沖田絢悟

Okita Kengo/美術作家/平成元年

沖田絢悟

Okita Kengo/美術作家/平成元年

最近の記事

17.10アメリカ抽象表現主義のコンセプト

 抽象表現主義は1940年代から1950年代にアメリカにて隆盛を極めた芸術の動向です。アメリカは第二次世界大戦で勝利し、世界的に大きな力を握る事ととなります。それに伴って芸術の中心もヨーロッパからアメリカに渡る事となりました。抽象表現主義は芸術の本場の座を手に入れたアメリカにて初めて発生した芸術の動向です。本項ではアメリカの抽象表現主義の制作方法=コンセプトを整理したいと思います。  抽象表現主義(アブストラクション・エクスプレッション)は1940年代の後半から1950年代

    • 現代アートの前史

       今日の芸術は現代アートと呼ばれます。それは視覚的イメージ、歴史的文脈、哲学または政治的考察の3つの要素によって構成されています。作品は絵画や彫刻といった一般的な芸術作品のイメージとは異なり、作品の意図や目的によって技法や媒体(素材)は自由に選択されます。その為、現代アート作品は少なからず何れも意味や意図を含んでいます。展示では様々な要素を展示場所に構成する純粋な絵画とも彫刻でもない形態が用いられます。以上の様な現代アートの形式の成り立ちを当レポートでは3つの歴史区分を設けて

      • Ⅱ.現代アートのはじまり(ⅰ‐c)コンセプチュアル・アート

         コンセプチュアル・アートは1967年のソル・ルウィットによるエッセイ「コンセプチュアル・アートに関する断章」や、代表作家であるジョセフ・コスースが1965年に発表した「1つと3つの椅子」によってその理論や概念が成立されました。河原温も前述の二人に並ぶコンセプチュアル・アーティストの重要人物とされます。デュシャンに代表されるダダイズムの方法が継承されており、設置された物質とそこに内在する意味からなるイメージに着目しており、モダニズムの芸術観のように物質性の追求やそのもの自体で

        • Ⅱ.現代アートのはじまり(ⅰ‐d)ランド・アート

           ランド・アートは自然環境に土木工事を伴うような巨大な作品を設置するアメリカに誕生した動向です。作品は主に設置される土地を変形させる様に作られます。モダニズム芸術のポストモダンの芸術への転換の象徴的な動向として重要とされます。モダンアートにおける純粋な視覚体験を達成しようとする思想は芸術を一般社会から切り離し、世俗的なものから隔離しようとする1929年に設立されたニューヨーク近代美術館(MoMA)はアメリカモダニズム芸術の最高峰と目させ、採用されたホワイト・キューブと呼ばれる

        17.10アメリカ抽象表現主義のコンセプト

          「態度が形になるとき―頭の中に生きろ―作品―概念―過程―状況―情報」

          1969年スイスのキュレーターであるハロルド・ゼーマンにより同国クレストハレにて開催されました。コンセプチュアル・アートをはじめ、ポスト・ミニマリズム、ランド・アートなどのグリーンバーグ理論からの逸脱の見え始めた、作品の形式や形を重要としない概念的な要素の強い作品や、行為や客体を取り込んだ作品を紹介します。ゼーマンは史上初のインディペンデント・キュレーターと目されており、従来の美術館における展覧会を主宰する学芸員の役割とされていた作品の歴史的な価値判断や管理からその役割を改め

          「態度が形になるとき―頭の中に生きろ―作品―概念―過程―状況―情報」

          Ⅱ.現代アートのはじまり(ⅰ‐b)ミニマル・アート

          ミニマル・アートはポップ・アートと共に1960年代に発生した重要な芸術の動向とされており、代表作家のドナルド・ジャッド(1928年-1994年)が1965年に発表した論文「特殊な客体/特定の物体」においてその理論の提唱がなされています。ABCアートやリテラリズムなど様々な呼称が用いられますが、同じく1965年に批評家のリチャード・ウォルハイムが用いたミニマル・アートという呼称が定着しています。抽象表現主義の理論を究極に推し進めた動向であり、色彩、形態や素材が切り詰められ、同一

          Ⅱ.現代アートのはじまり(ⅰ‐b)ミニマル・アート

          Ⅱ.現代アートのはじまり(ⅰ‐a)ポップ・アート

           ポップ・アートは反芸術的な試みと大衆消費社会の雰囲気をもって1960年代より主にアメリカにて隆盛を迎えます。1962年はアメリカにてアンディ・ウォーホル(1928年-1987年)やロイ・リキテンスタイン(1923年-1997年)などの大衆文化にあふれる映画や広告、芸能人などのイメージを流用したポップ・アートを代表する作家の個展が一堂に開催され、ポップ・アートが注目されることとなりました。ポップ・アーティストたちは日常製品や娯楽文化のイメージをモチーフとし、大量に生産し消費さ

          Ⅱ.現代アートのはじまり(ⅰ‐a)ポップ・アート

          Ⅱ.現代アートのはじまり(ⅰ)20世紀後期の美術 ―芸術の終焉、ポストモダンの時代

          現代アートの起源を明確に定めることは難しいですが、現代アート(コンテンポラリー・アート)という呼称は1970年-1980年代頃より使われるようになったといわれます。前章で取り扱った1960年代までの近代的価値観を根源とする芸術をモダニズム芸術とし、1960年代を境に起きる作品に使用される媒体や主題の多様化、アメリカやヨーロッパといった芸術の中心の消失などによる芸術概念の拡張の展開をポストモダン芸術として、歴史に区切りを設けることは可能です。美術批評家のアーサー・コールマン・ダ

          Ⅱ.現代アートのはじまり(ⅰ)20世紀後期の美術 ―芸術の終焉、ポストモダンの時代

          Ⅰ.現代アートの前史(ⅱ)20世紀中期の美術 ―アメリカン・モダンアートの時代

          1924年-1945年 世界大戦開戦  20世紀に入り19世紀までのヨーロッパが中心となる情勢に変化が起こります。アメリカやロシアなどをはじめ、他の国々も植民地を獲得し、技術を進歩させ力を持ち始めます。各国は互いの衝突を避け、獲得した領土を維持する為に武力の等質化を行う勢力均衡を実施します。当時もっとも発展していたイギリスを先頭に実施された制作でしたが、均衡はうまく働かず力に偏りが発生し第一次世界大戦(1914年~1918年)、第二次世界大戦(1939年~1945年)が結果

          Ⅰ.現代アートの前史(ⅱ)20世紀中期の美術 ―アメリカン・モダンアートの時代

          Ⅰ.現代アートの前史(ⅰ)20世紀前後の美術-モダンアートの時代

          (ⅰ-ⅰ)1830年フランス7月革命  芸術の歴史は主に16世紀から19世紀までの「中世(近代以前=プレモダニズム」と、19世紀から始まり20世紀までの「近代(モダン)」、さらに1960年頃からは「近代以後(ポストモダニズム)」という具合の区分けが一般的です。現代アートとは主に1960年代からのポストモダニズム以降の芸術を指して呼称されます。本項ではまず、現代の様な社会環境とともに現代アートの基本的な思想が作られる近代=モダニズムと呼ばれる歴史の転換期を取り上げます。  

          Ⅰ.現代アートの前史(ⅰ)20世紀前後の美術-モダンアートの時代