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エンドオブライフ/佐々涼子

趣味の読書にも看護に関係するものを選ぶ私、真面目過ぎないか?と思いつつ読みました。度々、学生モードになってちょっと息苦しかったけどw、素敵な作品でした。先生たちにもこの本読んでほしい。そして一杯やりましょう。

ノンフィクションの面白さが分かった一冊。綺麗過ぎない、調和されていない。それが良かった。綺麗な看護だけを書かないので、将来本業にする者にとっては安心できる。
理想の看護ができたらいいけど、そうもいかないのは事実だろうし。医療ってのは本当難しいんだ。作中にこんな文があった。
「服を買う時は試着する。美容院に行って髪を切ってもらう時は、相性のいい美容師に任せる。それなのに、人は医師がどんな死生観を持っているかを知らずに、自分の運命を委ねるのだ。」

また、書き手の想いとか立場とかを踏まえた世界が観れるのも新鮮。ノンフィクション作家ならではの死に対する葛藤シーンが鮮烈だった。

人生には理由のない苦しみや死がたくさんあって、だからこそ祈れる対象がある人は強いんだなと思った。篠崎一家の美しさが綺麗な情景描写と相まって、ずっと心に残っている。同時に、私はここまで人を愛せるだろうかと不安になった。

他人からの願いで死を延長し頑張らせることが幸福か、選択肢が多いことが幸福か、医療が進歩した今、生死の間際で苦しみながら選択をすることはとても難しいことだと思った。「奇跡に取り憑かれる」、自分に死が近づいてきた時、「私だけは助かるかもしれない」、そう思ってしまう心理も痛いほど分かる。「病気に負けてもいい」と言う考え方ももっと受け入れられてほしいと思った。
この話の主人公は、看取りのエキスパートで。だからこそ信仰しきれない苦しさとか、正確に自身のことが分かってしまう残酷さとか。いくら他人を見取っても、自分の死は受け入れられないことを目の当たりにして、命が与える問題の大きさを感じた。

あとがきにおいて、ここまで書いても、死というのは分からない。「ここに存在している」その瞬間が大事だと記されていた。本を読み終えて、私もその通りだと思った。人生の長さじゃないね。

私もこんな看護がしたいな。訪問看護に改めて魅力を感じた一冊でもあった。

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