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JCDA(日本キャリア開発協会)のキャリアカウンセリングにとって、最近のテーマとなっているのが『自己概念の揺らぎ』です。

自己概念とは「自分がよしとするモノの見方・考え方」のことです。これは一人ひとりが自らの人生を歩む中で様々な経験し、それを通じて築き上げてきたものです。

そうやって築き上げてきた自分らしいものの見方・捉え方が、何かのできごとをきっかけにグラグラと揺れ動いてしまう・・・それが『自己概念の揺らぎ』です。


わかりやすいケースでは、仕事や家庭でトラブルが起きて悩みを抱えているという状態ですね。「これでいいのか?」「どうしたらよいのか?」と悩むのは、自己概念が揺らいでいる証拠です。

信じてきたものが崩れ去ってしまうほどの大きな揺らぎから、何か自分らしくないと思いながらもあまり気にかけていないような小さな揺らぎまで、その「震度」は様々です。

でも揺らいでいるのは事実です。だから今一度、自分のものの見方・考え方を再確認する・・・というのがキャリアカウンセリングの目的になります。




ここのところずっと『自己概念の揺らぎ』について考えていて、ふと気づいたことがあります。それは『必ずしも辛く苦しい悩みだけではない』『うれしいときにも悩みはある』ということです。

うれしくて悩む?ってなんでしょうね。そこで、こんなケースもあるのでは?と思って、一つ事例をつくってみました。


転職活動中のAさんがいます。30代男性で機械部品の製造と販売を手掛ける会社で大学卒業以来働いてきました。製造部門を経験したのち、開発部門へと異動し、現在に至ります。ここ数年の情勢不安で企業の将来に不安を覚え、妻と娘(小学生)のことも考えて、いまより安定した仕事に就いた方がよいのではと思い、転職を決意しました。
キャリアカウンセラーとともにキャリアを棚卸ししたAさんは、自身のキャリアで培った強みと、本当にやりたいことが見えてきました。どちらも大切なことだと感じていたため、両方を軸として積極的活動した結果、見事X社とY社から内定をもらいました。

X社は、これまでのキャリアを生かして希望する部署で働けそうなのですが、給与はほぼ現状維持ですが今後はアップが見込めそう、その分休日はいまよりも減るという条件です。
現職の会社は産業用機械の製造ですが、X社は半導体部品を取り扱っており、国内生産の企業として注目を浴びています。半導体不足が叫ばれるいまだからこそ、業界としての成長も見込めるように考えています。
面接でのやりとりでは、これまでの自分の経験を高く買ってくれる言葉をかけられ、自分に期待をかけてくれているように感じました。Aさんはやる気が湧いてきて、具体的に働くイメージも抱けた感じがしています。

一方Y社は、大学時代に学んでいた化学分野の企業で昔からやってみたかった仕事です。未経験ではあるものの、学生時代の知識は生かせそうですし、給与は最初大きくダウンしますが努力次第ではアップでき、休日はこれまでより増えるという条件です。
大学時代に化学を専攻していましたが研究職や開発職には縁がなく、製造業界でも化学薬品を取り扱うことから現在の仕事に就いた経緯があります。いまでも社内では知識が役立つ場面もあり、自分の興味関心が化学にあることはうすうす感じています。
面接では、機械製造の部品洗浄や特殊被膜で使われる薬品の製造や開発に関わる部署で働ける旨を聞き、現職の経験も多少は生かせそうですが、それよりも学生時代からの夢だった化学分野の仕事に就けるチャンスに惹かれています。
また、家族との時間もこれまで以上に取れることも魅力に感じています。

いざ2社から内定のお話しをいただき、Aさんはどちらを選ぶべきか悩んでいます。

Aさんの事例

これはわたしの想像ですので、実在のモデルがいるわけではありません。
ですが、あなたにも似たような経験があるのではないでしょうか?




自己概念が揺らぐ経験=悩みとはいっても、必ずしもネガティブなことだけではありません。むしろ「うれしい悩み」というものも存在します。Aさんの場合は、「迷い」という方がふさわしいかもしれません。


ではAさんはいったい“何に”迷い、悩んでいるのでしょう?

いま条件として挙げられたのは、以下の要素です。
・安定した仕事(業界)
・給与と休日
・家族と過ごす時間
・これまでのキャリアを生かす
・興味関心
・やってみたかったこと


もう少し大きな視点で考えると、次の2方向が見えてきます。
・これまでのキャリアを生かす
・やりたいことをする


キャリアを生かすというのは、いまの仕事で培ってきた知識や技術はもちろん、学生時代に学んでいたことも含めて、すべての経験を糧にするということです。
そして自分の持つ能力を十分に発揮して働くことで、期待に応えたい、活躍したいという思いが込められています。

一方で、やりたいことをするというのは、自分の夢です。仕事としてやりたいことはもちろん、個人的な興味関心や、家族と幸せな生活を送ることも含まれます。
生き生きと自分らしい人生を送る、仕事とプライベートの両面を大切にしたいという思いが込められています。


本当なら両方とも大切にしたいところです。でも状況からどちらか一方を選ばざるを得ない・・・となったらどうしますか?

きっとどちらを選んでも幸せになれるのですが、どちらも捨てがたいというとき、考えて悩んで迷って・・・「自分はどうありたいのか」と自身を見つめ直すのではないでしょうか?

それこそが『自己概念が揺らぐ』ということだとわたしは思います。




今回はうれしい悩みにフォーカスして考えてみました。

あなたはどちらを選んでも幸せになれるとしたら、よりどちらを選びたいですか?

そんなことを問いかけて、今日のnoteを閉じます。



明日も佳き日でありますように

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