川内有緒「目の見えない白鳥さんとアートを見にいく」感想~思っていたのとは違っていた、その先...。
一冊の本を読み終わり満足した場合、
よかった、
面白かった、
サイコー!!、
衝撃的だったYO-!、
優しくなった....等々
さまざまな褒め言葉が浮かんできますよね。
本書を読み終え、わたしの頭に浮かんだのは、
思っていたのとは違っていた。
思っていたのとは違っていた、その続きをお伝えしたい。
・わたしって天才!?
小学4、5年生だったと記憶している。
課外授業で港へ写生に行った。
立体的に見えても平面にしか描けない典型的な絵が下手なわたし。
横目で隣の友だちの絵を見ると...あら、船と海と空と奥に見える家のバランスがいい。
真似するっきゃないでしょ。
同じ構図に同じ色…このままだと先生にパクったことがバレちゃう。
アレンジが必要だね。
海の色を隣の友だちはベタ塗りしていたが、わたしには海の色が(瀬戸内なので)緑色にも、黒色にも、黄色にも、白色にも見えたので、それぞれの色を筆先でちょんちょんちょんと塗っていた。
そこへ先生が、
「何やってんのー!そんな塗り方していたら時間がなくなるわよ」
叱られ?いや注意され?、いやアドバイスされ?...途中から(瀬戸内海なのに)青色でベタ塗りー!
でも、本書の「印象派」について書かれた箇所を読み、
わたしって天才ーー!?
光の「印象派」を自然と描いていたのー!
お父さん、お母さん、娘は天才で・し・た!!
天才じゃん♪頭の中で鯛や平目と舞い踊ってましたが...。
「ものを見る」という行為は、
そうだったんだー。
知らぬ間にモネなどの「印象派」作品を見たという経験を理解していたってことですね。
天才でなく残念。
では、見た景色やひとなどをインプットし理解しているわたしと違って、
・目の見えない白鳥さんはアートをどう見てるの?
白鳥さんとアートの出会いは、大学生のときに彼女と行った美術館デート。その経験が、盲人らしくない行動で面白いなと思い、自ら美術館に電話をかけ作品が見たいので誰かにアテンドしてもらいながら作品のことを言葉で教えてほしいと依頼。
最初は断れることも多かったけど最後は、「じゃあどうぞ」と扉が開かれ、全盲の美術鑑賞者として多くの作品を楽しむことに。
本書は、白鳥さんと、著者である川内有緒さんとその友人たちとアートを巡る旅の物語。
「目の見えない人とアートを見る?」と著者だけの疑問ではなくわたしもだよ。
でも、白鳥さんをアテンドし、見たまんまを伝えることにより、目の解像度が上がり、いろんな見方ができる。
ある美術館に行ったときなんて、アテンドしてもらった美術館の方に「ありがとうございました」と、お礼を言われちゃた白鳥さん。
助けてくれているようで、実はそのひとも一緒に楽しんでいたんだ。
それって、「楽しむ」の醍醐味じゃない?
「今」を楽しむってことの。
白鳥さんは言います。
うんうん、わたしもそう思うよ。
白鳥さん、わたしたち馬が合うんじゃない?
ほら、白鳥さんも、よくわからないものがすきだし。
わたしも、なにひとつわからん!村上春樹がすきだもの♡
・馬が合う白鳥さんに見てほしいものがある。
キルトに一時期ハマっていて、そのときに制作した作品。
参考にしたのは、ゴッホの『月星夜』
たしか?ディアゴスティーニで「西洋の絵画の巨匠ゴッホ」の表紙に惹かれ買ったはず(←今は手元になく...どこに?)
原田マハ「たゆたえども沈まず」の装丁にも使われている。
どーーん!と、うねるようにそびえ立つ糸杉が有名。
読了したが手元にないのだが、「たゆたえども沈まず」でも、うねるようにそびえ立つ糸杉の描写を克明に描いていたと思われる...。
でも、わたしは、どーーん!と、うねるようにそびえ立つ糸杉よりも、ぐるぐるとうねる夜空に魅せられた。
子どものころに見上げる夜空は美しいより怖かった。
飲み込まれそうなで怖かった。
だから、「月星夜」を本で見たとき、これだよ!これー!
これだよー!これ!がわたしの解釈。
ひとつの作品でもその解釈や見方はいろんなものがある。
でも、
楽しそうだな。
ひとりであれこれと頭の中で考えちゃうわたしも一緒に楽しみたくなる。
なぜ、白鳥さんとアートを見に行くのか...。
楽しむためさ。
・思っていたのとは違っていた、続きをお伝えしたい。
わたしにしては長文になってしまった。
長文で語りたいほど目からウロコ本だったので…と、思っていたのはわたしだけではない!
「2022年 Yahoo!ニュース本屋大賞 ノンフィクション本大賞」受賞!
多くの方に手にとってもらう機会が多くなるってことですね。
めでたい、めでたい🎊
あっ、
面白かったよー、満足したよー。だけでない、
思っていたのとは違っていた、その先を伝えねば。
アートを楽しく見よう水先案内本だと最初は思っていた。
もちろんアートを楽しく見よう本でもあるが、白鳥さんとアートを鑑賞することで、たくさん見て話すことで、読み手のわたしも共に深い思索を巡らす。
たとえば、
変わりゆく常識やルールのなかで、アウトかセーフだけしかないのか?
障害者は不幸なのか?
優勢思考と向上心とはどこが違っているのか?
もっと〇〇すべき「べき論」が生きづらさにつながっているのでないか?
さまざまの問いに思考がぐるぐるするわたしに、
「できる」ひともいるし、「できない」ひともいる。
それでいいと白鳥さんは語る。
そうなんだよ、単純なことなんだ。
当たり前のことに気づき目の前の視野が広くなる。
思っていたのとは違っていたが、視野が広くなり誰かに伝えたい一冊を読めてしあわせ。
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