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中国経済失速に脅える ”デフォルト予備軍” -「資金繰り危機」は突然訪れる。

  標題添付の「セディ」、どこの通貨かお判りだろうか。筆者も知らなかったがアフリカ・ガーナの法定通貨だ。FXで1ドル=@15セディに急騰(セディ安)から@10割れに戻ったと安心していたら、あっという間に「デフォルト」。もしFXで手張りしていれば、まさに「天国と地獄」

  "ガーナが事実上のデフォルト、大半の対外債務支払いを停止"
 ・ユーロ債や商業ローン、ほとんどの二国間借り入れの返済をしない
 ・9月 公的債務4,674億セディ ≓ 55億ドル、内42%が国内債務
 ・9月 国際収支 ▼34億ドル ← 8月 +16億ドル
 ・先週 国際通貨基金(IMF)から30億ドルの融資を受けることで合意

 おそらくセディ急回復はIMFによる救済が主因だが、1週間も経たないうちに暗転。まあ55億ドル≓7,500億円程度の債務で国外で被害に遭うのはその58%程度なので世界経済を揺るがすことはないと思うが、これだけ急転直下だとガーナの国債を買っていたファンドは大損をした可能性が高い

 「資金繰りに苦しむところは三味線を弾く(=大丈夫な振りをする)」

 これは東上野の支店で融資業務をしていて強く思ったことだが、業績が悪化して苦しい会社ほど ”演技” が凄い(苦笑)。本業と離れた「新規事業」を持ち込んで来たりする時が一番危ない。実際は新たに借りた「お金」を詰まっている「資金繰り」に突っ込んでいたりする

 これは個人も国家も同様であり、どんなに ”いい人” も「お金」が絡むと豹変する。シンディローパーの歌ではないが、まさに "Money Changes Everything"ガーナの例では8月の国際収支+16億ドルがかなり怪しい。会社の決算書もそうだが、国の指標などデータの時系列や数字の解釈を少し変えただけでどうにでもなる。そういえばどこかのアジアの国のCPIも同様の ”操作” があったような(苦笑)。

 オプションデリバティブなどいかに金融技術が発展しようと防ぎようがないのが「資金繰り」「デフォルト」最後はアナログな勝負になる。

 「日本もそうだけど、セディ建でどんどん国債を発行すればいいのに」

 日本も?? ネットでこういうコメントを見かけたが、これは「資金繰り」の本質が判っていない方の発想MMT(現代通貨論)の悪しき影響だが、もしそれが本当なら確かに「デフォルト」は根絶する

 ではそうならないのはなぜか?

 「資金繰り」に窮した会社の例で考えて見よう。

 実はMMT的な発想の "トリック" は古来から存在する。「融通手形」  といってありもしない「商取引」をでっち上げ、銀行から「お金」を引っ張り出すやり方だ。

 MMT的発想で考えれば、何億何十億と「商取引」をでっち上げれば「お金」はいくらでも捻出できる。だが実際にはすぐに破綻「割引手形」という形で毎回「借入利息」を負担するが、それに見合う「利益」を生まないからだ。なにせ「商取引」はでっち上げ。こんな事が続くはずがない。

 この理屈はそのまま「国債」にも当てはまる。「国」の場合は「売上」はGDP、「利益」は税収だ。ガーナの例なら「売上」が上がらないのに「利益」=「国際収支」を架空計上して銀行=IMFから「お金」を引っ張りだそうとしたがその前に力尽きた日本「売上」が横這いなのに社員から「給与天引き」増額を強制したが、逃げ出す社員が増えそうな状況。そうなるともう「売上」は増えない、つまり会社が発展しない

 会社と違って「国」には「通貨発行権」がある。だから「国債」=「借金」を増やすより「お金」をバンバン刷ればいいと思うかもしれない。だが過剰な「お金」が市場に出回ると価値が希薄化=「インフレ」になる主要通貨「ドル」を握るアメリカでさえそうなのだから、経済力の劣る他国は言わずもがな。会社が「お金」の代わりに「商品券」を割増しで「お給料」として配っても皆受け取らなくなる。潰れたら使えないからだ。

 今回のガーナも突然だったが、怖いのはアフリカや南米を中心に過剰な中国依存を深めた ”デフォルト予備軍” がまだまだ続きそうなこと。その原因のほとんどは中国の経済失速だが、不良債権で首が回らず他国に構っている余裕はない。今後もこう言う事例が増えるのは確実で、 "ジャンク" を得意にしてるファンドは戦々恐々だろう。

 中国依存といえば1つ異変が起きつつあるのが「ルーブル」開戦当時1ドル=@140ルーブル近辺まで「ルーブル安」に値が飛んだが、その後@60ルーブル割れまで脅威の回復2022年前半はドルを上回る「最強通貨」だった。それがここに来てジワジワと売られ始めている。株価も失速気味で、RTSI指数は節目の@1,000ポイントを割り込んでいる

 もちろんこの「ルーブル高」には「カラクリ」が存在する  。国内銀行に「ルーブル買い・ドル売り」を禁じ資本規制を敷いた。対ドルのルーブル相場は実質中央銀行の言い値で決まるため、まさに「三味線」状態。

 だがこの「カラクリ」にも「融通手形」同様限界がある。エネルギー売却代金 > 戦費の状態なら維持可能だが「ドル」が枯渇すれば続けられない「お金」の動きはエネルギー売却代金 < 戦費に陥ったことを示唆しており、「戦争」の行方も見えてきている

  "危機" は突然訪れる

 日本も「預金大国」に胡座をかいて「国債無制限買取オペ」なんて "傲慢" な政策を取っていると他人事ではなくなる「通貨安」はまさに「炭鉱のカナリア」(ガス漏れでカナリアが先に死んだりする例え)。国の規模が大きければ「デフォルト」への道筋は長くなるが、それでも手を打たなければズルズルと悪化が続くだけ。

 前稿 やっと動き出す ”低金利の巨人” 。- アルゼンチンの二の舞を避けるために。|損切丸|note で「アルゼンチン化」について書いたが決して大袈裟ではない。いずれ必要なら「金利正常化」は早い方がいいバブルの不良債権処理が遅れて膨大なコストを要した事実を忘れてはいけない。

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