ザラキーマ

最近小説を読み始めました。湧いてきたものを文にしてみます。ご覧下さいませ。 湊かなえ…

ザラキーマ

最近小説を読み始めました。湧いてきたものを文にしてみます。ご覧下さいませ。 湊かなえファン。 スキ、コメントを待ち焦がれている自分が確かにいます。

最近の記事

【小説】媒介 その六 思い出す

仕事デスクに向かうと、あの子供の後ろ姿が、立ち上がり中の暗いデスクトップに浮かんだ。 だからといってプロット書きに手がつかないという事はなく、カタカタとキーボードは踊った。 締め切りへの強迫観念と、まだ掴まえられない子供の影、どちらが空想力に作用したのだろうか。 金と命。 もちろん命の方が大事だが、今は金の亡者と罵声を浴びせられても聞こえないくらい集中していた。 そして、手が止まった時。 また思い出してしまった。 だが体からは別の反応もあった。 「里帆〜! 今日ごはん何〜?」

    • 【小説】媒介 その五 走りだせ!

      高層階で停止したままのエレベーターを横目に階段をリズムよく飛び降りた。 マンション二階でよかった。 火事の時も電車に遅刻しそうな時もここなら間に合う。 今回も間に合うか。 坂を下ったところで抗えないスピードダウンが襲って来た。 肩で息をし、辺りを落ち着きなく見渡す。 二人の影を隠すように、先ほどと打って変わって、わらわらと人が出てくる広場。 ジョギングランナーや自転車に乗った主婦が威嚇する暴走族のように自分を中心に通り過ぎる。 気づくと自分の呼吸を整えることに必死になっていた

      • 【小説】媒介 その四

        このベランダからは見えない死角に移動したのか? 部屋に入って目を移したコーヒーカップからは湯気が消えていた。 そして、カップの下に乱雑に置かれた書類が仕事のことを思い出させる。 そんな無言の圧力に目を背け、足は居間の方へ向かっていた。 もう音に頼ることはできない。 自分の勘?  一番クリエイターとしては大事にしてきたつもりだが、ちょっと意外なところで試されるとは。 もう一つの窓から外をのぞいてみる。 ここなら広範囲に目が行き届くぞ、と期待に目を輝かせている心は少年のそれ。 息

        • 【小説】媒介 その三

          コーヒーカップを仕事デスクに置くと、慌ててベランダに飛び出る。 きょろきょろと辺りを見渡すと、子供どころか人っこ一人いない。 あれは夢? 彼女の声でふらふらと居間に行ったような。 いや、これが夢? ついに彼女に強力な睡眠導入剤をいれられ、自分は居間で気を失った? はて誰があの子をなだめたのか。もしくは黙らせたのか。 答えが出ない時はついブツブツと声に出して、事実を確認してしまう性分。  自分「……たしかにあの階段の前に……小学生くらいの男の子が」 指を指しても、もちろん男の子

        【小説】媒介 その六 思い出す

          【小説】媒介 そのニ

          目覚ましのコーヒーをすする。 なるべく音をたてないようにして、子供の声が聞こえるか神経を尖らせていると、聞こえるのは彼女の声。 彼女「私もう出かけちゃうけど、お昼どうする?」 自分「……ああ。適当にやるよ」 彼女「その適当を今きめてあげようとしてんの!」 自分「だから……任せるよ」 ふらっと立ち上がり、逃げるように自分の部屋に戻る。 彼女「ちょっと! 人の話きいてる?」 人の優しさが余計に感じる時もある。特に今はその非常事態のような気がする。 コーヒーカップを持った手の角度は

          【小説】媒介 そのニ

          【小説】媒介 その一

          猫が鳴いている。みゃーみゃーみゃーと、か細くも耳に残る声。ここいらに猫などいたかと、ふと考え始めた時、自分は猫嫌いだったことがパッと頭に浮かんだ。 普段は猫の声など気にも留めない。なのに。 考えれば考えるほど、頭が冴える。そして映画館を出る時の強烈な眩しさ、穏やかさが目に甦った。 子供の泣き声だ。 か細い声であることに何故か安堵してしまうが、すぐに子供のことが気になりだした。  泣き止まない理由とは。 子供の姿を見ればわかるに違いないとベランダに足を向けた。 身を乗り出し、外

          【小説】媒介 その一