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災害派遣医療チームについて病院総務が思うこと(大風呂敷広げてみました)

日本には災害発生時に医療活動を行う数多くの組織が存在しています。

このことについて、病院総務として思うことを書いていきます。

皆さんは「災害派遣医療チーム」をご存知でしょうか。

医療に携わる方であれば一度は名前を聞いたことがあるかと思います。

医療業界以外の方は、災害時のニュースを観ていても「医療チームが被災地に派遣され~...」程度の言及しかされず、なかなかその存在を知る機会は少ないと思います。

今回の記事では各組織の説明は控えめに、組織が多数存在していることに焦点を当てて書いていきます。

(医療業界の方は序盤の説明はガンガン飛ばしちゃってください)

※今回の記事は明確な数字や根拠に欠けている点があります。
ご不満に思われた方は正しい知識や考え方も含め、教えていただけますと幸いです。

災害派遣医療チームとは

概説すると「災害発生時に被災地で医療支援を行う、医師や看護師、薬剤師などから成る医療チーム」です。

代表的なものとして「DMAT(Disaster Medical Assistance Team、災害派遣医療チーム、ディーマット)」があります。

医療チームと言われてもなかなかイメージしにくいと思います。

医療支援までの流れは基本的にはこんな感じです。

(1)管轄機関の研修を受けてDMAT資格取得
(2)普段は各医療機関で勤務
(3)発災時に管轄機関から招集を受け出動、被災地で医療支援

普段皆さんが目にする医師や看護師、検査技師はDMAT隊員かもしれません。

災害派遣医療チームの種類①(日本DMATと都道府県DMAT)

災害医療チームには様々な種類があります。

本題に移る前に、まずは具体例を2つ紹介します。

ひとつ目は日本DMAT都道府県DMATです。

ひとことでDMATといっても、日本DMAT、都道府県DMATに大別されます。

日本DMATは国(厚生労働省)管轄、都道府県DMATは各都道府県管轄です。

活動(派遣)エリアも日本全国と各都道府県(他県派遣も)という違いがあります。

災害派遣医療チームの乱立②(その他の医療チーム)

ふたつ目は、その他の医療チームです。

以下のような組織が代表的です。

DPAT(Disaster Psychiatric Assistance Team)
 名称:災害派遣精神医療チーム
 管轄:公益社団法人 日本精神科病院協会
JMAT(Japan Medical Association Team)
 名称:日本医師会災害医療チーム
 管轄:公益社団法人 日本医師会
AMAT(All Japan Hospital Medical Assistance Team)
 名称:全日本病院医療支援班
 管轄:公益社団法人 全日本病院協会

私がすぐ思いつくだけでもこれだけあります。

検索すると、さらに各種団体が出てきました。

私が思うこと①

率直に、種類(組織)が多すぎと思っています。

これらの団体はそれぞれが異なる役割を担っていることは理解しています。
(例)
活動期間:「発災後48時間以内」「DMAT撤収後」 など
活動領域:「救急医療」「精神科医療」 など

ですが、これは必ずしも効率的な分化ではないと思います。

各組織ではそれぞれの理念のもとに別々の研修を行い、異なる事務組織で運営・管理業務を行っています。

これでは様々なロスが発生すると思います。

災害医療はとにかくロスを減らしていくことが重要です。

人的ロス、作業ロスなどの積み重ねで、最も重要な時間のロスに繋がります。

災害が発生した場合、これらの組織は国や自治体の災害対策本部や医療対策本部の指示により活動します。

それらの本部から指示が下りてきた際、組織が分化していると、

意思決定機関・プロセス、情報連絡プロセスが増えるという弊害があると思います。

診療に関する情報に関して言えば、EMIS(広域災害救急医療情報システム)やJ-SPEED(災害時診療概況報告システム)でスピーディーにやり取りできるかもしれません。

ですが、病院総務として働いてきた経験からすると、ムダは診療情報以外のやり取りにこそあると思います。

行政から各組織、医療機関への各種通知、平時の情報共有、災害対応後の補償など、組織の数だけ書類を作り、メールを打たなければなりません。

これを各機関ごとに行うとなると、情報を送る側も受け取る側もかなりの負担になります。

私が思うこと②

かなりの大風呂敷ですが、これらの組織を一本化することはできないでしょうか。

大きな指揮権を持った組織に管理運営、指揮権を集約し、組織ごとに担っていた役割は部局のような体制で行っていくというものです。

もちろん全ての組織を対象とするわけではなく、都道府県DMATと日本DMATの分類は残しておくべきだと思います。

都道府県DMATは国の事情に左右されず自治体レベルで迅速かつ柔軟に医療チームを動かすことができるということ、

一本化するとかえって都道府県DMAT組織を増やすことになることが主な理由です(現状ではほとんどの県が未設置)。

それ以外の組織は、国(厚生労働省)の組織下、具体的には日本DMATをコントロールしているDMAT事務局の傘下に入った方がよいと思います。

情報の一括管理と指示系統の簡略化で、組織運営の効率化を目指します。

DMAT事務局をメインとしたのは、災害時に本部の役割を担う国の組織に近いこと、DMATがすでに全国的に波及しているためです。

組織の一本化を行った場合、中心となる組織には業務負担が激増します。

そのため、この実現には、DMAT事務局の裁量、指揮権、人員を強化することが不可欠です。

(1)裁量、指揮権がない大きな組織は意思決定に時間がかかり機動力が落ちます。

現在の仕組みでは、有事の際にDMAT事務局はDMAT隊員(が所属する医療機関)に対し派遣依頼、出動の可否を調査します。

その結果と被災地自治体等との需給調整を経て、出動が決まります。

この依頼方式の弱点として、DMAT指定医療機関において隊員は出動したくても、病院の事情で断られてしまうということがあります。

そのようなケースがあると、活動可能な医療チームの規模が不確定要素となってしまい、調整に時間と手間がかかってしまいます。

そのため、外部組織への派遣「依頼」といった形ではなく、派遣「指示」にすべきだと思います。

(2)また、人員を拡充する必要があります。

これまでのDMAT事務局では非常に貧弱な体制で運営が行われていました。

2020年度(令和2年度)から、DMAT事務局の体制見直しが進められていますが、まだまだ人員増強を行っていくべきだと思います。

(参考 救急・災害医療提供体制等の在り方に関する検討会 第21回資料)

平時においては災害医療ロジスティクスはまだまだ軽視されており、コストも絞られています。

災害対応は一事が万事、また国全体を統括する組織として、国としても財政で支援体制を整えてほしいと思います。

終わりに

災害派遣医療チームを一本化するという滅茶苦茶なことをつらつらと申し上げましたが、皆さんはどう思われたでしょうか。

実際には利害関係やそれぞれの理念があるため現実的でないとは思います。

病院で業務を行っていて、(似たような名前の組織が多くてよく分からないなあ...)と思ったのがきっかけで書きました。

仕事と同様、組織も増やしていくことは簡単ですが、効率的な運営のためには、どこかのタイミングでスリム化も考えなければならないと思います。

戯言と思われた方もいるかもしれませんが、私は一案としてこの方法を思いつき、発信させていただきました。

最近では災害対応時の行政機関職員の過重労働について語られる機会も増えましたが、まだまだ体制整備は不十分です。

組織のスリム化、一本化を通して災害医療のさらなる発展が成し遂げられるといいなと思います。

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