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「『進化政治学』とは何か?」森川友義(著)

※この論文は上記のサイトから無料で見れます。

 今回は本ではなくて論文を読んだ。論文も知識を得るという点は極めて有用な読み物で最新の知見に触れるのは本当に面白い。

 とある動画を見て進化政治学について紹介していたことから興味を持ち、関連する論文を探している中で一番入門っぽいなってことでこれを読むことにした。

※興味を持った理由の動画

 この論文の冒頭にもあるのだが、進化政治学という研究領域は最近出てきたものでまだまだ発達途上の若いものらしい。主に英米を中心に発達してきているらしいが、日本でもこの学問が発達してほしいと思うほどに面白い内容だった。

・新鮮な政治学

 進化政治学において人間は決して特別な生物としての扱いを受けていない。人間もまた「動物」の延長戦でしかないという観点から生物学の観点を柔軟に導入している。

 多くの学問では人間の「理性」や「合理性」というものを中心に展開している傾向があるという立場に進化政治学は立つ。これは面白くまた重要な観点だ。

私は経済学における人間は「合理的」に動くという前提が正確に問題解決を図れると考えてなかった。「理性」があるから人間は間違えない。人間は「利己的」に行動する。これは大きな間違いだ。

行動経済学が注目され始めたのも経済学の前提への疑いだ。進化政治学も人間もまた生物であり、必ずしも「理性」や「利己」が行動の中心にあるわけではないという前提への疑いだ。

 人間の遺伝子から政治における意思決定や政治行動について分析する進化政治学は単なるこれまでの机上の学問とは違うものであることは間違いない。

これまでの政治学は政治現象から見出される仮定に基づいた研究だったが、進化政治学はその仮定を遠ざけ、政治を行う生物としての人間の特徴に重きを置く。これは新鮮な意見だ。

・政治行動を行う人間もまた動物である

 政治とは社会(人間中心)や自然(人間以外が中心)の双方に影響力を持ち、現状を変革する決定を行う力を持っている。そして政治を行うのは人間だ。

私にとって政治とは社会科学と自然科学と人文科学の全てを網羅する複雑な学問だというのが自論である。だから進化政治学は社会科学としての政治学を変えて生物学の観点、進化論などを導入し、より判断を行う人間の生物的特質から政治現象を分析する。

 生物の進化が問題解決によって起きたように政治問題の解決に生物としての人間がどのように取り組みどう進化してきたのか。また進化せずにどのように対処してきたのか。この問題意識と研究は極めて興味深く、これまでの「理性」や「利己」で説明されてきた政治理論への挑戦ということで大きく政治思想などの分野にも影響を与えることになる。

ロベスピエールなど「理性信仰」を行う進歩主義者たちへの意見と真っ向からぶつかるとなることも含めて今後の発展が待たれる学問だ。

 私もこれを機に進化政治学の英語の論文を読んで最新の知見を追おうかなと思った。人間が特別な生物だという観点そのものへの挑戦はどこか人間の驕りを戒める。「アニマル・ライツ」の概念や「ヴィーガン」などの新しい価値観が出てくるなかで進化政治学は今後、個人的に期待したい研究領域である。

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