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「なぜ国家は衰亡するのか」中西輝政(著)

 随分前に発売された本ですが、著者が本書でしている指摘は今でも通用するものだと感じます。「大英帝国衰亡史」など壮大な歴史を研究してきた著者だから感じた衰退・滅亡する国の傾向を少し紹介しようと思います。

・「誇り」を失った国は立ってられない

 著者は国民の「モラル」が国家の衰亡・成長においては重要です。

かつてのローマ帝国が古代ギリシア文化への憧れとコンプレックスを持っていたことを例に、文化を自国の歴史文化に取り込むのか、それとも自分たちの文化よりも外来文化を上に置くのかで国家は大きく変わると著者は言います。

 戦後日本をアメリカに媚びる国と見る人もいるようですが、他国を祭り上げて尊崇する姿勢は著者からするとよろしくありません。

重要なのは外部から来た思想や文化を自国の文化・歴史の中に組み込んで昇華することです。

長年の歴史に耐えて現代にまで伝わっている文化はそれだけで相当な正当性を有しています。ですから、外来の文化を自国の文化とつなぎ合わせて理解することで単なる外来文化を自国文化として受容し、日本化することが大事なのです。

 他国の文化の価値を上においてしまうと自国への自信を失います。それぞれの国には独自の歴史によって育まれた文化があるわけで、それは貴重ではありますが無条件に自国文化よりも上だという風に見てはいけません。

他国は他国、自国は自国という風に分けて自国の文化に誇りをもって他国の文化のいいところを自国の文化に取り入れて発展させていくことが自国の誇りを失わずに成長する秘訣です。

・表面的なものを追求しても仕方がない

 政治に限った話ではないですが、今の日本には「哲学が苦手」「考えるのが苦手」という指摘がされます。これは「なぜ?」という問いが立てられないということです。

 確かにこの指摘は当てはまる部分があると思います。「なぜ、それを行うのか」「それはどういう意味があるのか」こういう問いは大事です。ですけど、こういう問いに対する答えを今の政治も有識者もできていないような気がします。

 例えば一概に「財政出動」「財政均衡」とは言うけれども「なぜ?」ということを有識者や政治家が問い続けることは大事なことです。

やはり薄い表明的な議論では人を説得することは難しいです。ですから表面的な議論ではなく、本質的な部分を話す議論が必要です。むしろそれこそが専門家や有識者が行うべきことなのです。

政治家は政策を行う理由を本質からしっかりと説明しなければいけないと言えます。

 安直さを追求して、情報を手にしていくと自分で考える能力を失い、オピニオンリーダーの意見に追従するだけの存在になっていまします。

嫌いな人の主張だから全無視、逆張りするといった行動はよくありません。「なぜ?」ということを考える必要があります。こういう考えができることが何においても重要です。

・終わりに

 日本の衰退要因として著者は後継者を育てられないということや改革に億劫であること指摘しています。

確かに後継者問題は政治だけの話ではなくて方々の業界に言えそうです。後継者不足に悩む中小企業は国内にたくさんあります。伝統工業も同じような問題を抱えています。

 日本人はどうしても表面的な部分で評価をしてしまいがちです。ですけど、表面的な部分は全体の一部でしかありません。だからこそ、本質まで捉えた評価を経験を通して身に着けていくとあなたの力になると思います。

国家を構成するのは国民ですから、国民一人一人が優秀になれば国家は衰亡することはありません。むしろ発展すると言えます。

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