「次世代」という言葉はいつから使われてきたのか? 新聞データベースを見てみた
きっかけは、今朝見かけたこのツイートだった。
そういえば「次世代」という言葉は最近よく見かけるけれど、1973年生まれの自分が子どもの頃はそんなに多くなかった。個人的な感覚としてはネットワークだのコンピューターだのが言われ始めた1990年代くらいから増えてきて、近頃は「とりあえず次世代と付けとけ」くらいの頻度になってしまった感じ。
こうスレッドをつなげてみたけれど、ひょっとしたら、感覚値ではなく実際に数として調べたら傾向が出るんじゃないか。ということでPCから扱える新聞データベースで調べてみることにした。
新聞データベースで「次世代」を調べる
パッと使える新聞データベースは朝日新聞・読売新聞にある。
朝日新聞のほうは、以前「朝日新聞記事データベース聞蔵Ⅱビジュアル」という名称だったのが、最近「朝日新聞クロスサーチ」にリニューアルされた。
ただしトップページの案内にもある通り、大学・公共図書館など法人向けの有料サービスなので図書館に行って端末を叩かないと使えない。その点、読売新聞は太っ腹?で、個人利用も可能なデータベース「ヨミダスパーソナル」を展開している。
明治期から現在の記事まで、見出しや記事の閲覧にお金がかかるものの、自分のPCから検索しまくれるのが魅力。というか、お金がかからなかったらずーっと入り浸りそうなので有料でちょうどよかった。
このデータベースは、日付・期間指定を行って見出しを抽出できる。ざっくりした感覚値が果たして合っているのかどうか、ちょっと調べてみた。見出し件数を確認するまでなら無料で可能。
以後、この記事で扱うデータは「ヨミダスパーソナル」による。
いや「次世代」増えすぎでしょ。
全体記事数が増えているとはいえ、昭和に比べたら平成の「次世代」は文字通り桁違い。もう少し細かく「次世代」の登場を見てみた。
読売初の「次世代」は明治期
データベース内の最古の「次世代」は何だろう。調べてみると、読売新聞で最初の「次世代」はこんな見出しの記事にあった。
1902年は明治35年。この年の8月に第7回衆議院議員総選挙が予定されており、公示日が4月22日だった。おそらくこの選挙に関する社説で「次世代」が初めて登場したと思われる。記事は550円払うと読めるのだけど、今回は購入していない。
結構昔から「次世代」があるなと思ったのもつかの間、その後を検索してみると大正・昭和戦前には出てこない。2番目の「次世代」はずいぶん時間が飛んで1955年、この年は2本の見出しがヒットした。
1955年の白井・三迫というと、話題はボクシング。この記事の前日、元世界フライ級王者の白井義男が王座を賭けたリターンマッチでKO負けして、現役を引退した。それを受けての記事なので本当に人的な「次世代」の話だったと思われる。
11月の記事は、3日前の11月15日に保守合同で出来上がった大政党、自由民主党の人事に触れたもの。おそらくここでの「次世代」も人に関する話。
1955年から1年ずつ「次世代」を見る
戦後のこんなポツポツ「次世代」から、どんなふうに1万件超えまでいったのだろう。少し時間はかかるけれど1年ごとに「次世代」を検索してみることにした。
1955年から2022年の今日まで、「次世代」が使用された記事を折れ線グラフにしてみたのはこちら。クリックすると大きめの画像が出ます。
下の表の数値をグラフ化したのが、上記の折れ線グラフ。グラフ上でピークが出来ている年にマーカーを塗った。
1980年代後半から2000年にかけての右肩上がりは、自分の個人的な感覚とも合っている。あーこの辺から増えたよね、と思う。2000年前後のピークは理由も分かりやすい。新世紀という区切りで「次世代」にもスポットが当たったのだろう。
いくつかのピークを検証する
その他のピークはあまり心当たりがなかったので、見出しを確認してみる。
■1972年
てっきり、勝手に「田中角栄さんとかあの辺が関係しているのかな」と想像したら全然違った。集音マイクのような技術的な記事の中にも「次世代」が入っているのは新しい。
■1980年
該当する全見出しを抽出するのは大変なので、年初の5件を見る。
コンピューター技術に関する「次世代」というのは、今よく使われている用法につながっている。人ではなく技術。1980年の終戦体験に関わる記事で「次世代」と使われていたとしたら、たぶん今は「次々々世代」ぐらいなんだろう。
■2014年
どうしてここだけ突出しているのだろう。年初の5件を見る。
これまでの年とは違って、1月から「次世代」が多用されているのが分かる。用法としても現在の感覚に似てきて、技術や国際関係、本来の人的な意味、キャリア関係などさまざまに応用されている。
あえて「次世代通信」で検索してみた
単なる「次世代」だけではなく「次世代通信」としてみたら、いつ頃どれくらいヒットするのだろう。今よく見る言葉の組み合わせではある。
初出はこれだった。
あー、この頃か「次世代通信」が意識されてきたのは。次はしばらく登場せず、1988年に復活して以下続く。
うわっ、懐かしい言葉がいろいろ出ている。今はこの「次世代通信」をはるかに超えた場所にいる。けれどやっぱり「次世代通信」って言っちゃうんだろうな。
ちなみに「次世代通信」の検索ヒット数は、1985年〜今までで656件。
同期間で「次世代」が1万件超えのヒットがあるのを考えると「次世代通信」に絞った語句はそんなに使われていないのかもしれない。
まとめ
朝の興味からここまで調べてみて、「次世代」という言葉は、人関連から始まってずいぶん広く展開しているのだなと思った。抽象度も対象もどんどん広がって、かえって意味が薄まってしまっている気がする。
ただし今回は読売新聞だけに絞ったデータなので、朝日新聞や日経だったらまた傾向は変わるかもしれない。大きく異なるのであればそれは新聞ごとのカラーといえる。同様のグラフ形状になるなら、やっぱり世の中の潮流がそうだったのだと結論づけられる。
「次世代」という言葉に何がプラスされているのか、そこだけ抽出しても楽しいかもしれない。「次世代○○」は今もポコポコ生まれている。
1990年代くらいから増えたという感覚が当たったのは嬉しい。やっぱりそうだったか。の語句でも調べてみたら面白そう。
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