いま、キャリアカウンセリングの学びのテーマとして「自己概念の揺らぎ」を取り上げています。
「自己概念」とは「よしとするものの見方・考え方」のことで、できごとをどう感じてどう捉えるかの基準となるものです。その人らしい見方・考え方ともいえます。
二人で同じ映画を見てもその感想が異なるように、人によって受け取り方は様々です。だからこそ、その方にはどう見えて・どう考えて・どう感じたのかを理解することは、キャリアカウンセリングにおいて重要な要素となります。
その「自己概念」が「揺らぐ」わけですが、まずは「揺らぐ」という言葉の意味を捉え直してみます。
どうやら、「揺らぐ」とは「固定していたもの」が「何かのきっかけ」で「不安定になること」のようです。
固定していたものが「自己概念」とすれば、それが揺らぐような何かのきっかけが「経験」であり、不安定になるから「揺らぐ」というわけですね。
では「自己概念」が「揺らぐ」とはどういうことでしょう?
「よしとするものの見方・考え方」が「不安定になる」―――
これまでは問題がない(むしろよい)と感じていたことが、何かをきっかけに「本当にこれでよいのだろうか?」と不安になり、判断基準がぐらぐらと揺れていること、と言えます。
一言でいえば「悩む」ということですね。
昨日までは悩まなかったことに、今日は悩んでしまった……
「なんでだろう?」
「どうしてだろう?」
「これでいいのかな?」
「どうすればいいのかな?」
そんな気持ちでいっぱいになってしまう状態です。
なぜ「自己概念」が「揺らぐ」のでしょうか?
それは、それまで「よし」としていた軸が、「実は間違っていたのかも」と思わせるようなできごとに遭遇(=経験)したからです。
例えば、Aさんの事例を挙げてみます。(※すべて創作です)
Aさんにとってのよしとする見方・考え方は「いち早く状況を把握すべき」というものです。そして「部署内で共有すること」を優先しています。
つまり「チームで情報を共有し、今の状況をみんなが知っていること」を大切にしてきたわけです。
また、Aさんが入力を一手に背負うことで部員全員から期待に応えていたという自負や、指示を出した前部長から自分の存在を認められていたという思いもあったでしょう。
それが新部長になり、「数値は正確に」「2度手間は避けて効率を上げる」といった方針に変わったことで、これまでの基準が変わってしまいました。そのやりとりの中でこれまでのやり方をよしと言ってくれなかったために、自分自身が否定されているように感じてしまい、思い悩むことになりました。
この思い悩む状態こそが「自己概念」が「揺らぐ」ということです。
一方、新部長はどのように考えていたのでしょうか?
新部長はAさんのことを思って、これまでの大きな負担を減らすために、新たなやり方を提案したようです。
でも残念ながらAさんにはその真意が伝わっていません。ですから、Aさんと分かり合える機会がなければ、いつまでも避けられてしまいます。
また、Aさんはわかってくれているはずと思っており、きちんと話をしたつもりになっています。ここには新部長の「自己概念」が表れており、「自分が指示をすれば真意が伝わっているはず」と考えている傾向が見受けられます。
Aさんのよしとするものの見方・考え方にはどんな特徴があるでしょう?
Aさんらしさはどこに現れていて、どういう捉え方をしたから揺らいでいるのでしょうか?
もし、Aさんから相談を受けたら、みなさんだったらどう関わりますか?
どんな声をかけて、どんなことを問いかけて、どんな風に悩みを受け止め、そして解決に導きますか?
わたしだったら「新部長から数字は正確にと言われたとき、どんなことを思ったのか?」「その時のやりとりを新部長はどう受け取ってくれたのか」というやり取りについて、もう少し詳しく状況を聞きたいですね。
Aさん自身がどんな思いを込めて仕事をしてきて、その思いが新部長とのやりとりでどう揺らいだのか、そこからいま自分はどんなことを考えるようになったのかを、じっくりと聞いてみたいところです。
その中で、大切にしているもの=自分の軸に気づいてもらうと、Aさんはなぜ悩んでいるのかが紐解けていくはずです。
そして、これからどうしていくのがよいか、きっと自分で答えを導き出せると思うんですよね。
今回は「揺らぐ」ということを取り上げてみました。
わたしもまだ理解しきれていないところもあり、もしかするとこの記事に対して疑問を抱く方もいらっしゃるかもしれません。
よろしければぜひコメントをいただけるとうれしいです。
明日も佳き日でありますように
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