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2020年のふりかえり(書籍)

新型コロナウイルスに始まって、新型コロナウイルスに終わった感じの2020年ですが、自分の活動について簡単にまとめておきたいと思います。

2020年1月から2020年12月の間に出版した書籍は、下記の通りです。コロナ第一波真っただ中に仕上げて出版したものもあり、とんでもない時に出た本となりました。

① 『大学で学ぶゾンビ学
―人はなぜゾンビに惹かれるのか』
(岡本健 著、扶桑社)

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こちらは、2020年5月1日に扶桑社新書から出版された書籍です。2017年に学術書として出版した『ゾンビ学』(人文書院)を一般向けに改訂し、それ以降に出たゾンビコンテンツも入れ込んだバージョンになっています。

コロナとは全く関係なく企画し、執筆が進んでいたのですが、「京都アニメーション放火殺人事件」に関するマスコミ対応や、その支援募金活動などもあって執筆が遅れていました。

そうこうしているうちに、新型コロナウイルスの感染拡大が進んだことで、それに伴って起こったデマ騒動や、ウイルスにり患した人に対して心ない言葉を投げかける状況についても、触れました。これらはまさにゾンビコンテンツで描かれてきたようなことだからです。

ちょうど去年の年末の話ですが、『鬼滅の刃』のアニメがヒットしたことで、主題歌である『紅蓮華』を歌った歌手のLiSAさんが紅白歌合戦に出たことや、コロナの影響で「全集中展」の東京会場が中止になったことなども加筆しました。

そんなこんなで何とか出版にこぎつけた本書の最後は、以下のように結んでいました。

「新型コロナウイルスによって緊急事態宣言が出された四月七日。自宅にて。早く終息することを祈りながら。」

これを書いている2020年12月31日、おさまるどころか、東京では、新規感染者数が1,337人で、初めて1000人を超える数字が出ました。

大学では2020年度の大半が遠隔授業になってしまいました。後期からは一部対面授業が再開され、非常勤先では講義も対面でおこないましたし、本務校でも面談等で学生さんと久々に顔を合わせました。

本書は、ゾンビを例に「研究」の方法を伝える、というコンセプトで書いていまして、授業の教科書として使っています。遠隔授業の中でも、本書をヒントに研究を進めてくださる学生さんがたくさんいて、嬉しい限りです。


② 『メディア・コンテンツ・スタディーズ
―分析・考察・創造のための方法論』
(岡本健・田島悠来 編著、ナカニシヤ出版)

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本書は、田島悠来先生(帝京大学 文学部 社会学科:講師)との共編著です。共編著とは「共同で編者を務めた書籍」です。田島先生と岡本で、書籍の企画を立ち上げ、執筆者を決め、本を作り上げていったということです。

本書は表紙がリバーシブル仕様という、学術出版社から出る本としては異例の仕掛けがなされています。

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カバーには両面ともJohnHathway先生のイラストがあしらわれています。実は、これ、単に豪華にした、というだけではありません。JohnHathway先生ご本人にも、本文にご登場いただいているのです!!(下記の執筆者一覧をご覧あれ!!)

本文の内容と表紙がリンクしており、表紙両面が補助教材や資料の役割を果たしているのです(^_^)レイアウトをご担当いただいたのは、岡田考博先生(デザイン事務所 プラスアイデア(+ideas)代表、嵯峨美術大学非常勤講師)です。岡田先生の情報はこちら→ https://plusideas-to.com/profile/

もうね、この装丁だけでも是非ご覧いただきたいのですが、中身がまた面白いんですよ!!いや、自画自賛なのはわかっているのですが、自分が「こんな本が欲しい!読みたい!」と思う本を作っていますので、仕方ないんです。すみません。

章タイトルと執筆者は下記の通りです。どの章も本当に面白いのですが、学術書として異例なのが、現役の映像作家にも文章を書いてもらっているところなんですよ。

15章の「ゲキメーションで表現する」の宇治茶監督です。

宇治茶監督は、ゲキメーションという表現手法を駆使して長編映画『燃える仏像人間』(2013)、『バイオレンスボイジャー』(2019)といった作品を生みだしてこられました。

また、今年非常にインパクトのある作品を残された映像作家です。テレビドラマ『妖怪シェアハウス』の回想パートを担当されたり、『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』のオープニングとエンディングの映像を担当されたりしました。

