メディア!コミュニティ!の時代だからこそプロダクト作りが一番大事だよなという話
先日、とある「コミュニティ×飲食」を謳ったお店に行ってきた。
ネットで情報を見て楽しみにしていたのだけど、結果的に少しがっかりした気持ちでお店を去ることになってしまった。
その要因について、帰り道に自分なりに考えたのでまとめてみようと思う。
前提として、このお店のことを批判したいわけではないし、ネガティブな感情を吐露して誰かに共感してもらいたいわけでもない。
今回のケースはきっといろんなことに通じるものがあって、マーケティングを商いにする人間の端くれとして先々の学びになると考えたので、備忘録として残しておく。
「人が集まる居場所づくり」に関わる人にとって、何か気づきがあれば嬉しいです。
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どんなことがあったのか
友達と、「コミュニティ×飲食」をテーマにしたお店に行ってきた。
詳細はボカすけど、そのお店は、店員やお客さん同士の交流を大事にしていて、いわゆる「サードプレイス」としてみんなで楽しく過ごせるような空間づくりを打ち出して運営をしているようだった。
飲食に限らず、こういったコミュニティ要素を持った業態のサービスはこの頃多く見かけるし、僕自身もよく訪れる。中には自分にとってすごく大事な「居場所」ともいえるお店もいくつかある。
今回のお店も、時代にフィットしたコンセプトと写真映えするおしゃれな内装によって、SNSでよく投稿を見かけていたので、以前から一度行ってみたいと思っていた。
平日夜、そのお店に行くのを楽しみに仕事をがんばり、「どんな人に出会えるんだろう」と好きな音楽を聴いてテンションを高めながら電車に乗った。
先についていた友達と店内で合流する。
なんでもない話にしばらく花を咲かせていたが、店員さんが常連さんと思わしき人たちとずっと話していて、こちらに見向きもしない。
メニューも手元にはない。
こちらから店員さんに声をかけて、ようやくメニューを持ってきてくれて、最低限の紹介があった。
なんだか疲れていそうな話し方で、せっかくおしゃれな空間にいるのに、ちょっと気まずい。
注文を済ませると、店員さんはそれ以上のコミュニケーションをとろうとせず、そそくさと常連さんのもとへ話をしに戻ってしまう。
常連さんは常連さん同士で固まっているので、こちらからも話しかけにくい。
コミュニティ系のお店との事前情報を受け、「お客さんや店員さんとの交流」をメインの期待に置いていただけに、店員さんの素っ気なさがやけに気になってしまう。
(もともと僕が寂しがりやで気にしいな性格なのもある)
こだわりのお酒と料理も、店内の妙な静かさと端っこで聞こえてくる常連さんと店員さんの小声での会話が気になって、謎の「壁」を感じてしまい、せっかく美味しいのに全力で味を楽しめない。
トイレの場所がわかりにくい場所にあるにもかかわらず、案内ポップなどがないので店員さんに聞くしかない。
しかし店員さんは常連さんと話しているので、けっこう話しかけにくい。
勇気を出して会話に割って入り、場所を聞いてみるも、これまた素っ気ない態度でなんだか悲しい。
もっとお店の生まれた経緯とか、ドリンクへのこだわりとか、コミュニティをどうやって広げているのかとか、そういう話をしてみたかったのだけど、なんだかそこに居づらくなってしまって店を出た。
見送りだけ妙に丁寧だったので、それが逆に「オペレーションっぽさ」を感じて、やけに考え込んでしまった。
たまたまその日はタイミングが悪かったのかもしれないし、僕がお店のターゲットじゃなかったのかもしれない。
もしかしたら店員さんがものすごく疲れてて、常連さんに助けを求めるような大変な日だったのかもしれない。
そうかもしれないけど、僕と友達がちょっと悲しい気持ちで帰ったのはまぎれもない事実だったりする。
「感動」も「がっかり」も期待値ギャップによって生まれる
人があるサービスを体験して、その評価を決めるポイントはいろいろあると思うが、究極的にはサービスを受ける前と後の「期待値ギャップ」によって良し悪しが決まると思う。
期待値を上回れば感動するし、期待値以下だとがっかりする。
👇図で表すとこんな感じ。
行く前の期待
↓行った後の満足度
今回の場合、事前にかっこいいWebサイトや、TwitterやInstagramでの映えてる写真、「交流に力入れてるコミュニティで楽しいよ」的な口コミを見てから行ったので、期待値はかなり高かった。
しかし、実際に来店してみたら、期待値を下回ってしまい、がっかりする結果となってしまった。
個人的に、店舗体験の価値を決めるのは以下の3つの要素だと思っている。
店舗体験の価値を決める3つの要素(主観です)
①接客・コミュニケーション
店員やそこにいる人とのコミュニケーション、おもてなし
②提供サービス
料理やドリンクなどの提供物のクオリティ
③空間づくり
オリジナリティのある世界観と、親切な動線設計、清潔感
