく極薄の香りでもいいからー。」

「はぁ?イランイランのみのルームフレッシュナーっこと?結構きついそ。」

「大上先生お願いします‼︎気分悪くなったら、俺、責任取ります。作らせてください‼︎。」

この華男の垂れたウルウルの目。いかにも「お願い」ポーズの犬に見える。

 少し考えた。確かに、私個人、ラベンダーやレモン、ローズマリーなど混ぜて香りを作ったことがあったが、あれはやはり失敗だった。

精油1種類のみであれば確かに、問題はなかろう。

「んー。じゃあやる?。」

ぱぁと、華男の垂れ目が今日1番輝いた。




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