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story marking

とうとう冬到来という感じの11月が来た。   塗装屋の仕事も始めてから7ヶ月が経過。こんなに仕事が続いてるのは初めてだ。毎日作業車に揺られて現場に向かう日々。早朝5時とかだと寒いし真っ暗だけど朝日と共に現場に向かう感じも悪くないよね。朝まで遊び回ってそのまま寝ずに仕事に行くなんて事も日常茶飯事だ。

今の俺達のマイブーム。それはいわゆるmarkingだ。笑 markingとはよくトンネルとかで見かける落書きだ。リョウと竹田と3人で夜バイクで地元を流してる。お馴染みの単車と原付2台だ。そう。俺達は地元のトンネルやガードレールに他の土地の人間が書き込んだ落書きを見つけてはスプレーで消して新たに地元の名前を上書きするという暇つぶしを見つけてしまったんだ。笑  3人いるから色も3色だ。俺は青。リョウは赤。竹田は黒を持ってる。 トンネルとか範囲の広い所はでっかく「白里」とスプレー書きした。そして他の土地の名前が書かれていたらその土地に出向き、その土地のガードレールやトンネルに「白里」の文字を刻んだ。子供のイタズラだが自分達の生きた証を残してる様で楽しい。 これにはルールを3人で決めた。自分の名前を刻むのは禁止。あくまで土地のブランドを作るのが目的だと。それに名前を刻んだら俺達は尾島先輩達からヤキを食らうのも分かりきっていたからだ。           こんな事をすると他の街の不良や暴走族が地元に乗り込んで来ることもよくあってスプレー書きをしてまたされ返されたりの繰り返しだ。笑 イタチごっこみたいだ。

いつも通り仕事終わりに単車で地元を流してると尾島先輩から電話が来た。          「おう、龍二。今何してんだ」        「今地元いますよ」 俺が言うと「ちょっと付き合えよ。家まで迎えいく」尾島先輩の誘いはいつもいきなりだ。笑              「わかりました。速攻帰ります」俺はリョウと竹田に事情を伝えてすぐに家に帰り単車を置いて家の前でタバコ吸って待つ事にした。10分後、白のシーマが来た。尾島先輩の車だ。       「お疲れ様です!」             「おう。乗れよ」              「失礼します!」今日は尾島先輩1人みたいだ。相変わらず爆音で洋楽が流れてる。笑 「今から新宿に知り合いに会いに行くから」と言われた。よりにもよって新宿か。。しかも作業服着替えれば良かった。。なんて思ったが断る事は出来ない。「はい。行きましょ!」と返事した。     17歳の俺から見て2つ年上の車に乗った先輩というのはすごく大人びて見えた。だからなんだかんだで俺は先輩達と遊ぶのが楽しかった。普段感じる事が出来ない雰囲気を見せてもらえるからだ。作業車と違ってシーマは乗り心地も良いし変な特別感を感じてた。新宿に向かう道中に川口のユウタと起こした新宿での一件を伝えると「都内は悪いやつ多いかんな〜。分かった。お前は車の中で待ってろ」と言ってくれた。それでも新宿はちょっと嫌だなというのが本音だけど。。埼玉の川口に入るとだんだん雰囲気は都内っぽい街並みになってくる。夜のバイクもいいけど車のドライブも夜は良いよな。 1時間半くらい走って新宿駅前に到着すると相変わらず街のネオンでギラギラしてる。平日の夜11時なのに人も沢山いる。    尾島先輩はドンキホーテの交差点脇に車を停車させた。助手席のダッシュボードを開けてなにやら紙に包まれたものと恐らく金が入った分厚い茶封筒を手にして「すぐ戻ってくるからちょっと待ってろ」と俺に伝えてネオン街に歩いて行った。中に何が入ってるかは聞けなかった。19歳なのにヴェルサーチの時計を付けて全身ハイブランドなそんな先輩に俺は憧れていた。エンジンが掛かったままなので俺は車内でタバコを吸いながら街ゆく人々をボケ〜っと眺めてる。忙しそうにせっせと歩いてるサラリーマンや酔っ払った若者など様々な人が行き交ってた。すぐって言ってたのに30分経過しても戻ってこない。そして俺はまたタバコに火を着ける。フゥ〜〜。窓の外に真っ白な煙が出て行く。冬のタバコってなんかうまく感じる時あるよね。

そろそろ待ちくたびれてきた頃、ようやく尾島先輩が戻ってきた。結局1時間弱くらい掛かった。 茶封筒をまたダッシュボードに閉まって「待たせたな。よし、帰るか」と車を発進させた。何も聞いてないが悪い事してるなというのはなんとなく分かった。けど俺も何も聞かずにいた。地元に向かってる途中の車内、俺は尾島先輩に質問した。                   「尾島先輩って職人とかやらないんですか?」 「ちょっと前までは防水屋やってたけど辞めて今はやってないな」と言うので「もうやらないんすか?」とまた質問。             すると「1日働いて1万じゃ割に合わないかんな」と返ってきた。「まぁ、そうですよね」なんて言ってこっちは1日1万ももらってないわ!なんて思いながらとりあえず飲み込んだ。       「腹減ったな。ラーメン食って帰ろうぜ」と尾島先輩が言うので帰りに幸楽苑に寄ってチャーシュー麺を食った。この日も尾島先輩が奢ってくれた。食い逃げじゃなくてちゃんと会計して。  

「ご馳走様でした。」とお礼して家まで送ってもらった。「また付き合えよ」と言われたので「はい、ぜひ行かせてください」と返して解散した。新宿と聞いた時はドキっとしたが楽しいドライブだったな。時間は深夜2時半だ。今日はいつもより少し早いななんて思ったがたまには大人しくしようと考えそのまま眠りについた。

翌日の仕事は5時半起きだったが3時間近く寝るとやはり体が楽だと実感して目覚めた。気持ちの良い朝だ。今日も現場行ってきます👍

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