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"利食い" を急ぐ人々。 ー  マーケットは一旦 "均衡点" に到達。

 米国債金利の上昇基調が急速に衰え、 "凪" 状態になったかのようなマーケット。需給は一旦 "均衡点" に到達したように見える。

 各市場を見ると「利の乗っているポジション」の手仕舞い、いわゆる "利食い" の動きが急だ。ビットコイン@$50,000.-割れ)、金利市場なら金利上昇方向の米国債ショート(売り)の買い戻し、イールドカーブのスティープニングポジションの閉じ、更に「リフレ・トレード」なら物価連動債(TIPS)の売り。e.g. 5年TIPSが急落(金利で+15BP) ↓ 

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 金利上昇に見られるように「流動性相場」真っ只中だった2020年前半までとは市場の様相は一変2021年はただ買いっ放しというわけにはいかない。1年も1/3が過ぎようとする今、とりあえず "利食い" は賢明だ。

 要は変化を先取りしていたマーケットに実体経済が追いついてきたということ。比較対象が落ち込みの激しかった2020年3月という "特殊要因" があったとは言え、3月の米CPIが@+2.6%と強い数字が出たのが典型。ヨーロッパ主要国もドイツ、フランス等軒並み@+1%を超える強い数字だ。

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 物価動向については「損切丸」でも最近記事を書いたが ↓ 、日米で中古物件の価格上昇が激しい。これは日米に限ったことではなく、中国やヨーロッパでも同様だろう。自動車では半導体不足の影響が顕著だ。

米中古車価格

 国内の不動産についても面白い話を聞いた。2021年に入ってまたアパート建築が増えているという。一体なぜ?

 「アパート投資」「サラリーマン大家」2015~2017年にかけて一大ブームになったが、2018年の「カボチャの馬車事件」「スルガショック」を経て崩壊したのは周知の所。サブリースの処理もまだ道半ばだし、銀行の融資基準も厳格化物件価格の90%もローンを組むような "年収500万円" の「サラリーマン大家」は徐々に手掛け難くなるだろう。

 ここに来て需給の引き締まりから再度中古のマンションや住宅価格が上昇。おそらく今回の「アパート投資」は「お金」を持て余している「富裕層」が中心だ。物件よっては依然「空室リスク」は残るが、「お金持ち」にしてみれば固定資産税等の必要経費さえ賄えれば "満室" にする必要もない。要は「法定通貨」のまま保有して資産が目減りするのを避けたいのだ。

 一方「現金」以外の「投資」も万全とは言えない米国の中古住宅市場の動きを見ると、価格が上がったため売上が停滞し始めた ↓ 

米中古住宅

 住宅ローン金利が上昇した影響もあるが、こちらはまだまだ金利水準が低く大きな問題にはなっていない

 この米中古住宅の市況が今のマーケット全体の雰囲気をよく表している急激な物価上昇を先取りして動いてきた株価や不動産だが、ここからもう一段上昇するには新たな材料が欲しいところ。金利もそうだが投資家もトレーダーも気迷いムードになり "利食い" が先行しているというわけだ。

 長期的な物価循環で考えれば、今の需給構造が急にひっくり返るとは思えない金利も株価も何度か調整を繰り返しながら** ”あるべき値段” に向かうだろう。だがこの ”あるべき値段” の判断はプロでも難しい誰でも儲かった2019~2020年前半とは違い、2021年は ”腕” の差が如実に出そうだ。

 **「損切丸」専門の金利に関して言えば、今の水準は十分低金利。住宅市場の例で言えば、ローン借入者が負担を感じるようになるのは複利カーブが急激に上がり始める@5%が1つの目処今の金利水準が株価や不動産価格に影を落とすとは思えない

 ましてこの日本では日銀と金融機関ががっちりタッグを組んでおり、未だ10年国債金利は@0.10%以下。おそらく「外債投資」を減らし、比較的金利の高い20~30年国債の投資を増やしていく算段だ。

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 だがこれも長くは続くまい。今後国債の発行が嵩むが、日銀にこれ以上の国債買取余力がないからだ。バランスシート (@4/20)で見れば550兆円程度が限界だろう。

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 なので国債金利で言うとJGBよりも「外国国債」が先に影響を受けそう。実際邦銀による2月の大規模な売りでオーストラリアの10年国債金利は@1.70%台に押し上げられ米国債金利も ”順調に” 上昇している。いつものパターンだが、JGBは米国債に追随して金利が上昇するだろう。丁度1年ぐらいのタイムラグをおいて日経平均が上昇した現象に似ている

 いつでも ”他人のせい” の日本らしいが、これからも何かに追随する相場が続く可能性は高い。できれば ”自発的に” 動く日本の相場も見たいものだが、あと一世代、20年ぐらいはかかるかもしれない。できれば筆者が生きている間には実現して欲しい(苦笑)。


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