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続・「株式投資」と「金利」の相関関係。

  「金利上昇が株式市場最大の敵」

 書き出しが前編(9/22)と同じになってしまうが、昨日の米株式市場の下落はまさに「株式投資」と「金利」の相関関係。↓ が働いた結果だろう。

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 *NYダウで▼569.38ドルの下げは、金額的にはブラックマンデーの▼508ドル(▼22.6%)を上回るが、率で言えばたったの▼1.6%と遠く及ばない。

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 今日(9/29)の日経は▼800円急落(前場。ちなみにNYダウ先物は+100ドル以上買われている)。確かに「権利落ち」の影響もあるが、それだけでは急落の理由にはならない。それよりも今日は「自民党総裁選挙」「日経平均先物<日経平均」の逆転現象は解消”やはりそういうことか” 。”見えざる手” が働いていた証拠だ。

 2018年以降、多くのヘッジファンドが運用成績でS&Pなどの株価指数の上昇率を上回れず、不調が続いた。特に「理論」で攻める「クォンツ」の不調は深刻で「クォンツは死んだ」とまで言われるようになった。ロボット工学ロケット理論まで学んだ "超優秀" な学生を集めて運用していたファンドもあったというから「正しい投資をしているのに何で?」という思いも強かったはず。"馬鹿になって" 指数だけを買っていた投資家に負けたのだから。

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 理由ははっきりしている「過剰流動性」だ

 当然と言えば当然だが「クォンツ」の理論はそれまでの「平常時のマーケット」がベースになっている。だがそこへ突如「黒田バズーカ」なる ”異物” が登場し(2013年)世界的「過剰流動性相場」の幕が開く

 この10年どれだけ ”変貌” があったのか、@2011年1月と@今年8月の「日銀バランスシート」 ↓ を比較してみよう。今がどれだけ ”異常” か、お判り頂けると思う。 

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 **「日銀バランスシート」は約7倍に膨張し、国債(JGB)の半分は日銀が ”買占め”日銀に保有国債を剥ぎ取られ「お金」を押しつけられた銀行は運用収入を失い困窮。結果として米国債などドル建債を中心に約400兆円もの「外債運用」(為替直先を使ったヘッジ付)をする結果になり "海外" に「過剰流動性」を生み出す。これがその後の米株上昇の原動力となった。

 **「平常時」なら「日銀当座預金」は10兆円余りの「準備預金」+α の数字に落ち着く。例えば市場金利が@1%なら、金利が付かない「準備預金」に「お金」を必要額以上に積むのは▼@1%の損。これが本来の「金利の役割」だ。誰かが上手い表現をしていたが「金利の付く市場で ”お金” は ”ババ抜き” だが、ゼロ金利になって ”エース” になった」。つまり運用しても置いたままでもゼロ収入なので、置いたままの方が得という意味。

 もう一つ目を引く変化が「株・ETF」。現在の36.7兆円時価@41兆円程度)は金額的には大した事はないが、大手新聞も書いた「公的マネーが大株主 8割」 ↓ は周知の事実であり、市場の需給を歪めているこんなことをしているのは日銀だけ

 「株20兆円 ”買占め” で日経平均+4,000円上昇」

 これは記事内で書いた、筆者の「裁定取引」の経験に基づく ”勝手試算” だが、まあそれほど的外れでもないだろう。これも国債同様 ”買占め” 行為であり、最近なら「ロビンフッターによるゲームストップ株ショートスクイーズ」 ↓ ご参照)と理屈は同じ。市場シェアの一定量以上を握れば価格は操作できる

 GPIFと合わせると、日本の公的機関による ”株買占め” は約80兆円と想定されるが、仮にそれを一気に売ると▼4,000円×(80兆円÷20兆円)=▼16,000円日経平均が下落することになる...。日本における「真のテーパリング」は「株・ETF」がポイントになるだろう。

 11月に開始が予想されるFRBによる「テーパリング」。それ自体のインパクトは限定的だが、マーケットはこれが「過剰流動性」是正の入口と解釈しており「金利上昇」として織込み始めた。こちらも「過剰」に膨れた「国家債務」があるため、FRBとしてはできるだけ「利上げ」を避けたいが 果たして「インフレ」が待ってくれるかどうか

 いずれにしろマーケットは10年もかけて上った「過剰流動性」の "山頂" を越えて下り始めている。元の位置まで戻るのは無理だろうが、道中様々な障害(株価、為替レート、etc.)が待ち構えているだろう。

 「そう言えばこんなだったなあ」

 10年前の「日銀バランスシート」を見返して妙に感心してしまった。今や「お金余り」は常態化しているが、中央銀行が「本来の仕事」をすれば「お金」は余らない銀行も投資家も有限な「お金」の奪い合いになり、より有効な運用資産を選別するようになる。 ”元” に戻れば「クォンツ」の復活も十分有り得る。

 「黒田バズーカ」が ”引退” の一因となった「損切丸」としては「金利復活」が嬉しくてついドカドカと投稿してしまった(苦笑)。これで相場は大分見やすくなる「割高・割安」など「真面目な投資」が報われる日が来るのが待ち遠しい

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