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エリアリノベーション えんどうさん|メンバーに聞いてみた

 omusubi不動産の紹介をすると「いろいろなバックグラウンドの人が働いていて面白いですね」と言っていただくことがよくあります。きっかけはそれぞれ違うけれど、「omusubi不動産」という会社に集い、同じ方向を目指して日々精進しています。

omusubi不動産の一番の魅力は、一緒に働いているひとりひとり。どんな人が、どんなことをしているのか。どうやってomusubi不動産にたどりつき、一見、ちょっと変わった不動産屋で働いてみようと思ったのか。この連載では、omusubi不動産の日常の様子を覗きながら、なかで働くスタッフに話を聞いていきます。

プロフィール
大学で建築を学び、住宅リフォームの営業・施工管理の仕事を経て、市民活動支援や公共施設の運営などコミュニティづくりの仕事に関わるように。
omusubi不動産では、物件の活用や運営を通して、その街や場所で過ごす人が楽しく健やかに活躍できるような方法を考えています。

本屋さんへ行くのも、本の話をしている時間も好き。ついつい語りたくなる3冊の本


――今日は自分を表すものとして本を持ってきてくださったんですよね。本を選ばれた理由をぜひお聞きしたいです。

左から順に池田彩乃著『目をとじて ひらく』、益田ミリ著『今日の人生』(ミシマ社)、安西水丸著『a day in the life』(風土社)

えんどうさん:学芸大学のプロジェクトの一環でブックマーケットを開催した際に、協力してくださったSUNNY BOY BOOKSで、ぽんぽん普段の感覚で本を買っていたら、お店の方に「本が好きなんですね」と言っていただいたんです。正直なところ「自分を表すものってないな」と思っていたんですが、何を持っていくか考えているときに、ふと先ほどの言葉を思い出して。意外と本って自分のアイデンティティなのかもな、と。

――自分のことって、自分より周りの方が見えていたりしますよね。

えんどうさん:そうなんですよね。あと、それぞれついつい話したくなっちゃう本なんです。『目をとじて ひらく』は前述のSUNNY BOY BOOKSさんで購入したんですが、すごくおもしろい本なんです。片方から読み進めると昼の詩で、反対側から読むと夜の詩になっているというもの。

えんどうさん:『今日の人生』は、どうでもいいようでどうでもよくないような今日の一瞬を漫画にしている一冊で、特に152ページからはじまる話がとっても好きです。これもつくりが凝っていて、いろんな色の紙がページに使用されてると思いきや、白い紙にインクを乗せているみたいなんですよ。本がどうやってつくられているのか知ることにも、すごく興味があります。安西水丸さんの本も、イラストとともにゆるいエッセイが書かれている本。これがどうしても欲しくて、あちこち探し回ってようやく見つけました(笑)。

――どれもとっても面白そうです! よく本屋さんには行きますか?

えんどうさん:そうですね。本屋さんでボーッと本を眺めている時間が、自分の中ですごく大事だなと思っています。世の中にいろんな本があるというだけで、なんだか元気が出てくるんですよね。あとは本そのものも「物」としておもしろいなと思っていて、どうやって作られているかを知るのもすごく好きです。

就職先が決まってから気づいた、「まちづくり」を仕事にするという選択肢


――えんどうさんは、建築学科出身なんですよね。新卒から建築関係のお仕事に就いていたのでしょうか。

えんどうさん:はい。最初はハウスメーカーに就職しました。ただ、大学生の頃、就職先が決まった後になってまちづくりに興味がわくようになったので、いずれはそういった分野でお仕事ができたらいいなと思っていました。

――まちづくりに興味を持つきっかけはなんだったのでしょうか。

えんどうさん:建築学科にいると、建物をつくる前提として「ここでどんなことが起きたらいいんだろう?」とか「なんでこれがこのまちに必要だと思うのか」と問われる機会がとても多かったんです。でも、それを考えるのはたのしいなと感じていて。入学当初は自分が建築の何に興味があるのかわからなかったんですが、次第に、建物をつくるよりも使い方を考える方が好きなのかもな、と気づきました。また、山崎亮さんの『コミュニティデザイン』という本との出会いもまちづくりに関心を持つようになったきっかけのひとつです。研究室に置いてあったその本を、ぱらっと見て読んだとき「こういうことを自分もやれたらいいな」と思ったんですよね。

えんどうさん:ハウスメーカーへ就職してから数年後、当時住んでいたまちの近くに、「子ども未来センター」という場所があることを知りました。そこでサポートスタッフを募集していたので、仕事を続けながら、土日に運営をサポートするメンバーとしてかかわるようになったんです。大学時代は子どもの居場所を研究するゼミに所属していたこともあり、わたしの興味分野とも重なっていました。転職を考えているとき、子ども未来センターのスタッフの方に相談すると「ちょうど一人退職するところで、向いてると思うからやらない?」と。タイミングよくスタッフとして転職することができました。

