小説『クレイジー受験生』①

小説:クレイジー受験生① 著者:沖合愛子
約1000文字
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*あらすじ
免力学は私の生徒の名前だ。
彼が一冊のテキストを持って、
私のところまで歩いてきた。
私に質問を投げかけるが、
私はそれに答えなかった。
その質問とは別に気になったところがあったからだ。

A.序

良い天気だ。
外には桜が咲いていて、その桜の木の下を新入生達が通る。
彼等は、これから始まる新たな学校生活に大きな期待を持っている様子で、とてもキラキラ輝いて見える。
とても絵になる情景である。

しかし、そんなことには目もくれず、私の生徒達は机に向かって必死に何かを書いたり、何かを読んだりしている。
そう、この教室は、高校3年生のクラスである。


今まで、ろくに勉強せずに遊びのことばかりを考えていた生徒達が、この時期になると、急に熱心に勉強をし始める。

受験をするならもっと早くから勉強すべきだとあれほど言っていたのに、大半の生徒達は私の言うことを聞かない。

もちろん意識を高く持ち、自分の将来を見据えて勉強することは非常に良いことだ。

しかし、タイミングを間違えている生徒が多い。

試験の一年前から勉強をしたって遅いのだ。
そんな一年間で身につけた付け焼き刃程度の切れ味では、試験問題を切ることは出来ない。
大学受験はそれほど甘くはない。

まぁ、そうは言ってもやはり、勉強しないよりはする方が良いに決まっている。

生徒がせっかくやる気になっているのだから、それを全力でサポートしてあげるのが我々教師の役目であり、仕事である。 



B.破



そうこう考えていると、生徒が一冊のテキストを持って、私のところまでテクテク歩いてきた。

「先生、連鎖関係代名詞って何ですか。」

メガネをかけた男子。
こいつの名前は免力学。
珍しい名前なので、念のためルビをふっておこう。
めんりきまなぶ、と読む。

今は自習時間。
私はこの学年の受験英語担当であり、英語に関しては随分と勉強した。
もちろん、この手の質問にはすぐに答えられる。
しかし、それよりも気になることがある。


「めんりき君!
一体なんだ、この教科書は!
パンくずだらけじゃあないか!」


パンくずだらけでシワシワの教科書を見て、私は悟った。
こいつ、暗記パンしてやがる。

「むむ、そんなものは決まってるじゃぁないですか。
家でパンを焼いている、その待ち時間の間にこのテキストを使って勉強をしていたんですよ。」

「いや、全ページにパンくずついてるじゃぁねぇか。明らかに暗記パンしてたよね。湿気の多いパンを使ったせいで、教科書シワシワになってるよね。」

「むむ、バレましたか。
本当は教えたくなかったけど、バレちゃぁしょうがないですね。
はいそうです、受験必勝法です。」

C.急

どうやら、勉強熱心な免力学は最近流行りのオンラインサロン『受験生の集い』に参加しているようだ。
そこで、この暗記パンが受験必勝法として紹介されていたとのことである。
ピュアな性格の免力学はこれを真に受けて、食パンを大量に買い込み、毎日5斤もの食パンを食べていたらしい。


「めんりき君、それ騙されてるよ。
そのオンラインサロンはすぐやめな。
暗記パンは漫画の世界の話なんだ。」

ピュアな性格の免力学が傷つかないように、丁寧に説明してあげた。

「そ、そうなんですか。
騙されてましたわ。
ありがとう、先生。」

全く、変な生徒が多いな。



〜続く〜
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