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お前らは現実とゲームの区別がつかない

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現実を舞台にポイントを競うゲームにハマっていく少年たち。「こんなことになるなら、友だちなんて作らなければよかった……」
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#お出かけ

4-22. ヒロムは立ち上がると、ずかずかと公園の出口に向かって歩いていく。

 ヒロムは立ち上がると、ずかずかと公園の出口に向かって歩いていく。

「おまえ、明日学校で余計なことを言うんじゃねえぞ。言ったら、力いっぱい、ぶん殴るからな!」

 嵐のようにまくし立てると、ヒロムは駅の方に向かって歩き始めた。暗闇から「マジだからな。覚えとけよ!」というお約束のようなセリフが響いて消える。

 明日はトシやジュンペーとも話さなくちゃな。あ、その前にスマホの充電か。ひとり公園に取り

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4-21. ヒロムの眼がすっと細くなる。

 ヒロムの眼がすっと細くなる。

「そこで、チームとして続くのか、分裂するのかが決まる、そう言いてえんだな」

「俺だって、チームを解散なんてしたくないさ。でも、アルミを遊ぶために集まってる俺たちが、アルミをやめるなら、その可能性はある……だろ?」

「……なるほどな。おまえもユウシもバカじゃねぇのか」

 バカ? 俺は啞然としてヒロムの顔を見つめる。

「ゲームの中のチームと、現実の俺たちのチー

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4-20.俺はヒロムの両肩をつかむと、激しく揺さぶった。

 俺はヒロムの両肩をつかむと、激しく揺さぶった。ヒロムは少しの間、俺にされるがままになっていたけれど、「ったく」とつぶやくと一瞬で俺の両腕を払いのけ、襟首をつかんだ。首がぐっと絞められ、少しずつ息苦しさが増してくる。

「ちっとは落ち着けよ、イチ」

 ヒロムの眼は、駅で見たときのように怒ってはいなかった。むしろ、俺に言い聞かせるようなおだやかな眼で、じっと俺を見ていた。

「俺たちは、あのミッシ

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4-19. 突然のことに状況がうまく飲み込めていなかった。

 突然のことに状況がうまく飲み込めていなかった。でも、ヒロムはおかまいなしだった。いきなり左手ひとつで俺の襟首を締め上げると、その体勢のまま、改札横の壁へ俺をぐいぐいと押し込む。にぶい音とともに背中から壁に叩きつけられた俺は、口から空気の塊を吐き出した。

「ま、待った、ヒロム。ここじゃマズいって」

 いくら周囲の人が無関心を決め込んだところで、駅員までもが職務を放棄するとは思えない。

「そん

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4-18. 息を整えていた俺の耳に、不意に「難波一」という言葉が飛びこんできた。

 息を整えていた俺の耳に、不意に「難波一」という言葉が飛びこんできた。あわてて、まわりを見回す。いつもと同じような帰宅時の風景。いろいろと考えすぎて、空耳でも聞こえたのか。いや、そんなことはない。たしかに聞こえた。誰がこんな場所で俺の名前を口にしたんだ?

 ホームの上に知っている顔はひとつもない。いくら俺が人付き合いを避けていたとはいえ、さすがにクラスメイトの顔ぐらいは覚えている。当然、他のクラ

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