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恥ずかしくってやわいもの

とうに50は超えているだろう。道路を挟んで反対側の道を歩いておられた男の人が突如「あっ!やっべぇ!」と大声で叫び、ネクタイをひらひらさせながら超モロダッシュでこちら側に来たのです。
それで、男性が走り去ってしまってからも虚をつかれたようにしてしばらくあっけに取られてしまいました。
変だなぁと。中年の男性なのに小学生に見えたなぁと。
「やっべぇ!」の声の出し方もあの超モロダッシュも、どこか小学生のような、子どもじみた遠慮の無さを感じたのです。そのねじれが奇妙に映ったのでした。

でも、としばらく逡巡した後に思い直しました。
それもそうだよな。あれは自然なことだよな、と。
男だろうが女だろうが、どんなに年をとっても、立派なおべべを着ていようとも、外見ひん剥いたらみんなただの元子供なんだよなぁ。

ところで、かつて私が小学生だった頃、めっちゃ速く走ることを超モロダッシュすると言っていました。
なのであえて使ってみたのですが、読み返してみるとすごく恥ずかしいです。
でもこんな風にみんなそれぞれ恥ずかしくってやわいものを持っている。普段それはハードで包み隠されているけれども(精神的な意味でも肉体的な意味でも)、ふとした拍子にそれが表に出て来てしまうことってありますよね。まぁポロリみたいなものですね。(多分違う)
そんな貴重な瞬間を目撃した、閑静な住宅街での小さなお話でした。

絵画:O JUN
森美術館六本木クロッシング2022展:往来オーライ!


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