詩/玉ねぎの命

玉ねぎの命

半欠けにラップした
冷蔵庫の玉ねぎが成長している
ちゃぶ台に乗せて観察する

命はどこから来るのか

親から子へとつながっていないと
生命体にならない
命はどうやら
玉ねぎの内部から来ている
生命体の裏側に
異次元への扉がある

(あるいは命の影として
投影されているだけの世界)

命はみえない、でも
この身に発現している とわかる
錯覚ではない
これに似たものを
僕は確かに知っている。

気づきの意識も
みることができない

声が聞こえた時
聞こえたことに気づいている
気づかなければ
聞こえない
鼓膜は揺れているのに。

気づいている とわかるのに
気づきをみることができない
この気づきの意識こそ
実は
命そのものなのではあるまいか

玉ねぎの裏側から
やって来ると同時に満ちて
やがて
玉ねぎの裏側へと去る

土から分かたれた花も
咲いていたのだ ※

2024年7月

※「詩/蛍の光」冒頭の問いに答えた。

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