ドル金利市場、再び動き出す 其の3 - 「仮想通貨」への地平線。

トランプ大統領の為替政策への言及で世界的に株価が下落したことを受け、ドル金利市場ではまた大きく金利が低下。FRBに再利下げを催促する相場となっている。7月12日から8月1日への金利の低下幅もかなり大きかったが、8月7日までに更に大きく金利が低下した。(但し7日の米国市場では引けにかけて株価の反発から急上昇) ↓

金利水準としては、シミュレーションで6か月毎に0.25%づつ、0.50%まで政策金利が下がるとした想定(↓下段)も下回り、2年債に注目すれば、次回FOMCで0.50%の利下げもあり得ると市場は見始めている。

金利市場としては久々に見る大相場である。為替、株を始めゴールドやビットコインに至るまで、同時に大相場となっており、デイトレーダーさん達は稼ぎ時。ただかつて金利を主戦場としていた「損切丸」には、今回の金利低下の動きは、過去の理屈では量れないものに感じられる。

「仮想通貨」への地平線 - 今回の世界的な金利低下は仮想通貨につながっている、と筆者は考えている。仮想通貨やビットコインについてはいろいろと言及させてもらっているが、元プロ(笑)の立場から今回の金利相場から導かれる考察を加えたい。

金利とは法定通貨の値段にあたるもの、と「損切丸」は理解している。この異様に低い実質金利は、ドルや円、ユーロなどの法定通貨に魅力=需要がなくなってしまったことを示唆しているではないかお金を借りれば金利を貰える状態なのに借りる人がいない、というのは異常事態だ。一見高く見えるドル金利も消費者物価(CPI、Consumer Price Index )@1.6%/年率(2019年6月)を考慮すれば、実質金利はほぼゼロである。

今回起きている金利低下は、これまでの金利市場の動きとは全く別次元のものである。本来経済活動の体温を示すとされてきた「実質金利」が世界中で大幅に下がっており、ドイツに至っては日本を更に下回る凄まじいマイナス金利だ( ↓ ご参照)。これは莫大な借金を抱えている各国政府が、法定通貨の減価を目指してきた当然の結果なのではないか。

 *15年ぐらい前だったか、うちの奥さんの郵便貯金が10年満期を迎えた。金利が8%だったので元加方式・複利で10年間で元金がほぼ倍になっていてギョッとした。筆者が子供の頃も「宝くじで1億円当たったら、5%で預金すると利息が500万円貰えるから、それだけで生活できちゃうね!」、というような話が普通だったが、思えばあの頃が最もお金(=法定通貨)に価値があった時代だったなあ、と懐かしくはなる。

さて、ここで仮想通貨の登場である。来年には真打ちである「リブラ」が発行されるかもしれないが、筆者はこれは歴史の必然と考えている。何度も書いているが、仮想通貨と法定通貨の大きな違いの1つが金利が付与されているか、どうか。読み替えれば、中央銀行の金利政策による統制を受けるか、否か、である。ここまで金利が低くなると、仮想通貨と法定通貨の差別化は難しい。仮想通貨が世に出ていく「地平線」が見えてきているのである。

それでは通貨当局はどのように仮想通貨を統制していくのか。筆者は日銀やFRBで行われてきた「量的緩和」のアプローチを用いるのではないかと推測している。つまり物価や経済の動向に沿って仮想通貨の供給量を増減させるのである。現在も他の仮想通貨で発行量を制限しているが、これを金融政策の一部にすれば、理論上通貨をコントロールできるはずだ。

もう一つ、大事な点。トランプ大統領が今盛んに振りかざしている「為替政策」日本もさんざん「円高」を人質に取られて苦労してきたし、今まさに中国が同じ問題に直面しているが、「仮想通貨本位性」に移行すれば、この要因が劇的に変化する。つまりこれまで米国がやってきたように、主要通貨であるドルを盾に為替を人質に取ることができなくなる。これをアメリカ発のフェイスブックが手掛けるというのだから、何とも皮肉な話ではある。おそらく米政府は覇権維持のためにあれこれ手を打ってくるだろうが、これに対し被害者であった日本や中国がどう動くか、なかなか興味深い。米国がいつも主張する「公正な貿易」が真の意味で実現されることになる。

思えば2001年の「9・11テロ」から2008年の「リーマンショック」に至るまで、米国は本土を攻撃されたり大手の金融機関を失ったり、史上初めての出来事が続いた。筆者は、これらを米国型「マーケット資本主義」の終わりの始まり、と捉えている。第2次世界大戦を境に世界の覇権が英国から米国に覇権が移行していったように、米国の覇権はピークを過ぎた。

中国の台頭、トランプ大統領の「アメリカ第一主義」、BREXIT、仮想通貨の登場、そして最近の日韓の紛争でさえも、この大きなの流れの中での必然の出来事であり、間違いなく、今我々は歴史の転換点に立ち会っている

まあ、あまり大袈裟なことばかり言っても自分たちのことはどうするんだ、ということであるが、まずは持っている現金や貯金をどうするのか、よく考えた方が良い。「損切丸」今最も危ない資産は、現金、預金だと思う。ビットコインのドタバタはあまり感心しないが、仮想通貨の動きはつぶさに追った方が良い。とりあえずは「リブラ」の動向であるが、システムや法律が整って今の法定通貨のような利用環境が整備されたら、儲けよう、というよりも資産防衛の観点から利用を真剣に考えた方が良い

それから、ユーロ統一の時に欧州で為替のトレーダーなどが大量に首になったが、為替トレーダーは冬の時代が来そうだ(今でもかなり厳しいが)。筆者の知り合いにもギリシャ・ドラクマとかハンガリー・フォリントとかよく分からない通貨の裁定取引で大もうけしていたトレーダーがいたが、その後職を失ってスペインに移住してしまった。

そういう意味では、ドル円のデイトレードを手掛けている人などは、ビットコイン=BTCなどで少し練習しておいた方がいいかも(笑)。多分この2,3年でもの凄い勢いでいろんな事が変わると思う。考え方によってはこれは大きなチャンスにもなり得るので、しっかり今後に備えておこう。

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