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宮澤賢治のまちに住んでいます。多趣味だけど不器用貧乏。

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  • 最愛は海色

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玩具みたいな人生

目が覚めて、換気扇が回るのを眺める。また一日が始まることにうんざりする。 人生もゲームみたいに、セーブしてシャットダウンできたらいいのに。起きているかぎり頭が動き続けることに耐えられない。天才がごろごろいる世の中で、この足りない頭で生きていかないといけない。 それでも心は動く。何度生まれ変わっても私が私の魂であるかぎり到達できないような作品が世の中には溢れていて、それを読み私の持つ全てを使って感動して、この作品にここまで没入できるのは私だけだと思う。 世界のどこかで、どんな

    • 子供を産むということは

      最近、子どもの夢をよく見る。 夢の中で、大切に抱えた我が子をうっかり地面に落としてしまったことを、時折思い出しては胸が苦しくなる。 なぜ、子どもの夢ばかり見るのだろう。その答えにはなっていないけれど、「子どもを産むって、どういうことだろう」というテーマで過去にあげた文章を、リメイクして載せ直すことにした。 子どもを産むってどういうことだろう。 「将来、子どもが欲しいですか?」という質問に、今まで私は「赤ちゃんは可愛いから欲しいなあ」くらいしか考えていなかった。 けれど考え

      • 休職日記

        23歳、社会人1年たらずで休職中。 将来への焦りと、仕事が続けられなかった情けなさで押しつぶされそうな毎日。今できることは書くことで整理することだから、少しずつ現状を言葉にして残していこうと思う。 今の心身の状態について。 もともとは、超がつく生き急ぎタイプだった。やりたいことはどんなに忙しくてもやっていたし、予定も詰め込まないと落ち着かない。休日をだらだらして過ごしたい、という人の気持ちを理解できない。 でも今は、やる気が湧かない。集中力がなくて、すぐに横になりたく

        • 捨てられない日記、戻れない日々

          2018年、高校3年生の日記を読んだ。 字も、書いていることも幼いけれど、その当時の率直な想いは日記を読むことでしか思い出すことはできない。 人には見せられない黒歴史が詰まっていても、捨てられないのはそのためだ。 いまでは関係が途絶えた人が、たくさん日記のなかにいた。 そのときは、感情をコントロールできないくらいに大好きで、大切にしたいと思っていたことが分かった。 自分の手で壊してしまったもの、もう戻れない時間がそこにはあった。 いまもいまで愛しいけれど、少しだけ戻りたく

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          13本

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          言葉はお守り

          忘れられない言葉を、2回も私にくれた人がいる。 1度めは、かつて親友だった人と心の距離ができてしまったことに、いつまでもぐだぐだしている私に対して。 「おむはドMじゃないだろ?○○の隣にいて幸せそうなおむをもう想像できない」 2度めは、メンタルを拗らせ負のオーラを放ちまくっている私に対して。 「今年はどんどん文章依頼するから。おむは文章を書かせていないとだめになるから」 その人はとっても顔が広いのに、ひとりひとりとの縁を大切にしている。仕事にイベントにせわしなく動き回って

          言葉はお守り

          酔った冬空に

          主語が大きい言葉は嫌いだけど、主語が大きい言葉にどうしても頼りたくなる夜がある。 たくさん酔って思考した帰り道、何百万年も前の光だ、と思って星を見上げたら、少しだけ歩が緩んだ。 人間が人間として生まれたころから誰もが普遍的に美しいと思うことを、理論ではなく実体験で、自分の感覚で美しいと思えるその感覚を掴むために今の今まで呼吸していると思った。 アパートの階段を登りながら、暗闇で光る電車の灯を見た。今日も綺麗なものを綺麗と思えて、大切と思えることを大切に思えてよかった。

          酔った冬空に

          覚悟としての結婚

          失敗ばかりしてきた。大切な人を傷つけてばかりだった。 過去を思い出すとき、楽しかった思い出も苦しくなる。傷つけたのは私であるはずなのに、私も痛い。 ぐるぐると自責ばかりしていた。でも、自分を痛めつけるだけの自責じゃ、なにも生まれない。 過去はどう足掻いても過去で、変えることはできない。楽しかったことは楽しかったこととして、失敗は失敗として受け入れる。自分が気持ちよくなるための自責ではなく、学んだことを今の目の前の人、大切な人に還元する。そのための、覚悟としての結婚という形。

          覚悟としての結婚

          10月下旬〜11月上旬の日記

          10/20 貨物列車と並走  視界の端で無限に点滅している踏切 10/21 波の音を聴く。自分が海のある街で育ったことを、身体に思い出させる 10/24 深夜2時に白菜を煮る 10/25 夜眠る前の、また明日 10/27 君が黄色信号か赤信号か分からない時、ずっと隣で教えてあげたかったと、思う時もある。 11/6 さつまいもを洗ったら土の匂いがして懐かしかった 11/9 ペットショップの電子看板 一度見ただけではわからない犬や猫の絵 繰り返し見ていた 11/11

