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初めて行ったクラブは渋谷だった

大学生の頃、初めてクラブというものに行った。クラブのイメージといえば、大音量で音楽が流れ、アルコール度数の強い酒を飲み、男女がいちゃいちゃして、ドラッグが蔓延する。そんな偏見まみれのイメージだった。ただ、私は初めて入ったクラブで同じような印象を抱き、結局は階段に座って始発が来るのを待っていた。

クラブに行こうとなったのは、親友・美香の誘いだった。美香の友達がクラブに何度か行ったことがあるお兄さんで、美香と私は「社会勉強じゃね」みたいな軽いノリで足を運ぶことにした。

連れて行かれたのは、渋谷の道玄坂の奥。慣れない夜の街にドキドキしながら、入場するための列に並んだ。入り口ではID確認といって、名前や年齢を運転免許証などをもとに確認される。強面のお兄さんにジッと身分証、それから顔を覗き込まれ、「入ってよし」のサインが出ると息を止めていたことに気づいた。

中に入ると、それはイメージ通り爆音で音楽が流れていた。美香、そして一緒にきたお兄さんと話すのもやっとくらいの音量で、多くの若者たちが酒を片手にフラフラと揺れている。それは体験したことのない空間で、「え、ちょっと怖いかも」と少し躊躇した。

だけど一通りビールとかの酒をのみ、なんとなく音楽に乗っていると楽しい気がした。そのクラブではテクノと呼ばれるジャンルの音楽がかかっていたが、私はテクノが好きなので「あ、この曲良い」みたいな感じで乗っていた。


少し時間がたったとき、「社会勉強」ということで、個別で行動することになった。ただ、一人になった瞬間に無性に怖くなり、しかもナンパをすることも望んでないし、それをする勇気にもないことに気づく。あれ、普通に帰りたいぞ。

仕方なく酒を飲み、カウンターにいた女性に「どっからきたんですか」みたいに話しかけてみたが、普通に盛り上がらず、「まあそうだよな」と納得もする。だってこっちにやる気がない。質問もしたいことも、話したいこともない。

そしてフロアに戻って音楽を聴いて体を揺らしていると、やっぱり疲労が勝ってしまい、結局よくわからない階段の隅に座った。あーしんどい。寝ようと思って膝を抱えて顔を伏せるが、音楽がうるさくて眠れない。あーだる。


結局、そのくらいから記憶はない。酔っていたわけではなく、本当に辛くて頭の中から削除したのだと思う。

後日、あることに気づく。「あ、好きなアーティストならクラブを楽しめるかも」と。環境に流され楽しむにしても、やっぱり好きなものから始めた方が良いんだな、と思った。


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