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写真のように 第11回 写真にできることはまだ残されているのか!? 展評 「見るまえに跳べ 日本の新進作家 vol.20」東京都写真美術館
「即興 ホンマタカシ」展を取り上げたのであれば、同じ東京都写真美術館で開催中の 「見るまえに跳べ日本の新進作家 vol.20 」を取り上げねばなるまい。毎秋恒例の都写美の「日本の新進作家」展だが、今年は久々に粒ぞろいの作家と作品を集めた、好企画だった。「今年は」と語るのは、当然そうではない回もあるからで、ぶっちゃけ昨年とか一昨年の企画はあまりおもしろくなかった。もちろん、ひとりふたり、光る作品を出品している作家もいるわけだけれど、今年のように粒ぞろいとまで言わせる年はもう10
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写真のように 第5回 写真集だけではわからないこと 展評「石内都展 見える見えない、写真のゆくえ」(西宮市大谷記念美術館)
写真家が表現するメディウムといえば写真集だが、それだけで彼らの意図を十全に理解することはできないし、それに留まる性質のものでもない。写真家・石内都の写真展を見るたび、写真の潜在能力とその深さを思い知る。これまで、国内外石内の展示を見てきたが、その自由闊達な展示空間の使い方と作品の選択にはいつも驚かされる。平面の写真を3次元空間に解き放ち立体的に見せる天衣無縫な想像力、と言うべきか。石内の展示はそれ自体がマジックであり、つねに鮮烈な視覚体験に満ちている。折しも全世界がコロナ禍に
写真のように 第4回 静止した時間が再び動き出すとき 展覧会時評:「写真の都」物語 名古屋写真運動史:1911-1972(名古屋市美術館)
さる2021年3月28日を持って終了した名古屋市美術館開催の『「写真の都」物語 名古屋写真運動史:1911-1972』(以下、写真の都物語)について書いておきたい。本展を取り上げる理由は二つ。きわめて綿密なリサーチを基に企画・実施された2021年前半における屈指の充実した展示であったこと、そして図録の完成度と充実度が半端なく良かったことだ。本稿では全六章からなる同展の展示を振り返り、同展で取り上げられた写真作家と作品をかいつまんで解説し、最後に同展の意義について論じたい。