          10月下旬〜11月上旬の日記

          9月〜10月上旬の日記

          9/4 愛した人も愛している人もたくさんいる自分を受け入れていたい。 ふと、「綺麗だね」と言ってくれたこと、多分ずっと覚えている。 9/5 朝からアイスを2個も食べるの、休みの幸せ 9/14 朝に見た夢を夜になってもふと思い出すような、ゆらっとした1日。 世界中の人間が一斉に視力を失ったらどうなるんだろう、と最近考える。 9/20 新幹線の音に驚いて、空き地にいる小鳥たちが一斉に飛び立った 9/30 いい天気だからドライブしようとコーヒーを買いに出かけた。内陸でも夕陽

          9月〜10月上旬の日記

          喜至楼のうた

          水色のワンピースが 扇風機の風で規則的に揺れている 飽きずに鳴いているミンミン蝉 まだ夏だ まだ夏だ 丸い浴槽の削れたタイルは 時間と名付けられた完璧な模様である わたしも削れたタイルになって 時間の一部になれたら しかし生活は続くのだ まだ夏だ まだ夏だ どこにいても水の音がして 北の方がお産をした山は霧がかっている 五歳になった子どもは死んだ 母を貫いたのと同じ刃で 争いとはほど遠い場所で 清潔なシーツのうえ浅い眠りにつく まだ夏だ まだ夏だ ※平安時代、源頼朝か

          喜至楼のうた

          私はその日映画を見なかった(2)

          こういうの、大好物です・・・ 「今、アンケートをとっていて……中に入りたそうに見えたので、ちょうどいいと思って……」 どういうことだ?と脳内は疑問符でいっぱいだが、言われるがままにのこのこと後ろをついていった。 中へ入ると、昔ながらのポスターや扉を残しながらも、スタイリッシュな空間が広がっていた。バーカウンターの描く曲線が美しく、ビシッと場を引き締めている。 「めっちゃいい空間ですね」 「1927年からこの場所はあって、かつては演劇や芝居が行われていました。まずは小ホー

          私はその日映画を見なかった(2)

          私はその日映画を見なかった(1)

          豊岡市に寄る予定はなかった 運命のような出会いの導きは、その前の日から始まっていた。 前夜、兵庫県は城崎温泉のつるや旅館に泊まった。奮発して夕食付のプランにし、至福の時間を楽しんでいた。 女ひとり、岩手から車で来た私を気遣ってか、面白がってか、宿の人がたくさん話しかけてくれた。偶然にも同じ青森県出身の彼から、出石市を散策することを勧められた。 私は翌日、言われたとおりに出石市へと向かった。 出石市に向かう途中、豊岡市の街並みに目を奪われた。 古く懐かしく、どこか能天気で

          私はその日映画を見なかった(1)

          最愛は海色 第13章

          海に注ぐ夕日は私とあなたの輪郭をあいまいにした。 秘密の場所なんてない。だれかの思い出が入り混じる海辺で、今だけはふたりきりだった。 すっかり水温は下がりきっているというのに、優多さんは海水に足を浸し夕日に顔を向けたまま、私に別れの言葉を言った。 覚悟をもった重みのある言葉は、夕日の届かない海底へと沈んでいくようだった。 「四月になったら上京する」 なにを言っても優多さんが揺らがないことは分かっている。 だから、優多さんは冬が終わるまで口をつぐんでいたのだ。けれど私は、あな

          最愛は海色 第13章

          最愛は海色 第12章

          こんなに近くにいるのに孤独になることもあるのだと、優多さんと出会ってからはじめて知った。 十六年生きていても、はじめて知ることがたくさんあるから驚く。 優多さんが教えてくれたことが、抱えきれないほど胸の内にある。 「窓見て!」 珍しくアラームよりも先に起き、しゃんと目が覚めた。 窓から差しこむ光を眺めていると、携帯が鳴った。画面を見ると、久々に優多さんから連絡がきていた。 「雪だ」 「初雪だね」 見慣れた景色が白く薄化粧をしている。 雪が降ってはしゃぐのも、雪が降った喜びを

          最愛は海色 第12章

          最愛は海色 第11章

          「優多さん、おはよ」 「おはよう。ちゃんと起きれたね」 「うん、でも眠すぎる。歌えるかな」 その日が訪れると、市民は太陽が昇る前からのそのそと活動を始める。 舘鼻岸壁朝市。八戸の誇る日本でも最大級の朝市が、毎週日曜の朝に開催されている。 コーヒーやラーメン、大判焼きなどその場で食べられるものから、新鮮な海の幸、季節の花、手づくりのアクセサリーなど、およそ三百店の屋台が出店し、漁港は人々でごったがえす。 朝市ではライブも行われていて、ありがたいことに私も歌うこととなった。

          最愛は海色 第11章

          最愛は海色 第10章

          「学校、行きたくない」 八戸大橋で歌っていたときに遠くに見えた黒い雲は、夜になると分厚く空を覆った。 重たげな雨音を聴きながら、久しぶりに優多さんと電話をつなぐ。歌をからかわれたことを思い出しては、憂鬱になっていた。 「そんなに行きたくないならさ、学校さぼっちゃおうよ」 優多さんは言った。唐突な提案に、私は戸惑った。 「軽々しく言わないでよ」 「ごめん。でも、たまにはいいんじゃない? 毎日を駆け抜けるためには、そういう日も必要だよ」 当事者ではないから、優多さんは無責任なこ

          最愛は海色 第10章