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タコライスと台風

仙台に帰省した沖縄に住む友人が、お土産に、家で作れるタコライスのキットを買ってきてくれた。タコスミートを温めてご飯にかけるだけで、手軽に沖縄料理を楽しめるのは嬉しい。

タコスミートは牛挽肉を使っているからかコクがあり、付属のホットソースをかければ甘辛いアクセントが生まれた。
何となく見よう見まねで作ってきた我流タコライスとは違い、スパイシーな沖縄の味付けを楽しみながら、過去に訪れた沖縄で食べた料理の数々に思いを馳せる。

野菜やお肉がたっぷりのチャンプルー、食感が楽しい海ぶどう、ねっとりとした食感のジーマーミー豆腐。ジーマーミー(落花生)を練り上げて作られていて、ごま豆腐のような風味がくせになる。

真夜中に行列ができるステーキ屋。アメリカンダイナーさながらのボックス席でミディアムレアを注文すれば、真っ赤な肉汁が滴る超レアがサーブされた。

締めに食べるはソーキそば。エリアによってスープのだしも違うという。

枚挙にいとまがないが、そのどれもが私の住む宮城とは違っていて面白い。味噌文化の東北に対し、塩味やお肉の出汁ベースのものが多く、アメリカの文化を内包した料理も多彩に主張し合っている。

美味しい料理を求めて今すぐにでも飛んでいきたい魅力に溢れた沖縄だが、
友人から、夏の沖縄の一面が語られた。

本島を直撃する台風の威力は底知れない。警報が出る日は仕事が休みになり、外には出歩けないそうだ。友人は、なぎ倒されたガジュマルの木の写真を見せてくれた。

ふと、映画『涙そうそう』を思い出す。
台風によってなぎ倒された木が、心許ないアパートのガラス戸に激突し、主人公が泣きながら必死で窓をおさえようとするシーンを。それと打って変わって日差しがきらきらと反射する海や街並み、郷土料理が並ぶ食卓のシーンも。

どの土地も、良いこともそうでないことも、そこに暮らす人しか体感し得ないことがある。様々な文化が混ざり合うことでの良さと軋轢。台風の脅威。それらを受け入れてこそ、穏やかな美ら海に、本当の意味で感じ入ることができるのだろう。

次に沖縄を訪れることができるのは、台風が落ち着いた時期だろうか。
観光客として感じられるものはほんの一部かもしれないが、それでも、メキシコ生まれ沖縄育ちのタコライスを、多彩な郷土料理を本島で食べてみたい。

仙台は既に、秋の風が吹きはじめている。

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