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ヘイSiri、お顔を隠して今すぐに。

その椅子から立ち上がった瞬間にお尻の辺りに違和感を感じ、その後の予感もあった。

あ、まずい。

わたしは今から半ケツになる。

だけど誰にもわたしが半ケツであることには気づかせない。
なぜなら事件はスカートの中で起こっているからだった。

たまにある、良くない方のタイツ。
値段が安いか高いか、問題はそこではない。

だってこれは、安くなかったし毛玉もつかないしあったかさにも問題はない。
ただ、半ケツになってしまうという問題だけを抱えるタイツ。

今朝、何の疑いもなく手に取ったそれをはいた。一年たって忘れていたんだ。
こやつは、良くない方のタイツだってこと。

本当に良くない。

歩いているだけでなんとなく始まる、おパンツを引っ掛けてどんどん下に下がっていくあの現象。
人間誰しも一度は経験したことがあるだろう。

スカートの中、おけつの辺りやたらスースーしちゃう。
どこかに入りトイレを借りて、下からぎゅぎゅっとタイツを持ち上げれば済む事なんだけど、あろう事かわたしは半ケツのくせにコンビニでカフェラテを買っていた。

片手にカフェラテがある状況なら、多少の半ケツは我慢しなくてはならない。

そして周りを見渡しだんだんと、あの人も半ケツなんだろうか…?というよくない妄想まで始まってしまう。
綺麗な顔したお姉さん、スカートの中で半ケツだったらおもしろい。

今わたしを追い抜かしていった人の顔がにやけていたけど、もしかしたら透視能力があって半ケツを見抜かれたか…

もしくは、スカートがあるからと安心していたら何かの拍子にスカートがめくり上がり、半ケツで商店街を闊歩していたら…という心配もあったり。

半袖半ズボンの小学生男子が通りすがりにスカートを捲っていったらどうしよう(って時代が違う)なんてね。

後ろが気になって仕方ない。
早く帰りたいから、歩くスピードも上がると、おけつのぷりぷり度も上がる。

無事に家の前に着くと、そのまま階段を昇るんだけど、家に入ると半ケツどころか全ケツ。
階段は半ケツ女にとっては天敵なのだ。
あれはだめ。ケツ、全部持っていかれるから。

半ケツで感じる、寒い季節の訪れ……
半ケツは季語ですか?
いいえ、ちがいます。

大事な時にはくのは絶対にやめよう。
推しのライブにははいていけない。

だけどきっとまた、どれが良くない方のタイツかわからなくなるから

脱ぎたてのタイツのタグに油性ペンで大きく、お尻のマークを書いたのだった。

それでもまた、うっかりはいて半ケツになるかもしれないけど。

ヘイSiri、今日のわたし半ケツだったこと、誰にも内緒ね。


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