見出し画像

「銀行」主導型経済の "終わり" - "周回遅れ" の日本はぐるっと回って先頭に?

 GAFAに比べると規模は小さいが、2023年のウォール街の「リストラ」計画は数千人規模で結構な数。感覚的には2008年リーマンショック後に匹敵するような暗い雰囲気だろう。

 だから銀行CEO(最高経営責任者)が口を揃えて言う:「米景気はリセッション入り確実」。  (標題添付)は高金利のジャンク債と企業向け貸出の推移だが、確かにこれを見ると先行き悲観的になるのは判る。

 銀行が支配する米国債市場では「逆イールド」が進行し、FRBのメッセージなどまるで無視銀行による国債買いはいわば "反乱" であり、「早く利下げしろ!」と言わんばかりの一種の "脅し" とも取れる。

 だがちょっと待って欲しい。

 アメリカはマーケットを中心とする「金融資本主義」の手法で世界経済を30年以上牛耳ってきた。その間ヘッジファンドが台頭、商品市場等何でもかんでも「売買い」に変え、気候変動の「排出権」まで金融化。それをスワップやオプションなどのデリバティブで ”夢” を演出して肥大化させてきた。その結末がLTCM破綻(1998)でありリーマンショック(2008)だった。この時点で実質「ウォール街の時代」は終わりを告げている。

 はっきり言って「金融資本主義」は限界を迎えており、アメリカの「覇権」後退と無縁では無い。トドメを指したのが「コロナ危機」「金融」は中央銀行の "丸抱え" となり、市中銀行の影響力は大きく削がれた。

 ん?? そう書いてきて思い至ったのが我が国日本である。

 もう20年以上前から中央銀行の "丸抱え" が進行しており、いわゆる「金融の社会主義化」が進んだ。市中銀行は収益力がなくなり、まるで「日銀の子会社」の体バブルの頃はトップ10を席巻した「就職希望ランキング」でも枠外に叩き出され、社会の中での存在感、影響が大きく後退している。

 「日本はアメリカに大きく遅れを取っている」

 自己批判が大好きな日本のメディアは良くこう言う論調の記事を書きたがるが、本当にそうだろうか。確かに事の進捗のスピード感が無く "周回遅れ" の感は拭えない。ところが世の中には不思議な事もあるもので、ゆっくり走っていて気付いたら先頭だった、なんてことが起る。

 "Japanization" (日本化)なんて言い方がされたが、世界中で「金融の社会主義化」が進んでいる。 「量的緩和」が典型で日本が先行、その他にも20年にも及ぶ未曾有の「デフレ」、先行する「少子高齢化」中国で起きている「不動産バブル崩壊」等々、まるで日本は "社会実験" の坩堝世界中が「日本化」に恐れおののいている。だから「日本研究」に余念が無い。

 世界の債務が3京円にも膨らんだ今、「お金」から「モノ」の時代へ。- 「貯める」から「使う」へ。|損切丸|note 移行したのは間違いない。「お金」を主力商品としている銀行が力を失うのは当然と言えば当然で、もはや「銀行の見通し」≠「経済の見通し」

 事実日本で銀行は発信力を失っているウォール街も「先頭ランナー」の日本に続くことになろう。2022年に資産を▼50%以上減らしたファンドが続出したのは必然でもあり、筆者も聞かれたら銀行を就職先には勧めない

 そう言う意味では米国債市場が示す「夏以降の早期利下げ」は単なる銀行の希望に過ぎず、経済実態、特に「インフレ」動向とは合致しないリスクが高い。今は「早期利上げ」を前提に株もFXも原油もビットコインまで動いているが、おそらくウォール街の思惑通りにはならないだろう。

 では「先頭ランナー」日銀はどうか。最新の「バランスシート」@1/10  から紐解いてみよう。

 筆者が気になっているのは負債サイドの「売現先」。直近では▼5兆円にも達している  。

 技術的に言うとファンドやトレーダーがJGB(日本国債)をショート(売り)しているため、JGBをレポ市場で借りてくる需要が高まっている事が主因。だがこれを「資金繰り」で捉えると、日銀が市場から▼5兆円「お金」を吸収していることになる。 "小さな引締め" と言っていい。

 長い間「預金大国」日本は マネーマーケットの「鯨」。|損切丸|note などと呼ばれ、「世界の流動性のアンカー」と見られてきた。だがその1,000兆円もの「預金」を8年かけて ”XXXバズーカ”  ”異次元緩和” で使い果たしてしまった。今世界中のマーケットがJGBで大騒ぎしているのはそのため「YCC上限引上げ+0.25%」なんていう些末な事ではないのである。

 もう一つ気になっているのが個人投資家の動向。最新の「対外証券投資」~1/7 ↓ を見ると、「円高」に振れた局面で+2兆円以上外貨投資で買い向かっている。彼らは真剣に 逃げ出す「お金」。向かう先は...。|損切丸|note を考えており、深刻な「円離れ」が起き始めている。

 これらは何れも円の「お金」が足りなくなって来た状況を示唆しており、実はマーケットでは日本人が思うよりも ”大事” 。何しろ「流動性のアンカー・円」でさえ足りないのだから他の通貨は何をか言わんや。世界中で国債金利が上がっているのはそういうことである。

 2023年のJGB、ひいては「円金利」の注目度は高い日本としても ”外” へ逃げた「お金」を呼び戻すには相応の「金利」が必要になる日本の「資金繰り」を司る日銀・財務省がどういう対応を見せるのか、今年のマーケット動向を決定づける大きな要因になるのは間違いない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?