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消えゆく「マイナス金利国債」Ⅳ ー 遂に10年ドイツ国債が "ゼロ" に 。

 消えゆく「マイナス金利国債」 ー 金利の ”パラダイム・シフト” 。|損切丸|note を書いたのが2021.2.26ほぼ1年ぶりの「悲願達成」(苦笑)。ついにドイツ国債が "ゼロ" に到達した。

 銀行の立場からすると、いくらマーケットで憶測投機が起きても、政策金利が@▼0.50%でロックされている以上、保有国債をそれ以上の金利で売るのは躊躇される。実際「マイナス金利国債」脱却といっても、ドイツ、スイスなど格付の高い国債の9年以下はまだマイナス金利のまま。足元の金利コストを預かる「資金繰り」担当者としては、国債を売れば当座預金に残った「お金」に@▼0.50%をチャージされるのでなかなか売りに行けない

 だからこれまでの1年間、10年ドイツ国債は@▼0.20%近辺が壁となって何度も跳ね返されていた。それが10年超の長期金利がプラスになるのは、FRBによる「利上げ」が極めて現実的になったから。米国債の金利が上昇して金利差が拡大すれば、年金など国際的な金利投資家は当然低金利の欧州国債から乗り換えようとする。やはり ”リアル” な金融政策の影響は大きい

 さて、今の相場の主役「米国債」だが、2月から▼200億ドルもの買取が減らされる影響は甚大。債券の在庫を管理する銀行・証券にしてみれば、これまでのやり方を変える必要がある。▼100億ドル減る住宅ローン債券然り。これも「資金繰り」同様の ”リアル” であり、売り圧力が強まるのは当然。

 5年超のイールドカーブを見ると、「コロナ危機」前、政策金利がまだ@1.5%だった頃の状況に酷似してきている。

 日本国債(JGB)はどうか。黒田総裁は任期期間中(~2023.4)は何が何でも「アベノミクス」維持の立場を崩していないので、アメリカのような変化は期待できないかもしれない。幸か不幸か(おそらく総裁にとっては幸)日本株は米株の "調整" に付き合わされる恰好で下げ、当面「利上げ」議論は棚上げ*日銀・年金による約70兆円の「株買占め」作戦は続行だろう。

 (仮説)日経平均が54,000円に? - 政府・日銀が日本株をもっと買い占めたらどうなるのか? 「日本の収支」から検証。 「逆の目」も。|損切丸|note で自身の「株・裁定取引」の経験から、「日経平均20兆円の買占め ≓ +4000円値上がり」の ”勝手試算” をしている「損切丸」「公的マネーが大株主 8割」 ー 日銀・GPIFによる「株買い占め」。なぜ今更 ”表沙汰” にするのか?|損切丸|note  で国が約70兆円もの株を買占めている状況なら、日経平均は単純計算で+4,000円×70兆円÷20兆円 ≓ +14,000円「嵩上げ」されていることになる。

 米株 "調整" の目処は▼20%程度なので、NYダウで@$30,000.-、日経平均なら@24,000円程度までは見ておいた方が良さそう。そこに**「インフレ」による「通貨価値の減価」が「名目株価上昇」にどれ程織り込まれるか。その辺りは2019~2020年に散々な目に遭った ”クォンツ” (高等数学を用いて株価等の適正値を計るスタイルの投資家)の出番「イールドスプレッド」などが分り易い一例だ。

 **ビットコインなど「暗号資産」については、元々「ゼロ金利」「法定通貨価値の毀損」に伴って登場した、いわゆる「オルタナティブ」(代替資産)なので、「通貨価値」を上げる政策である「利上げ」はやはり逆風だろう。仮に金利が2~3%になって金利収入が得られるようになれば、投資家も無理にリスクを取る必要は無くなる。そのうち「金利付き暗号資産」が出ることになるだろうか。あっ、それは「債券」か(苦笑)。

 そんな中「金利上昇」に逆行するように暴れ出した「灰色のサイ」がいる。そう、中国だ。10年中国国債は「利下げ」を受けて遂に@2.80%割れ過去最低の@2.50%台に向けてまっしぐら。

 彼らが「通貨」について抱えているジレンマは深刻で:

 ①「お金」が足りないことを考えれば「人民元高」が望ましい
 ②「貿易」「儲け」を考えれば「人民元安」が望ましい

 この相反する2つの事象を為替・金利政策で実現するのはそもそも無理いくら「利下げ」しても貿易黒字という ”リアル” には勝てず「通貨高」が進む日本人としては不動産の「不良債権」を抱えている様もそっくりで、かつての「円高不況」がフラッシュバックする。

 しかも「独裁体制」の下、 ”処理” を10年近く引き延ばしたため「借金」もアメリカと同等の7,000兆円近くにまで膨張。雰囲気としては***第1次世界大戦後に返せそうにない「借金」を抱えたドイツに近いものがあり、欧州で「ナチス」の亡霊が浮かんでくるのも無理はない。

 ***最近「キングスマン」という英国を舞台にした映画の最新作を見たが、その内容に驚いた。シリーズの1,2作はどちらかというとコメディタッチで諜報員活動を描いていたが、今回は真っ直ぐ「戦争映画」第1次世界大戦前後を舞台に、最後にはヒトラーらしき人物が現れる(ネタバレ御免なさい)。やはり Far-East (極東)に軍艦を派遣するというのは並大抵ではないロシアーウクライナの問題もあり、 ”平和ぼけ” 日本とは雲泥の差がある気がする。娯楽作品にも「ヨーロッパの空気感」が感じられた。

 イギリスのCPIが+5.4%と市場予想を上回り、2月利上げは不可避な状況。欧米で「金利上昇」が ”リアル” に突っ走る環境が整いつつある。その結末は「ハイパーインフレ」「株価急落」「新興国のデフォルト」、果ては「対中国・ロシアの戦争」まで想定できるため、我々市民も様々な可能性を幅広く構えておく必要がある。今回は本当に過去の経験則が当てはまらない ”未曾有の事態” になるかもしれない。今後も「金利」は先行する ”リアル” な情報として重要なサインを送るだろう。要注視である。

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