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勝手な信頼をされて、苦しい。


昌敬は、子供のころから真面目に見られた。
だから、先生からも信頼を寄せられていた。

「そんなことは、全然良いことじゃない」
と、昌敬は言う。

なぜか、クラスで問題を起こすような子や、扱いにくい子の面倒を見ろと押し付けられる。はっきりと、嫌だと言いたかったのだけれど、
「そんなこと当然だろみたいなテンションでくるから」
断れなかった。

「だからいつも楽しくない」
組みたい相手とか考える前に、班分けをされていたし、結局、仲が良いっていうのが何なのか分からなくなって、ずっと友達もできなかった。
任されて、「処理」をする。そして、一人になってホッとする。
それの繰り返し。

「別にクラスメイトと話はするけれど、友達って、どういうものなんだろうって考えると、全然分からない。だから、結局、時間があると一人で行動しちゃう」

一人で行動すると、自分のペースで行動が出来る。
自分が良いと思うものを、誰かと共有する必要もなく、自分が良いと思うことが出来る。
だけど、そういうのが当たり前になると、寂しくなった。
誰かと共有する必要がないことばかりだと、誰かと共有する喜びのようなものがどういうものなのか知ってみたくなるんだと。人と思いを共有するなんて昌敬にとっては、奇跡のような気すらした。

だから、昌敬は一つのことを言い続けようと決めた。
「友達が欲しい」
と。
誤解される前に、欲しいものはしっかりと口にするんだと。

僕は昌敬と大学で出会い、今日が話すのが二日目だった。
真面目なんだなぁと、思った。
「じゃあ、友達になろう」
「え? いいの?」
「いいさ」
「俺が嫌な奴かもよ」
「そしたら絶交すればいい」
「あ、……ふむ」

昌敬は、ああ、そうかと、腑に落ちた顔をした。

不確定なものに怯えて、約束を先送りにばかりしていると、何も出来なくなると、僕の田舎の友達は言っていた。

そのうち、昌敬にも紹介しようと思う。




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