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続・アメリカの需要は本当に弱まっているのか? - 中古車、木材、エネルギー、etc., etc.

 アメリカの需要は本当に弱まっているのか? - 裏で進行する「脱炭素戦争」。|損切丸|note の続編。

 マーケットはどうしても雇用統計CPIなど代表的な指標を追ってしまう習性があるが、実はどちらも遅効性指標「将来価値」を取引する株やFXでは思ったより役に立たない”確定した事実” を伝える傾向のあるメディアの報道が ”市場動向ありきの後付け" になってしまうのもそのせい。

 今回注目したのはアメリカの中古車市場

 12/7 11月マンハイム米中古車価格指数(前年比)▼14.2%(調整前▼12.4%) 中古車販売▼10% 2021年8月以来の低水準

 2021年4月 今度は中古車価格が上昇中? ー ここにも「コロナ後」の供給減少の影響Ⅱ。|損切丸|note でも書いたが、異常な高騰を見せていた米中古車価格。だがここへ来て頭打ちが鮮明化し、CPIの中古車価格も下落に転じている。このまま価格下落が続くのだろうか?

 この状況は “ウッドショック”  ー 「インフレ」の縮図。|損切丸|note に似る。こちらも中古車に先行する形で価格の上昇は止まったが、高値推移が続いている。国内市況を見ても:

 確かに価格上昇で新築戸建ての取引数は減少に転じているが、木材の輸入価格は依然2015年比+1.5~2倍強が続く。筆者の住居地(世田谷区)の周辺でも、あちこちで更地になったと思ったらあっという間に一軒家が建つ。駅前の老朽化したビルも改築ラッシュで、まだまだ需要>供給の状態。

 企業や富裕層など「お金」はあるところではまだまだ余っており「インフレ」を見越して不動産や建物に換えているように映る。やはり「お金」の価値が目減りするリスクを相当感じているようだ。「円安」も気になる。

 このパターンを踏襲すれば、中古車価格もこれまでの急騰は収まるものの、一定の下落の後に高止まりをすると想定できる。人手不足を起点とする潜在的「インフレ」圧力はなかなか解消しそうにない

 それでも@3.4%台に突っ込んだ10年米国債はこの「インフレ」ピークからの下落を反映しており、2023年前半での景気減速を織り込んでいる。銀行は知っている。|損切丸|note だけに、 "リセッション・ヘッジ" で米銀が景気後退、不良債権発生に備えているのだろう。

 筆者が考えているのは ”その先” 。FRBの「利上げ」停止が拙速で "リセッション" が杞憂に終わった場合、「インフレ」がぶり返すことになる。金利低下や原油価格下落、e.g., 12/7 WTI@72ドル台、を好感して株価が上昇基調を辿ればその可能性が高くなる。

 原油価格のことも出たのでエネルギーの検証もしてみよう。今回はヨーロッパの天然ガス価格( ↑ 標題グラフ参照)。

 こちらも木材、中古車同様、一時の狂ったような高騰からは抜け出しつつある「戦争」もあり露産依存脱出も着々と進むが、ゼロにするのはなかなか難しい。元々製造コストが安かっただけに、かなり高い米国、カタール産等に切り換えることは価格ベースの切り上げを意味する。

 これはサプライチェーンからの "中国外し" で安い ”Made in China” を失う事も同様であり、「インフレ」「金利水準」の切り上げに繋がる。「お金」の面で言えば「インフレ」「脱炭素」「SDG’s」の必要経費原油価格もかつてのような@30~40ドルには戻らないし、天然ガスも同様だ。

 そう考えてくると、現在の米国債や欧州国債の金利低下に過度に期待するのは危険アメリカやヨーロッパが来年後半にも「利下げ」に転じるとするのはやや行き過ぎな感もある。

 FRBメンバーも繰り返し釘を刺しているが、仮に景気後退に陥っても潜在的「インフレ」が解消するまでは金利水準は維持される。もし株式市場が「利下げ」に過度に期待しているならしっぺ返しを喰う。筆者は2023年を通してFRBの政策金利が@5%近辺で維持される可能性が50%ぐらいあると見ているが、そうなれば今の「逆イールド」は吹き飛んでしまうだろう。

 もっともろくな「インフレ」対応もせず低金利を維持し、「円安+増税」でコストの国民転嫁を続ける財務省・日銀については全く別の議論になる。こちらは「どこで金融政策の正常化を図るか」

 筆者の感覚が正しければ、FRBの「利下げ」が後ずれして米国債金利が反騰する局面が1つのタイミング日銀総裁の交代が4月なのでどう絡んでくるか。それでようやく@150円を超える「円安」に蓋をすることになるが、それでも一気に@120円台は難しい「正常化」には時間がかかる

 "嬉しいサプライズ" があるとすれば、新首相が「円安」を利した大胆な産業政策の転換を打ち出す事だが、日経平均の@40,000円コール(買う権利)を買うようなもので、せいぜい宝くじの当たる確率ぐらい。それでも買わなければ当たらないか(笑)。

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