見出し画像

胃袋(4月-5月)

あのさ、あのさ。

なになに?

この間ね、鳥が美しいまま死んでいたの。

うん。

とても綺麗だった。

うん。

でもね、絶対に触っちゃいけないんだって。

深い場所にとざされたその沈黙を
ぼくはたまに想像する。

同時に
世界が一変してしまう何かについて
ぼくは考えている。


今月のひとこと
引力/重力/月の裏側/芸術は倫理観の外側に


Cover By 阿久津裕亮

4月胃袋

TIMEについて

目撃しちゃったぜ、って感じ。
特に田中泯さんが水に触れるシーン。その踊りを通して僕はロゴスを理解していく。音楽は「andata」の印象。重厚な層が幾重にも重なっていて重みを感じる。抑揚がなく幾重にも時間の層が重なってる直線的な音。
ロゴスを理解して、夢十夜の語りが始まる。死と目の描写がめちゃめちゃ綺麗。音楽はtri async、life lifeあたりの印象。やがて音楽は直線的な音から離散的な音にバラけていく。一つの音が絶妙に位相がずれていくあの曲、リリースして欲しいな。直線的ではなく、離散的な時間を作りたいと坂本龍一言ってた真意を音楽で理解する。

人間にとっての時間とは、本来は計測できない主観的なもの/「現在」という切り取られた時間を生きているのではなく、過去や未来が溶け合い、流れ込んでくるような、「私だけの時間」/主観的な時間を生きている/”持続しているものは、必然的な法則に従う外的事物とは本性の相違をもつ”/

ベルクソン・時間と自由
https://www.l.u-tokyo.ac.jp/philosophy/pdf/ron38/04-nose.pdf

音楽を聴いてて、時間の層が見えてくるとき。
音楽を作っていて、自分の身体を超えて、心が別の景色を見ているとき。
別の時間が、運んできてくれた景色を直視するには直線的な線や点の集約ではなく、過去と未来の印象。僕は音楽で実感する時がある。言葉にはできない無限の不思議な感覚が過去と未来を心が追い越していく。
ベルクソンはそれを「持続」するものと言っている。持続してきた時間は直線的で相対的なものでは測れない。
「時間というものが自明とされていることへの疑問」から出発した今回の舞台を見てから、その直感的な時間の渦の中に、自分が巻き込まれていく・・・

君は「持続する」音楽を、メロディーで生み出せる。
君は「持続する」時間を、誰かを想うことで生み出せる。
考えれば考えるほど、時間が伸びていくんだ。
まるでカセットテープが伸び切ってしまったみたいに。
そう、何度も何度もそのテープを聞くんだ。
耳を澄まして、歌詞に自分を委ねて、メロディーを君と口づさむ未来を想像して。
ほら、テープはどんどん元のテンポやピッチを制御できなくなる。
そして、それは君だけのテープになるんだ。

直感的な時間軸の中で僕は今試されている。

私たちのエコロジー展について

ジュリアン・シャリエール、制御された炎について。
花火を逆再生すると宇宙が生まれるように感じる。それがたとえ、鉱山や冷却塔、工場から発せられた花火であっても。爆発して生まれるその瞬間に見惚れてしまうのは何故だろう。

デカローグについて

去年の10月ごろからかな、演目が発表されてから楽しみだった作品。
もう楽しみすぎて仕方がないので、はじめて、Blu-rayBOXというものを買った。人間の犯してはいけない十戒をもとに、それぞれ一話完結でドラマ化してるんですけど、どれも全部見終わった後、わ〜〜〜きびし〜〜〜となっています。おすすめです。
演劇でどう演出するのかすごい楽しみなんですけど、今のところ全部いい。
演劇もA・Bも見終わって、しっかりと通い始めている。その場から、解き放たれたパワー、意外と最近は後からじわじわくることが多い。

映像では運命に関する緑のパソコンの跳ね返りの絶望感、舞台では人生はプレゼントのセリフとハグのあたたかさの希望が。

許しとはなにか、罪とは何か。「罪の本当の意味」でググってみる。1時半のスペシャルコース。

「この世は厳しく酷いものだね。僕たちはわけも知らずにこの世に生まれて来てまだ誰も知らないどっかへ行く。僕たちは本当に謙虚でなければならない。無事平穏の美を見なければならない。運命の神も気付かぬほどに。ひっそりと生きていかなければならない。黙ってささやかな片隅で満足し、優しくなろう。それが人生の知恵というものだ。」

モームの月と六ペンス

CALL MY NAMEについて

無限のライブラリーから、次のページを開きたくなる物語に出会うのはとっても難しいこと。
そんなテーマなので、上野の好きな図書館で撮りました。アー写もそこです。あいにくの曇りだったんですが、思えば、曇りの日で一番好きな場所は図書館だったななんて撮影しながら思ってました。どんよりした日の図書館はなんか重厚感と静けさが二倍マシになって最高。
今回の映像は、デジタル空間のライブラリーの中の旅情なので、リアルタイムに反応するインタラクティブなエフェクトを多用して表現してます。大きな窓と対峙したときのこの重厚感。お気に入りのカット。

