私は何者か、60
仕事から帰ったら、まず一番に身体を締め付けていたものをぜーんぶ取る。
スゥェットと簡単なシャツに着替えて、ビール。
そりゃー、飲むでしょ。
牛蒡と豚バラのピリ辛辛をあてに飲む。
くーーっと飲んで、それからご飯作り。
窓辺に鎮座する苔玉の紅葉の葉っぱ、どんなに小さくても紅葉の形。すごい。
昨日の夜、山盛り作った野菜たっぷりのおからをあてにもう一本。
ほんまはさっきまで彼と電話で繋がっていた。
バイバイって切った後、六千光年の向こうに、彼が帰って行く。
わたしは、余韻に包まって、それでもご飯を作る。
手を伸ばせば届くところに、実体ではなくても、彼の心があることを、それを私はしあわせと感じる。そこに実体があれば、それはそれですごいしあわせ。
だけど、ないのにある、っていうのがホンマに最高に素敵。
成就した恋を謳うことは退屈極まりないかも知れないが、時は一瞬たりともじっとしていないのだから、何だって生きとし生けるものはそれはそれはスリルに満ちたものだ。
その手を離さず。
その手を離さず。
ないのに、あるものを、離さず、離さず。
私は何者か。
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