AI混乱

株も金利もおかしい- AIの「学習効果」も機能不全。

 「株が下がったんで買い増ししましたよ!」

 昨日のテレビニュースで個人投資家と思しきおじさんが嬉しそうにインタビューに答えていた。筆者の感想。「...」。2018~2019年の相場に倣って買いを入れたのかもしれないが、この局面での「ナンピン」(下落時に買いを増やすこと)は正直あまり感心しない(このおじさんも金利市場をチェックすれば判るのになあ)。NYダウも日経も昨日に続けて売られている今日(2/26)、いったいどんな気持ちでマーケットを見ているのだろうか。「落ちてくるナイフ」を掴もうとしたが、血が出るだけでは済まないかも。

 株がここまで下がると既にアジアや観光など一部に限った話ではなく、次のステージに移行。日本について言えばインバウンド関連の銘柄だけでなく、幅広いダメージが心配され始めている。例えば:

・国内消費関連銘柄 ← 外出が減ることによるダメージ

・投資と借入金の多い会社、及びそこに貸し込んでいる銀行

・オリンピック関連銘柄 ← IOCが「東京オリンピック中止」に言及

 株の下値目処については、2003年のSARSを参考に「騙しの株価上昇」の前に 2.1稿.「新型コロナウィルス」がマーケットにも「パンデミック」ー アップデート4  ↓ で立てたNYダウ26,000ドル日経平均21,000円を見ている。もうしばらく時間が掛かりそうだ。

 「金利は下がっているけど下がっていない」

 またなぞなぞみたいで申し訳ないがこれも実情。ちょっと説明しよう。

 金利というとどうしても国債など代表的な商品に目が行く。例えばアメリカ国債は金利が更に低下。*明日にもFRBが緊急利下げしそうな雰囲気だ。

$  FF- 2- 5- 10yr  26 Feb 2020(グラフ)

 実際FRBはFOMC以外の日に利下げを行った実績がある。e.g. 雇用統計直後の電話会議。▼0.25%の利下げなら「議長権限」で実行できるはず。

 そろそろ為替市場などを中心に「FRB緊急利下げ」などの噂が流れてきそう。ドル円もその辺りを警戒して下がっているのかもしれないが、現時点ではどうだろう。皮肉にもパンデミックの悪影響はアメリカでは比較的軽微でダラス地区連銀のカプラン総裁も利下げについて否定的なコメントを出している。NYダウが一気に25,000ドルを割り込むような展開でなければ早期利下げは望み薄だろう。そもそも金融緩和はウイルスには効かない(笑)。

 これだけ国債金利が下がると金利はみんな下がっていると思いがちだが実は違う。平時は良いが、今のようにデフォルト=倒産、破産が強く意識されると金利が上がる場所があちこちに出てくる。お金を投資したり貸したりする立場から考えてみると分り易い。潰れれば元金は戻ってこないのだから、そんなところにお金を貸したりするだろうか?少なくとも高いリスクに見合う上乗せ金利を要求するだろう。

 これを「金利村」の専門用語で「クレジットクランチ」(Credit Crunch)と呼ぶ。うまくお金が経済全般に行き渡らない状態のことだ。日本語でいえば「貸し渋り」というやつだろうか。こうなるといかに過剰にお金が余っていても、本当にお金の足りないところに流れなくなる。そして破産。子細にはチェックしていないが、社債市場などでは株価が暴落している企業の債券は相当売り込まれている=金利が上昇しているはずだ。

 そして何かと話題のAI。もう株売りの指示を出しているプログラムもあるだろうが、***こうなると売れない。売りたい人ばかりで買う人が極端に少ないからだ。この「市場流動性」の問題は危機がある度に議論されているのだが、自動的に処理できる程甘いものではない。買い手を必死に探さなければならず、おそらく冷や汗で体中びっしょりになる。

 ***高頻度取引HFT、High Frequency Trades)については、「買いバイアス」に傾きがちである点、「損切丸」でも何度か取り上げてきた。みんながニコニコ利食いでハッピーな相場なら自動的に何百万回でも取引がこなせるが、今回のような暴落や修羅場では機械はオーダーをこなせない。だからシステムは「買い」を中心に組まれているという話。車のナビも道が判らなくなると黙ってしまうものがあるが、基本あれと同じで肝心な時に役に立たない。だから機械やシステムは「使いよう」、最後は人である。

 今日(2/26)の日経平均は比較的頑張っているようだ。日銀のETF買入れを待っているようでもあるが、さあどうだろうか。問題は米株の買いポジションが傾きすぎていた事、日本では政府が買いすぎていた事、である。

 「ナンピン」などと元気なことを言っているうちはまだいい。どうしようもなくなって「せめて持ち値まで戻って!!」などと根拠もなく「祈る」ようになったら、もうスパッと諦めた方が良い。売り買いの判断に客観性を失えば、あとは損失が大きくなるだけ。「心のバロメーター」として考えて頂けると良いと思う(←筆者の体験談から)。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?