海をアップデートできるのか その先を見据えて「サスティナブルな社会の創り方 vol02」 ふりかえり
昨今、沖縄を囲む海について、そこに棲む生物やサンゴとの関わり方、そして海流や性質の研究を通じて、世界規模でどう私たちが住み続けられるのか、様々なプロジェクトが増えています。
でも、知っていることは多くないし、ときに知らないうちに海を傷つけていることもあったかもしれません。
7月31日に開催したサスティナブルな社会の創り方 vol02では、中島隆太さん(Okinawa Seaside Laboratory)、呉屋由希乃さん(ジーエルイー合同会社)、REIMER JAMES DAVISさん(琉球大学准教授)、浦崎共行さん(ISCO / SCLAP/JUMBLE 代表)をお招きして、お越しくださった30名の方と約5時間の濃密な時間を過ごしていきました。
*一部内容を編集してお届けしています。
「デスティネーション サスティナブル」を沖縄が体現する
「観光地」と聞くと、世界中を見渡せばハワイ、オーストラリア、カナダ……数え切れないほどスポットがありますよね。
観光立県を掲げる沖縄はどう海を紐づけていけば良いのでしょうか? または紐づけないほうがいいのか、そのヒントとして中島さんは沖縄ならではの価値からお伝えします。
中島さん:
私は、沖縄には日本中、いや世界中の観光地と比べても可能性があると思う。具体的にいえば、デスティネーションサステナビリティ(持続性ある観光地)で抑えておくべきインデックスを満たしていることが多い。
例えば、「Environmental(安全性が高い)」「Social(社会的な信用)」「Supplier(宿泊先が安定して供給できる)」「DMO(ベンチマークの中心となりえる)」
この、デスティネーション サスティナブルの要件を満たしている地域といえば、沖縄やハワイ、オーストラリアなど少数地域しかありません。
だからこそ、持続性ある観光地として沖縄の可能性とは、海や自然への保全を通して、沖縄のアイデンティティの復活。
例えば、個人では幸福度や自己肯定感を向上しつつ、沖縄県全体としては島全体やコミュニティの活力やこれまでのコミュニティの復活を目指すことが「持続的社会の構築」が果たせると思います。つまり、沖縄の海には価値があり、可能性しかないと思うんです。
「良いことは広がらない?」 パッションこそが突破できる秘訣
本人が意識的であっても無意識であっても、ときに知らないうちに海を傷つけていることも。その一つとして昨今取り上げらるのが「サンゴと日焼け止めの関係性」。
なぜならハワイでは、2021年から日焼け止めに含まれる成分のうち、オキシベンゾンとオクチノキサートについて、製品販売と流通が禁止されると言います。では、沖縄では上記の禁止成分だけを順次すればいいのか、それとも他にも有害な成分はないのか。
本当にサンゴにも環境にも優しい製品を目指して、呉屋さんは「サンゴに優しい日焼け止め」を作っています。そのなかで、当時の秘話を交えながら語ります。
呉屋さん:
クラウドファンディングを通して、たくさんのご支援をいただき、「サンゴに優しい日焼け止め」を作ったものの…「サンゴに優しい」は意外とセールスポイントになりにくいことがわかりました。
なぜなら、日焼け止めを使いたい人は、日焼けしたくないのであって、そもそもサンゴの接点が少ない。「サンゴって何?」レベルの方が多いし、自分ごととしてサンゴについての話題が出ることが少ないんです。
サンゴにどんなに優しくて、沖縄の環境にとっても良くてもね。それに追随するように、営業先のメーカーさんに交渉したら「お客さん次第ですね」と断られることも。
でも、逆境にめげずにパッションを持って取り組んだことで、メディアに取り上げてもらったり、知人のひとことからSDGsの「つくる責任 つかう責任」を目的とする企業を目指したり。
私は、たとえ「サンゴに優しい」がセールスポイントになりにくくても、私たちは私たちなりの役割を果たしたい。
具体的に、自社を通して「自然に配慮して遊ぶというカルチャー」「自分ごとに近づける」「日焼け止めに目を向けた先にある問題への疑問を持つ」「一歩を踏み出すことでもう一歩進める」ことだと思います。
呉屋さんのお話を聞き、モデレーターを務めてくださったライマー先生から会場へとアドバイスが送られました。
ライマー先生:
私たちは、教員はどの地域の海を調査する権利を持っています。だから、沖縄県内外をふくめて、これまで漁師の皆さん、ダイビングショップを経営している方、または同じく海を研究をする皆さんとコミュニケーションしてきて。
呉屋さんがおっしゃる通り、商売のポイントは「お客さん」、つまり私たちなんです。つまり、お客さん次第によって、製品の入れ替わりだってありえますよね。
この会場に集まった人たちで、それぞれが置いてほしい店舗のスタッフに一言「サンゴに優しい日焼け止めはありませんか?」と伝えてみませんか。
毎日とは言わずとも、少しずつ繰り返して伝えることで、店舗の経営者に「サンゴに優しい日焼け止め」に認知にもつながりますし、志がもって作られた商品なら沖縄でもっと広まってほしい、小さなアクションが大事なんです。
自分ごとに近づけるために 「海をアップデートする」アイデアソン
トークセッションを終えて、中島さんとライマー先生、呉屋さんが混じりながら、参加者同士で「アイデアソン」を開催しました。今回のテーマは、「海をアップデートする」。
行政からのトップダウンや私たちからのボトムアップ、様々な角度からアイデアと海をアップデートする可能性を探っていきます。
アイデアソンでは、約1時間を通してチームメンバーと、また中島さんや呉屋さん、ライマー先生がこれまでに培った知見を惜しみなく伝えていただきながら進んでいきます。アイデアソンとして発表されたものとして例えば、
「サンゴに優しくない」「海に優しくない」ものを使ったら罰金とする条例にする その罰金は海の保全団体へ寄付される
VRを使って、沖縄県外の学生たちに沖縄の(昔の)海などをみてもらうことで、共感をもって海に関心度をあげる
地図に紐づけてゴミ、岩、漂流物のマッピングサイトを作る
海を休ませるために、地上で生きる私たちは「農作物のやさしい」ものを食べ、海と陸の循環をつくる。
海をアップデートできそうなアイデアが挙がってきました。では、ここからアイデアを実現していくために、私たちは何をすべきなのか、考えていきました。それは、つながることとスモールステップではないでしょうか。
交流会では、「Okinawa Seaside Laboratory」を中心に海のコミュニティをつくっていく。また、ライマー先生の自宅で、アイデアのひとつ「ゴミ0バーベキュー」を実験してみよう、などこれからの展開が広がる機会となりました。
改めて、中島隆太さん、呉屋由希乃さん、ライマー先生、浦崎共行さん、会場にお越しの皆様、ありがとうございました。
Okinawa Seaside Laboratory
ジーエルイー合同会社
会場:おきなわダイアログ
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