4-21. ヒロムの眼がすっと細くなる。
ヒロムの眼がすっと細くなる。
「そこで、チームとして続くのか、分裂するのかが決まる、そう言いてえんだな」
「俺だって、チームを解散なんてしたくないさ。でも、アルミを遊ぶために集まってる俺たちが、アルミをやめるなら、その可能性はある……だろ?」
「……なるほどな。おまえもユウシもバカじゃねぇのか」
バカ? 俺は啞然としてヒロムの顔を見つめる。
「ゲームの中のチームと、現実の俺たちのチームは、関係ねえだろうが」
「でも、アルミをやめるなら、俺たちが一緒にいる理由は―」
「だから、バカだっつてんだよ! 俺たちはアルミを一緒に遊ぶことはなくなるかもしれねえ。でも、それは現実で仲間をなくすことじゃねえだろ。ったく」
言葉を失ったまま、ただ地面を見ていた。気づいたら空はすっかり暗くなっていて、街灯の光が俺とヒロムの複雑な影を地面に落としていた。
「ゲームは終わっても、現実は終わらない、か」
ヒロムは笑って、俺の肩を小突いた。やっとわかったか、このバカ野郎。目がそう言っていた。
「これじゃ、どっちが相談してるんだか、わかりゃしねえ」
「……悪ぃ」
ヒロムは、俺の横を通り抜けると、ひとつしかないベンチにどかっと腰を降ろした。
「いろいろと悩むのはいいけどよ。次からは、無視決めこまねぇで、電話ぐらい出やがれ」
「あ……それは……充電を忘れてバッテリーが切れてただけで……」
ちょっと無視したことは黙っておいて、今日一日のできごとをヒロムに説明した。昼休みのこと、誰も来なかった部室のこと、駅で見かけたあやしいモヒカン野郎のこと。ヒロムは、俺の話を聞き終わるたびに、ちょこちょことつっこみを入れる。
「昼休みは、あれだ。俺たちだって、それぞれに考えることがあったわけだ」
まあ、わかる。俺もにたようなもんだったし。
「……おまえ、ウチの学園が試験の一週間前から部活禁止になるの知らなかったのか?」
聞いたこともない。どうりでパソコン部の部室どころか、フロア全体に人がいなかったわけだ。
「モヒカン? ああ、そりゃメシムラだ。おまえをつかまえるのに、そこら中に張らせてたからな」
「なんだよ、それ? モヒカンのせいで、俺がどれだけキョドったかわかってんのか」
ヒロムは、そんなこと知るかよ、とばかりに、手をヒラヒラとさせる。
「おまえが電話をガン無視するから、そうなるんだろうが。だいたい、俺がどれだけ―」
急に口ごもってしまったヒロムを見て、俺の中でスイッチが入る。
「どれだけ、なんだよ?」「なんでもねえよ、気にすんな」「気にするなって言われたら、余計に気になるに決まってるだろ」「その言い方は、わかってんじゃねえか! バカ」「いや、ちゃんと言葉にしないと、合ってるかまちがってるか、わからないよ」「殴るぞ」「俺の予想では、どれだけ心」
「いいから黙ってろ、バカイチ!」
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