――では転職活動をしていたというよりも、もともとボランティアとして所属していた場所で働けるようになったということなんですね。

えんどうさん:そうなんです。ただ、運営元で働く人たちは、基本的にいろんなまちへ行って、地域の人たちと2、3年プロジェクトをして転々としていくスタイル。そこの施設スタッフは、地方へ行くということはなく、常駐で施設へ勤務する働き方でした。

えんどうさん:わたし自身、地方での仕事もしてみたい気持ちが少なからずあったのですが、いくつものプロジェクトを回していくよりも、そこで暮らしながらまちの仕事をしてみたかったんです。そんなあるとき、地方創生の事例としてたびたび紹介されている、徳島県の神山町へ5か月間滞在できるプログラムの存在を知りました。いきなり移住して仕事を見つけることに少し不安があったので、短期間参加できるのはいいな、と。仕事のタイミング的にも「今だ!」と思い、えいやっと参加を決めました。

――結果的に、そこから何年か徳島に住まれていたんですよね。

えんどうさん:そうなんです。最初は5か月後に帰ってくるくらいのつもりだったのに、気づけば3年経っていて……(笑)。そこでも縁あって、子どもや地域の人の居場所となる公共施設のお仕事をしていました。

コロナ禍で自分のこれからの人生を見つめ直し、ふたたび東京へ


――そこから東京へ戻られたんですよね。どんな転機があったのでしょうか。

えんどうさん:コロナの流行が、いちばん大きな転機だったかなと思います。神山町には、地方創生の事例として知られていることで、さまざまな取り組みをしている方が各地から来てくださっていたんです。だから、地方にいながら、面白い方と出会える機会がとても多くありました。でも、コロナによって外からやってくる人はほとんどいなくなってしまって。わたし自身、地元の愛知や東京へ以前のように行き来できなくなってしまい、仕事だけに向き合っている状況に「あれ……?」と疑問を感じるようになったんですよね。神山のまちも人も大好きだったけれど、これから先の自分の人生を考えたときに、仕事だけの生活になってしまっていいのだろうか、と。

えんどうさん:最近であれば以前より旅行もしやすくなったし、身近な人が感染した話を聞くこともめずらしくなくなりましたが、当時はそういったことに対し、もっとセンシティブだったような気がします。公共の施設の運営にかかわっているからこそ、自分の行動の取り方にも慎重になっていました。

――たしかに、感染するとどうなってしまうかも最初はよくわからない状況でしたよね。外出もどこまでしていいのか、とか。そこからどのような経緯でomusubiに入社したんですか?

えんどうさん:たしか、求人がFacebookから流れてきたんですよ。BONUS TRACKのことを以前から知っていて、あの面白そうな施設の運営に携わっている会社なんだな、と興味が湧いてきて。実は別のところでお仕事をすることが決まっていたんですが、業務委託契約だったので、最初の一年くらいはomusubiでもできる範囲でかかわりながら、どちらの会社にも所属していました。2022年の春ごろからは、omusubiだけで働くようになりましたね。

カリスマ的存在ではなく、 “普通の人” でも、まちづくりの仕事にかかわれるように


――えんどうさんは今omusubiではどんなお仕事をしていますか?

えんどうさん:わたしは大きく2つのプロジェクトにかかわっています。ひとつは、新松戸にある東京藝術大学の学生寮だった建物の再活用を考えること。ただ机上で不動産の話をするだけでなく、テスト的にいろんなイベントをしたり、実際に滞在してもらったりすることで、今後どのように使われていくのがよいのか検証しています。

芸大寮にてトークイベントを開催したときの様子

えんどうさん:もうひとつは、「みんなでつくる学大高架下」という、学芸大学駅の高架下をリニューアルするプロジェクト。「開発が終わってはじめて住民の人が知る」という従来の進め方ではなく、「開発のプロセスを段階的にまちの人に知ってもらったり、関わってもらえるような機会をつくる」ことを大事にしています。

「みんなでつくる学大高架下」にてイベント開催時の様子|Photo by 土屋光司

えんどうさん:このプロジェクトでomusubiがかかわっているのは、不動産分野の企画や運営ですね。設計事務所の方やブランディングなどに携わっている方と協力して、まちに表出するイベントなどを実施しながら、オープンに向けて検討を進めています。

――これからやってみたいこと、挑戦してみたいことはありますか?

えんどうさん:高架下のリニューアルは徐々に進んでいくのですが、omusubiが主にかかわっているところは2024年の春くらいからスタートするんです。それまでに、まちの方との関係を築いていき、基盤となるような運営体制を2023年のうちに積み上げていきたいですね。

――ふむふむ。もう少し長いスパンで見たときはどうですか?

えんどうさん:普段はあんまり先のことを考えていなくて……(笑)。そうですね、まちづくりの仕事って、まだまだ新しい分野なので、自分がこの先どんなキャリアになっていくのか、不透明な部分があるんです。わたしはキャリアを切り拓いていくようなカリスマ性はないですし、ばりばり現場を回していくような体力もないんですが、続けていくことで何か見えてきたらいいなと思っています。

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omusubi不動産では、随時不動産事務スタッフ、空き家リサーチャー、物件ライターなどを募集しています。詳しくは下記のページをご覧ください。

取材・撮影=ひらいめぐみ

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