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モノの「値段」って何だろう? ー 「卵」価格高騰に思う。

 ”卵はМサイズ1パック(10個入り)税込み280円とお店の過去最高価格を更新。2カ月前が205円だったので75円も値上がり(+36.6%)”

 身近なだけに最近喧しくメディアで叫ばれている「卵の値段の高騰」。確かに率にすると+40%近い ”暴騰” であり、たくさん使う食料品店や飲食業では死活問題になっている。だが一般庶民的にとっては@205円が@280円になったところで「しょうが無いな」という話でもある。

 へそ曲がりの「損切丸」はこう考えてしまう 

 「卵1個で目玉焼きを2つ作れるようになったわけでもあるまいし...」

 つまり「卵1個」の価値は全く変わっていない。よく「インフレ」=「物価の高騰」と直訳するが、実は正確ではない「円」=法定通貨での名目の「値段」が上がっただけである。

 例えば今の「値段」なら「卵」36,000個で100万円の「車」が買える。ひょっとすると以前は40,000万個必要だったが「円」を通した価値が変化した可能性がある。その交換比率は「卵」と「車」の需要の強さの差で決まるわけで、こちらも商品価値が変化したわけではない。

 そう、平たく言えば「値段」が上がる ≓「お金」の価値が下がる =「インフレ」ということ。この点をまず踏まえたい。

 こう書いていて思い出したのが2019.11.21に投稿した 「ロボットは商品を買ってくれない」 ー ある経済関連の書籍を読んで思うこと。|損切丸|note の中で紹介した収容所の中での「経済活動」の話

 第二次世界大戦中のドイツ軍の捕虜の間では、商売上手なフランス人がコーヒーと紅茶の "物々交換" の仲立ちをして「商売」したり、喫煙者に絶大な需要があった「タバコ」を介して自立的経済活動が営まれたという。なかには「タバコ」融資までする奴が現われ、まさに「通貨」そのもの

 こう考えてくると、「値段が上がった!」「インフレだ!」と大騒ぎしているが、これは「お金」の問題である事に気が付く。実際戦争終了後に収容所内での「タバコ」の価値は暴落したそうだから、今現在の「お金」「インフレ」を巡る話は基本的にこれと同じ「お金」とは「通貨」を介した国との契約に過ぎず、実はとても脆い

 では「1個28円の卵の値段」はどう計算されているのだろう。

 “飲食店を経営するためには経費を90%以内に抑えないといけない”

 飲食店経営にはFLコスト=「F(=Food)」食材費(材料費)+「L(=Labor)」人件費( ↑ 標題添付)という考え方が用いられるそうだが、経費を@90%以内 ≓ +@10%の利益確保から逆算すると、原材料費、人件費はそれぞれ@30%以内に収める必要がある。残る家賃や光熱費を@30%以内に抑えることでようやく儲けが出る計算だ。

 これを「卵」に当てはめると、原材料費、人件費が共に@8.4円、その他のコストが@16.8円で、やっと1個あたり@+2.8円の利益を生む。ところがエサ代や電気代の高騰で、コストを90%以内に抑えるのが難しくなり、おまけに極端な人手不足+40%近く「値上げ」しても本当に利益を確保できているのかどうか、甚だ怪しい。このままでは「卵」の供給自体が崩壊する。

 「2021年経済産業省企業活動基本調査」:人件費の比率 平均@50.7%
業種毎平均:製造業@50.8%、卸売業@49.5%、小売業@50.0%
(内訳)製造業 @10%~50% サービス業 @40%~60% 小売業 @10%~30% 建設業 @15%~30%

 7割が中小・零細企業と言われる日本では人件費の比率が平均で5割を超えている「円安」「電気・ガス代」ばかりに焦点が当りがちだが、人手不足に伴う「人件費」の上昇はまさに死活問題ドル円が@150円台から@130円台に戻っても、原油価格が@120ドル台から@70ドル台に下落しても「値上げ」が続くのはそのためだ。

 ちなみに日経平均にリストされるような大手上場企業のコスト率は各業界の下限近くであり、やはり規模のメリットは大きい。違う言葉で言い換えれば「生産性」が高いという事になる。例えばユニクロの原価率は@47.6%だが、実は低価格で売っているワークマンより低く抑えられているそうだ。

 かつて「仮想 "通貨” 」と呼ばれた「暗号資産」も一時は "夢の商品" として扱われたが、取引所自体が破綻して酷い目に合う投資家が続出。その "儚さ” を露呈してしまった。もっとも国家の信用が安定しないエルサルバドルのような小国がビットコイン(BTC)を法定通貨に採用したりと「信用」が著しく低い国も存在する。改めて 「通貨」って何だろう。|損切丸|note という疑問に行き着く。

 「損切丸」では何度かこういう note. をしているが、「預金大好き」な日本人はそういう意識が薄い30年も「お金」の価値が上がる「デフレ」を経験したのでやむを得ない面もあるが、「お金」の本質を理解しないと「投資」「リスク」を上手くハンドル出来ずに失敗を繰り返すことになる。

 「お金」=国との契約で最も気を付けなければいけないのは、国には「徴税権」があるという事。だからアメリカも日本も何兆円、何京円「借金」しようが平気国民から取り立てればいいのだから意図的に通貨価値の暴落を放置する「インフレ税」が最も悪質な取り立て方法であり、今我々はその真っ只中にいる。こう考えてくるとMMT(現代貨幣理論)がいかに怪しげなプロパガンダであるかに気付く。

 「卵」1個の「値段」を考える時、特に我々日本人はもっと「モノの価値」に思いを致す必要を感じる「円」や「ドル」は単なる掲示板に過ぎず、それに付随する金利もFX(外国為替)も付属品だ。そういうことを「お金持ち」は熟知しており、だから「資産を減らさないための投資」が身についている。金額が大きくても小さくても投資効果は同じなので、彼らに学ぶ点は多い。 ”羨ましい” だけだと、前に進めない。できれば "実践" したい。

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