♪ 地獄へ道連れ ♪ - @3.40%割れの10年米国債金利が示唆すること。
筆者が大学生の頃、世は「バブル」真っ只中。*日本の洋楽業界も意気盛んだった。小林克也さんが司会を務めた「ベストヒットUSA」(今もBSでやっている)は毎週見たし、マイケルジャクソンのミュージックビデオは毎回世間の話題をさらった。
さて、米国債の高騰(金利は急低下)を見ていてふと想い出したのがクィーンのヒット曲 ♪ 地獄へ道連れ ♪ ←” Another One Bites the Dust" 。主だった投資銀行の業績は惨憺たるものが続き、数千人単位の「首切り」もさもありなん。既にボーナス半減を明言するCEOも出てきた。急激な「利上げ」でM&Aや貸出の急減など「収益の柱」が揺らいでいる。
現在のイールドカーブから計ると、2025年に政策金利は@2.75%まで下がることになる。
この状況を見て日本人の「損切丸」が想い出すのは、JGB(日本国債)が@2%台から@ゼロ%まで走った状況( ↑ 標題グラフ参照)。当時銀行は親密企業の「持ち合い株」を大量に保有していた。いわば "隠れ大株主" だった訳だが「高度成長期」で株価が上がっている間は皆ハッピーだった。
それが「バブル崩壊」で暗転する。
大量の「持ち合い株」は銀行経営の重荷となり毎年業績を圧迫。これを ”ヘッジ” する意味合いもあってJGBを大量に買い始めた。*1998年には@2%以上あった10年JGB金利はあれよあれよと@1%を割り込んだ。この間JGBによる「金利収入+キャピタルゲイン」が銀行収益の柱となった。
米銀には「持ち合い株」などの仕組みはないものの、代わりに「米国経済」を人質に取ったように映る。米国経済を数十年に渡って牽引してきた自負があるだけに「利下げしないと大変なことになるぞ!」と凄んで見せているようでもある。
ただ嫌な気配も立ち上がりつつある。
「金利」というものは国全体の雰囲気を変えてしまう "魔力" がある。かつての日本同様、2年で政策金利が▼2%以上下がるような「逆イールド」は市場全体を暗くする。NYダウやナスダックがそれを象徴しているが、株価を潰してしまっては「株本位制」アメリカの崩壊に繋がりかねない。これではウォール街も元も子もない。
「煽るだけ煽って喰いついてきたらズドン!」が常套手段。|損切丸|note で仕掛けたビットコイン(BTC)やWTI(NY原油先物)も金利低下を受けて一時持ち上がったが、さすがに株価の下落に抗し切れず引けにかけて下落。相場の状況が悪い中、幹部社員の数十億円もの「お給料」を維持するために色々と画策しているようだが、雲行きが怪しくなっている。
かつて「持ち合い株」をテコに日本経済を牛耳っていた邦銀勢も今や見る影もない。全く同じとは言わないが、**リーマンショック後に銀行規制が厳格化された流れは欧米も一緒。「金融資本主義」は曲がり角に来ており、今後 「銀行」主導型経済の "終わり" - "周回遅れ" の日本はぐるっと回って先頭に?|損切丸|note が見えてくるだろう。
1点日本(正確には「団塊の世代以外」)と大きく違うのは「インフレ体質」。「インフレ」が体に染みついており、とにかく彼らは「買う」のを止めない。ちょっとガソリン価格が下がればスポーツカーや大型のピックアップトラックなど燃費の悪い車を買い始めるし、住宅ローン金利が下がれば家を買い始める。この点FRBもECBも熟知しており、銀行勢の脅し=国債買い、に応じるどうか、非常に悩ましい。
1970年代に「双子の赤字」=「貿易赤字+経常赤字」に悩まされ「ドル安・株安・債券安」になった主因がまさにそれ。とにかく「インフレ」を抑えないとどうにもならない。反面やり過ぎると経済の「崖落ち」も待っており、 "悪夢" の再現も懸念される。パウエル議長がボルカー元・議長の政策運営にご執心なのはそのためだろう。
更に言えば「日本化」=深刻なデフレはもっと嫌(苦笑)。議長が議会証言で言っていたように " narrow path " (狭い通り道)は延々と続く。まさに ♪ 地獄へ道連れ ♪ 。 "窯の蓋" が開いているように筆者には見えるが、今後も米国債の動きには最大限の警戒が必要になる。
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