見出し画像

【読書感想】パトリックと本を読む

パトリックと本を読む 絶望から立ち上がるための読書会 ミシェル・クオ 神田由布子(訳) 白水社

一番最初のトニ・モリスンのノーベル文学賞受賞スピーチの引用で泣いてしまった。本を読むということ、言葉をもって自分のものとすること、自分を知ること、語れるということ、そういうことの希望がここにはある。と同時にそういうことの見せる現実、絶望もここにある。そういう本だった。

それ以外には、作者と自分との共通点と相違点が心に引っかかる作品だった。自分のすることが誰にどう思われるかすごく気になる人なんだなと思う。書くに当たっても予防線を張っているのでは?と思わせられる。本当のところはわからない、でも私にはそう言うところがあるから、そうなのかなと思う。でもどう頑張っても違うのはミシェル・クオという人は行動する人だということだ。思考するだけの私、そこにとどまるだけの人に行動する人は眩しい。

それから、教師という仕事の苦みと甘みを感じる作品だったなあと思う。教師を辞めるというのはどのタイミングであっても途中で放り投げてしまったような罪悪感を少し覚えるものだと経験から思う。卒業まで見守れなかった、卒業までは見守った、でも振り返ってヒントを求める場所に私はいない、彼らの卒業は見守ったけれどもその次の生徒たちの卒業は見守れなかった。そして彼らの人生に責任も感じる。私自身は誰かを変えられるとは思っていない、ほんの些細なきっかけになれるかなれないか、それが教師だと思っている。それでも彼らを形作っていく過程にいたこと、その時にできる最大限のことをしていたら、その時に自分ができなかったこと、してしまったことがなければ、と考えてしまうものだ。反対に彼らの人生に何かいいことがあった時、彼等の人生の過程に関われたこといられたことをうれしく思う。そういう気持ちも思い起こされる本だったなあ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?