あるメイク動画が女子の変なフィルターを取っ払ってくれた
昔から「女性らしいこと」や「女の子っぽいもの」が苦手だった。もともと赤やピンクよりも青や黒のような渋い色合いが好きだったのに加えて、そういう「女の子っぽいもの」を扱う資格が自分にはないと思っていた。
もっと有り体にいうと「ブサイクにはそんな権利がない」と考えていた。実際、容姿を揶揄されたエピソードなら軽く5、6個は出てくるし、言えないくらい嫌な思いもたくさんしている。
メイクやコスメのようなもろに女子なグッズも苦手だった。根本では、今も「私が触れてはいけない世界」という感覚がある。
社会人になって人並みに「化粧」が求められ、無理くりに顔にいろんなものを塗り始めてはや20年。やっぱり根っこにあるコンプレックスは残ったままだ。
その女子的なものに対する変なフィルターを最近取っ払ってくれたのが、アンジャッシュ児嶋一哉さんのメイク動画だった。最新動画は記事の最後にも載せている。
見かけたのは偶然だった
アンジャッシュと言えば少し前に世間を騒がせて、相方である児嶋さんもそれで注目された時期がある。でも実はその前からコンビでYouTubeに進出する計画があったらしく、準備していた流れで始まったのが児嶋さんの単独YouTubeチャンネル『児嶋だよ!』だと聞いた。
いくつか試行錯誤する企画の中で人気なのがメイク企画。この記事を書くまでにすでに3本がアップ済み。どれも児嶋さんの顔がちゃんと完成したメイクで可愛く盛れている。おおお。
最初はメイクがどうというよりも、ほのぼのしている児嶋さんのトークやスタッフさんとのやり取りが楽しいのでその延長で「メイクのも見るか」とクリックしたのだった。
児嶋さんは1972年生まれで私より1学年上。ほぼ同年代。言ってしまえばもう「おじさん」の年代だ(同じくらい私も「おばさん」だ)。そんな彼が思い立ってメイクをするという。
アドバイザーに、ニューハーフとしてヘアメイク実績があるvanさん。彼女に教えを乞いながら一つ一つメイクのプロセスを見せていく構成。2回目と3回目を見終わって不思議な気持ちになった。メイクに対して前向きに「自分もやってみたい」と思えたからだ。なんでだろう。
児嶋さんが自分で手を動かしてメイクする
これまでもいくつかメイクに関する動画は見たことがある。自分は上手くない自覚があるので、どうすればいいか知りたかった。でもなぜか煮え切らない。逆に児嶋さんの動画にはその「煮え切らなさ」がなかった。
自分なりに考察してみると「児嶋さんが自分で手を動かしてメイクする」のが大きな要因になっている。男性で、メイク慣れしていなくて、コスメブランドの読み方もおぼつかないし、レストランの呼び鈴とカラーコンタクトケースの区別がつかない。2回目「カラコンでーす」とカメラ前に持っていった物体はテーブルの呼び鈴だった。可愛らしい柄だったから仕方ない。
そんな児嶋さんが「これはどうするの」と画面外にいるvanさんに一つずつ教えてもらいながら、目の前の鏡を覗き込んでメイクする。塗りたくるという言葉がぴったりな手つきだったのが、だんだん慣れてくる。
で、見ている人も分かるくらいにメイクの効果が出て、児嶋さんの表情も「おっ」と明るく弾ける瞬間がある。可愛くなった自覚が芽ばえてスタッフさんにもバレバレ。ああ、でもその嬉しい感じは分かるなあ。
今まで見た「男性がメイクでキレイになる企画」は、プロのスタイリストさんやメイクさんがプロの技術を使って顔を変えていた。確かにその技術は参考にはなるのだけど、見ているほうはどこかで「自分には無理なこと」と諦めてしまう。
でもこの動画では、呼び鈴とカラコンケースを間違える児嶋さんでも、アドバイス通りに手を動かしたら確実に変わると教えてくれる。広告的な水増しもないし、べらぼうに高価なアイテムを使っているのでもない。でもできる。
えっ、自分もやってみたらできるかもしれないよ…?
欠点隠しをしない
女子が女子向けのテキストでメイクを学ぼうとすると、避けられないのがコンプレックスや欠点の扱いだ。目が小さいなら大きくして、離れているなら寄せて、エラが張っていたらシャドーを入れて、削げていたらチークで血色を直す。
でも児嶋さんの動画を見ていると欠点をどうにかする話は全然出てこない。アイテムの役割として「影をつけます」とか「目を大きくします」という説明はあるけれど「児嶋さんの顔のタイプはこうなので、ここをカモフラージュするためにこうしましょう」という話は一切ない。
シンプルに、決められた順番で決められたアイテムを決められた方法で顔に乗せていく。そうすると良い感じになる。ああ、これだけでいいのか。
コスメというツールがあって、四の五の言わずにこう使えばこんな効果が顔に乗る。それを多層的にやっていくとメイクされた顔が出来上がる。メイクしていない顔よりは断然キレイに見えて、外からも内からも楽しくなる。
余計な情報のない動画だからこそ、メイクの純粋な楽しさと面白さが全面に出る。メイク後にウィッグと衣装をつけた児嶋さんの様子も、見ているだけでウキウキした高揚感をお裾分けしてもらう感じ。
引き出しをひっくり返してやってみた
ブサイクで自信がなくても、単純に面白いことを指差して「あれやりたい」という衝動だけでメイクするのもありだ。そう思って手元にあるファンデーションやら下地やらを取り出して塗ってみた。
下地は思ったよりも広い面積でガンガン塗ってたな。ファンデーションも児嶋さんが「あー、これは一度歌舞伎役者になるんだね」というくらい塗ってた。眉はペンシルだけでなくてパウダーも使ってた。
真似っこでやってみたら今までとは違うメイクの出来になって、ちょっと嬉しくなった。ああ、私でもメイクしていいのか。
加減がよく分かっていないので、歌舞伎役者な状態で外に出てしまうことがあるかもしれない。でも前よりは確実に「メイクしてみよう」と思えるようになった。それだけでものすごくありがたい。変なフィルターが取れた。
児嶋さんと、技術を提供してくれたvanさんに感謝。
ちなみにこの動画は児嶋さんの奥さんも参考にしているらしい。
手つきも慣れてきた3回目の動画はこちら
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