横浜トリエンナーレ『野草:今ここで生きている』について

野生みが溢れてた写真を撮るには
野生的な営みを通過しなければ
身体を通過して、貫通して、写真に姿勢が現れる。

幸せという詩が好きだった。「蛇口の下で手首にできた泡のブレスレット、」がパンチラインすぎて、一瞬で幸せな時にだけ纏うオーラみたいなのが胸に飛び込んできた。家に帰って朗読もした。

あと坂本龍一がナムジュンパイクの追悼イベントでやったヴァイオリンを引きずる映像も見れてよかった。ボロボロになったバイオリンも見て来た。ボロボロになったことで最後の瞬間の音が持続された時間を持つようになったように見えた。

あ、ここでも壊してた。

『ヴォイドな夢』
ヴォイドな夢がいい
ヴォイドな空間に時間もありゃしないけど
確かに感じる水の中のふたり
聴いたことのない音がここで鳴ってる。
あなたの夢が好き。

マークレッキーについて

レイブカルチャーへの深い愛
あの部屋で感じた解像度はどこかノスタルジックで苦しくて、でも楽しい。ストリートカルチャーのローファイ感を感じつつ、サウンドシステムがポツンとある感じがちょっと不思議だった。そこに立った時に動かされる心。何かが動かされる感覚。

5月胃袋

地中海美術館-モネについて

小さい頃、キングダムハーツをプレイした時、
初めてロクサスの部屋を見た時のあの感じを思い出した。
真っ白で影がなくて、純白。
俺の中の何か、美しいという基準が、更新された。
もう一回、行きたい。
心の中であの空間に立って、リセットされる。
そんな日がこれからいっぱいくるかも。

悪は存在しないについて

見終わったあとうまくバランスが取れない。
静かに殺されたから。自分の中の何かが。
今自分がやりたいこと、描きたいこと、誰かと生きてきたこと。
全てのバランスがまやかしだったんじゃないかって。
映像と物語が描き出した、人間のやばい部分が
俺の心を根っこから引きちぎって、
どっかに置いてきてしまった。
人間をやめたくなるほどのやるせなさ

無理に感情をこめることをやめたセリフには印象が捨象されて、純度が高い原型だけが残っている。その余白に自分は対話をはじめる。自分の生き方や、環境について考える。大切な人のことを考える。自分の好きなことについて考える。嫌いなことについて考える。敵について考える。そうしているうちに、やがて自分の中の大事な、だいじな、心の空洞みたいな部分が揺らぎ始める。そこは普段はとても静かで、誰にも犯されない、自分すらふれてはいない空洞。
劇場から映し出された物語や映像や言葉がその空洞に触れようとしてくる。そして、それは今までの思考や対話をいとも簡単に、「無」に返す。ことごとく「無」にする。自分なりに血を流し、傷んだ心、生まれた感情、すべての思考がその無常によって更地にされる。
そして、そこには自分がいる。何もない自分がいる。
「自分が誰なのか言ってごらん?」そう聞かれている気がする。
僕は誰だろう。気づいたら泣いている。自分が今ちゃんと自分の足で立ってるのかがわからない。大切な人が何も言わず強く手を握ってくれる。やっと自分の息が聴こえてくる。やっと生きてる感じがする。目一杯、ぼくはなく。


(灰色の)青春について

青春の意味を辞書で引き直す社会人2度目の冬。
若くて正気があるとか、起伏が多いとか、色んな意味が書いてあるけど、僕が一際目を引いたものは、「(灰色の)青春|不本意ではあるがやることがない」だった。へえ、ブルーじゃないんだ。灰色なの。

実は青春なんて自分の中になくて、誰かの中に自分を反射させてみたり、時代の中で着飾ったものだったり、時間の中にある一瞬の木漏れ日だったり、そういうものに宿っていて、その時それが青春なんてわからない。振り返った時に染みていたり、ゆらゆらと存在したあの記憶のことをいうのかもしれない。キラキラしてる普通の中にある。今日の話ももうすでに染みてしまったから多分時間が経っていくたびに色が変化していって青春になるかもしれない。青春は僕からでるものじゃない。ある意味では僕の青春は君そのものだったかもしれない。俺らはフーテン、旅上boy。


文藝界/身体が一番わからないについて

規範的な身体から逸脱するテーマ、身体は他者というテーマ。前者は普通を無自覚的に内面化してしまう問題。それはなぜか、生活環境が変わらないという自覚。後者は意識とは別に動いてしまう罪、切り離したい自分の身体。自分の体が他者のように持て余す瞬間。そんな感覚を引きずり持て余すと鷲田清一が表現していた。持て余す中でどうにかしたいという中に青さがあるみたいな話をしていて、ちょうど灰色の青春のMVを編集していた時だったから、自分の中にはない何か自分に反射するものという定義から、「自分の中にあるけど持て余す何か」みたいなものにも変わっていった。
その青さを景色で見ることができるかもないし、詩の世界で見れるかもしれない。

