【小説】媒介 その六 思い出す
仕事デスクに向かうと、あの子供の後ろ姿が、立ち上がり中の暗いデスクトップに浮かんだ。
だからといってプロット書きに手がつかないという事はなく、カタカタとキーボードは踊った。
締め切りへの強迫観念と、まだ掴まえられない子供の影、どちらが空想力に作用したのだろうか。
金と命。
もちろん命の方が大事だが、今は金の亡者と罵声を浴びせられても聞こえないくらい集中していた。
そして、手が止まった時。
また思い出してしまった。
だが体からは別の反応もあった。
「里帆〜! 今日ごはん何〜?」