飲食やアパレルに美容院にコワーキングスペース、同じ「店舗ビジネス」でも業態によっても各要素の比重は変わる。
その昔、某美容系予約サービスの悪い口コミの7割は技術や設備ではなく「接客」についてだと聞いたことがある(ソースなし)。
高単価商材や無形に近い商材ほど①の重要性が高まる傾向があるのだと思う。
あくまでもだいぶ主観だけど、今回の「コミュニティ型飲食店(交流要素強めの飲食店)」の場合の①〜③各要素の重要度は以下のような印象。
各要素における今回の期待値と体験したことのギャップを表すとこんな感じ。
【今回の期待値ギャップ】
①接客コミュニケーション
【期待】コミュニティに集まる人と交流したい
↕
【結果】常連さんばかりとの会話によってぼっち感をおぼえてしまった😢
②提供サービス(飲食物)
【期待】美味しそうな料理・ドリンク
↕
【結果】美味しかった😋
③空間づくり
【期待】イケてる空間に行ってみたい
↕
【結果】おしゃれだったけど、トイレの位置がわからない、メニューが少ないなどちょっと不親切な空間づくりだった😐
つまるところ、料理は美味しいし空間はSNSで映えるけど、顧客目線での店舗体験の設計が惜しかったのだと思う。
プロダクトとメディアとコミュニティの話
ここまで書いてきた「店舗体験の価値」の話をさらに抽象化して捉えてみる。
これもちっともMECEではないので、そういう仕事の人には殴られるかもだけど、あるサービスを運営する上で3つの要素が大事だと思う。
1.プロダクト
ここまで前述したようなユーザーの「(店舗)体験価値」の追究
2.メディア(情報の届け方)
(企業発信で)プロダクトに関する適切な情報を適切な形で伝えて、人を集めること
3.コミュニティ
人を巻き込み「共犯者」を増やすための取り組み。
事業者だけでなく、お客さんと一緒に持続的で深くつながる居場所をつくること。
上記の要素を踏まえて、今回のお店の場合はこんな印象だった。
1.プロダクト
料理は美味しいけど、接客という体験価値を構成する要素に課題があった。
2.メディア(情報の届け方)
露出はたくさんしてるけど、プロダクト設計が追いついておらず期待値ギャップを生んでしまっている。
むしろ、「映える」からこそ、期待値ギャップを大きくしてしまう結果に繋がってしまったとも思う。
一時期ツイッターで流行った「ネットで会う約束をした人 / 実際に来た人」のネタみたいな。
↑わかる。
3.コミュニティ
たしかにリピーター、濃い常連さんはいるけど、店員・常連さん含め新たなお客さんへのウェルカム感がなく、「良くない内輪感」が生まれてしまっていた。
コミュニティづくり=常連びいきではなく、共感した人が誰でもまざれるような仕組みづくりだと思う。(サービスを大きくしないなら別)
この頃は、ストーリーテリングのテクニックとかD2Cのいち側面とか、「届け方」の話になりがちだからこそ、プロダクトの基盤を固めることが大事なのだと思った。
店舗体験に課題がある=バケツの穴が空いた状態でメディアで商品を広めようとしても、水はザバザバ漏れてしまう。
水が漏れている状態でコミュニティのメンバーが新しい人を巻き込もうとすると、紹介した人とされた人の間にハレーションが生まれる恐れもある。
プロダクトがあってこそのメディアでありコミュニティ。
「Product is King」なのだと思う。
目の前の人への想像力を働かせることの重要性
これまでに自分が訪れてきたコミュニティ要素を持ったお店を振り返ると、すごく印象に残ったお店が2つある。
アパレルとレストランで業態は違ったけど、両者とも全国飛び回る忙しい経営者の方自らが、お店に初めて行った僕に1時間以上もどうでもいい話や、商品への熱を語ってくれたことである。
しかも、店員さんや近くにいたお客さんを巻き込んで。
僕みたいな、なんでもない人間に対して真正面から興味を示しつつ、自分たちの目指すものを惜しみなく届けようとする「熱」に圧倒され、一瞬でファンになった。
しかも接客を売りにするのではなく、「Product is King」の信念のもと、ゴリゴリに作り込んだ商品があった上で、気持ちの良い接客と空間づくりをやっている。
そして、結果的に人が人を呼び、共犯者が生まれていく仕組みができている。
彼らが魅力的な理由はいくつもあると思うけど、究極的には目の前の人へ想像力を働かせて、ひとつひとつプロダクトを改善してきた結果なのだと思う。
今後、オフライン/オンラインにかかわらず、あらゆる領域において、「いかに人の集まる居場所をつくるか」が問われると思っている。
僕自身も、公私ともにここがキモになるフェーズだとひしひしと感じている。
クソ生意気にこんな記事をまとめてみたけど、明日は我が身、今日も我が身である。がんばるぞ。
できるだけ丁寧に人がヘルシーかつハッピーになれる居場所づくりをしていけたらと思う。
やさしくなりたい。
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