オッペンハイマーについて

IMAXGTで鑑賞。緊張で足が攣りかけた。今回の映像が差し出す緊張感は異常。異常すぎ。こんな映画体験あんたしか作れないよ。偉大な物理学者の実験に連れ出してくれてありがとう。
音楽と効果の使い方、インダストリアルな音とこの映画の緊張感の糸を張り続けたスコアやばすぎ、異常なほどいい
爆風と爆音、抽象的な思考に身を委ねてどんどん感情も乗ってくるんだけど、どんどん自分が幽体離脱していく感じ。
抽象的な考え事をするときにどうトリップするか、音楽的表現でも考えてみたりする。それは、深夜2時の峠を越えたライブハウスでのライトの揺らぎかもしれないし、ジーと鳴り響くシンセの音がやがて自分の中で波になって急に動き出す瞬間かもしれないし、びっくりするぐらいの急展開のあのイントロかもしれない。頭で勝手に音色が鳴り響くこともあるかもしれない。最近アンビエントやノイズを聴いて面白いなと思う瞬間は、自分の思考がその音の形に変わっていって、体に馴染んでいって、一体化するとき。自分の体が分子レベルまで解体されていって、それこそ「外界に開く」感じ。

ビリーアイリッシュ が映画の印象的なシーンにどんな音がなってたか毎回メモを取らされていたという話が好きで、今回も自分でも実践してたんだけど、思い出せないほど一体化してた。でもストーリーの糸はピンとしてる。こういう映画音楽ってあるんだと驚いた。
ストーリーの糸を解くのに精一杯なのに、なぜか小学校の時にみた原爆のDVDとか、そういうのは思い出しちゃう。それでいてきつい結末で脳がグラグラする。人間の残酷な事実を叩きつけられて無力感のまま終了。2回目の鑑賞はきっと今より辛い。俺らは凡庸。

誰がか言ってた、テネットってオッペンハイマー2やん。



4-5月の自由なメモ


身体が切り出された純度の問題だ

本能の部分まで響く声

アメリカンな純喫茶で血を流す

神に誓いてえ/心の運動量


4-5月の自由な歌詞

レモンチェロ

果実酒が僕を通り抜ける
レモンチェロ

通り抜けていいのか
愛はレモンチェロ

通り抜けた時にわかることもある
レモンチェロ

通り抜けてもまだ体に残っている
レモンチェロ

あの時は軽やかだったけど
まだ体に残っている
一層ヘビィになって

レモンチェロ美味しかったです

惑星性質引力

わがままな季節が僕に意地悪する飛行物体
惑星性質引力で、心が追いついていく!
もう忘れられるわけはないよ

みんなの胃袋

CALL MY NAME。音階?コード進行?があやとりを思い出すのに、あちらは冬の曲、こちらは春の曲という感じ。イメージした季節はやっぱり春ですか?MVも柔らかい感じ。(みんなの胃袋)

自分がコード進行まで組んでいないので、詳しく説明できないんですが岡村靖幸のカルアミルクとかビリー・アイリッシュmyfutureのメロとかああいう感じがすき。ピアノは月光やりたくなるし、オーウェンパレットのsong on the beachみたいな徐々に下がっていく中に感じるメランコリーに親近感を感じる。川の横をずーっと歩いてる感じ。坂本龍一はHibariがすき。
実はこれ作ったのは去年の夏頃なんですけど、昨年の冬マスターを仕上げるタイミングで頭の中では暖かい世界のイメージでした。(okkaaa)

ネイルいい!やってみたかった小さなことやってみるの、超ウキウキしますね。他にもやってみたい小さなことありますか?(みんなの胃袋)

ネイルは革命。みんなやって。(やってるか)
はじめてイヤカフをつけた時の感動に似てる、なんか意志が一つ身体に増えた感じ。ファッションだとスカートもチャレンジしてみたい。剣道やってたし。(okkaaa)


テオ・ヤンセン展に行きました。人工物が生き物みたく動く機構を進化させてくのがおもしろかったです。「大きな帆があると微風でも動く」っていう言葉が印象的でした。(みんなの胃袋)


うわ、これ絶対好きなやつだ。帆の話いい言葉だな...推進力あるやつ、見つけちゃえばこっちのもの。ぐんぐん進んでいく。見つけちゃったぜみたいな瞬間がいっぱいあるから音楽やめられねえぜ。(okkaaa)

「KOKUYO MEのある世界」いつも聴いてます。Ballpoint、あそびごころ、Tape Dancing、ねこじゃらし、Be with you、TENNIS、FAIR PLAY、Overflow がお気に入り。イラストも素敵で心地よい!(みんなの胃袋)

ありがとうございます。しっかりこだわった曲がピックアップされてて嬉しいな。アンビエントの興味だったり、ビートの好みだったり、好きにやらせてもらいました。おいおいちゃんと解説もしたいね。(okkaaa)


みんな今月もありがとう。


他愛もない独白を読んでくれてありがとうございます。個人的な発信ではありますが、サポートしてくださる皆様に感謝しています。本当にありがとうございます。