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澤田 典宏
2016年5月19日 18:23
ヒロムは立ち上がると、ずかずかと公園の出口に向かって歩いていく。「おまえ、明日学校で余計なことを言うんじゃねえぞ。言ったら、力いっぱい、ぶん殴るからな!」 嵐のようにまくし立てると、ヒロムは駅の方に向かって歩き始めた。暗闇から「マジだからな。覚えとけよ!」というお約束のようなセリフが響いて消える。 明日はトシやジュンペーとも話さなくちゃな。あ、その前にスマホの充電か。ひとり公園に取り
2016年5月19日 13:57
ヒロムの眼がすっと細くなる。「そこで、チームとして続くのか、分裂するのかが決まる、そう言いてえんだな」「俺だって、チームを解散なんてしたくないさ。でも、アルミを遊ぶために集まってる俺たちが、アルミをやめるなら、その可能性はある……だろ?」「……なるほどな。おまえもユウシもバカじゃねぇのか」 バカ? 俺は啞然としてヒロムの顔を見つめる。「ゲームの中のチームと、現実の俺たちのチー
2016年5月19日 08:55
俺はヒロムの両肩をつかむと、激しく揺さぶった。ヒロムは少しの間、俺にされるがままになっていたけれど、「ったく」とつぶやくと一瞬で俺の両腕を払いのけ、襟首をつかんだ。首がぐっと絞められ、少しずつ息苦しさが増してくる。「ちっとは落ち着けよ、イチ」 ヒロムの眼は、駅で見たときのように怒ってはいなかった。むしろ、俺に言い聞かせるようなおだやかな眼で、じっと俺を見ていた。「俺たちは、あのミッシ
2016年5月19日 06:29
突然のことに状況がうまく飲み込めていなかった。でも、ヒロムはおかまいなしだった。いきなり左手ひとつで俺の襟首を締め上げると、その体勢のまま、改札横の壁へ俺をぐいぐいと押し込む。にぶい音とともに背中から壁に叩きつけられた俺は、口から空気の塊を吐き出した。「ま、待った、ヒロム。ここじゃマズいって」 いくら周囲の人が無関心を決め込んだところで、駅員までもが職務を放棄するとは思えない。「そん
2016年5月18日 18:31
息を整えていた俺の耳に、不意に「難波一」という言葉が飛びこんできた。あわてて、まわりを見回す。いつもと同じような帰宅時の風景。いろいろと考えすぎて、空耳でも聞こえたのか。いや、そんなことはない。たしかに聞こえた。誰がこんな場所で俺の名前を口にしたんだ? ホームの上に知っている顔はひとつもない。いくら俺が人付き合いを避けていたとはいえ、さすがにクラスメイトの顔ぐらいは覚えている。当然、他のクラ