【小説】媒介 そのニ

目覚ましのコーヒーをすする。
なるべく音をたてないようにして、子供の声が聞こえるか神経を尖らせていると、聞こえるのは彼女の声。
彼女「私もう出かけちゃうけど、お昼どうする?」
自分「……ああ。適当にやるよ」
彼女「その適当を今きめてあげようとしてんの!」
自分「だから……任せるよ」
ふらっと立ち上がり、逃げるように自分の部屋に戻る。
彼女「ちょっと! 人の話きいてる?」
人の優しさが余計に感じる時もある。特に今はその非常事態のような気がする。
コーヒーカップを持った手の角度は精密機械のように固定したまま、大奥の女中のように小幅にすいすいと進む。
その先に待っている人がいると信じて。

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