そんな宇治茶監督がゲキメーションという手法に出会い、長編作品を生み出すに至った経緯を事細かに書いてくださいました。大活躍の映像作家ということで、どんなすごい閃きや天才的な発想が?と思いきや、語られるエピソードは実に身近で、「あれ?これだったら自分もできる気が…」と最初の一歩を後押ししてくれます。

JohnHathway先生のご論考と合わせて、「コンテンツを作ってみたい」「もう作っている」そんな方々に是非お読みいただきたい論考です。

他の章も、コンテンツを分析、考察、創造する上で参考になる章ばかりです!そして、やはりこちらもコロナ禍中に出たものですから、「おわりに」で触れています。

③ 『メディア・コンテンツ・スタディーズ』
章タイトルと著者

00 メディア・コンテンツの分析・拡張・創造
―情報社会の進展とコンテンツ研究・教育の必要性
<岡本 健>

01 現代日本のメディア・コンテンツに生きるヴィクトリア朝文学
―『名探偵コナン』と『黒執事』からひもとく系譜
<熊谷めぐみ>

02 笑いをとおしてテレビ番組が描くもの
―コント「てるとたいぞう」の男性同性愛表象から考える
<石田万実>

03 物語構造論からみる宮崎駿監督作品
―『ルパン三世 カリオストロの城』『天空の城 ラピュタ』から『崖の上のポニョ』『風立ちぬ』まで
<小池隆太>

04 特撮の二つの「内側」と図解形式
―少年マンガ雑誌『週刊少年マガジン』の記事分析
<真鍋公希>

05 「読む」ことの最前線へ
―ライトノベルがひらく可能性
<山中智省>

06 初音ミクはなぜ楽器でキャラなのか
―メジャー化の夢から信頼の実験室へ
<谷川嘉浩>

07 いかにして子どもたちはコンテンツ文化に入っていくのか
―YouTube上の幼児向け動画を題材として
<松本健太郎>

08 「クール」な日本は誰のもの?
―「クールジャパン」政策と「セルフ・クールジャパン」表象
<田島悠来>

09 「歴史」をどこからみるか
―『しまなみ誰そ彼』『織田信奈の野望』『ポプテピピック』から
<玉井建也>

10 秋葉原の消費文化の変容と葛藤
―「メイドカフェ」「地下アイドル」から見るオタク文化のリアリティ変容を中心に
<須藤 廣>

11 2.5次元的空間の創出と課題
―舞台・テーマパークにおける『ワンピース』世界観の構築
<須川亜紀子>

12 近代メディアと「メディウム(霊媒)」が出会うとき
―「イタコの口寄せ」にみるリアリティの行方
<大道晴香>

13 海外における日本のテレビドラマの受容
―台湾でのNHK朝ドラ『おしん』『あまちゃん』の消費
<黄 馨儀>

14 ウィキペディアでコンテンツを創造する
―著作権・メディアリテラシー・社会学的想像力
<松井広志>

15 ゲキメーションで表現する
―『燃える仏像人間』『バイオレンス・ボイジャー』を例に
<宇治茶>

16 ピクニックをデザインする
―地域の価値を発見し共有するデザイン
<宮田雅子>

17 被災地住民とともにゲームをつくる
―防災カードゲーム「クロスロード:大洗編」
<李 旉昕>

18 アートと漫画表現の境界新領域における表現と新概念の実験的創生
<JohnHathway>

おわりに:アフターコロナのメディア・コンテンツ
< 岡本 健>

④ 2021年に向けて

というわけで、2020年に出した2冊の本について書いてきました。気になった本がありましたら、是非お手に取ってご覧くださいませ。書店でも取り扱いがありますし、お近くの公共図書館や大学付属図書館にリクエストをかけていただけましたら入れてくださるかと思います。

さて、2021年ですが、すでにかなり完成に近づいている書籍が2冊あります。春ごろまでには2冊とも出版されていると思います。2冊とも共編著で、1つはソーシャルメディアに関するもの、1つは論文・レポートの書き方本です。

コロナ禍はしばらく続きそうですが、そのような中でも、研究の面白さをお伝えできるものをしっかり発信していきたいと思います。今後とも、何卒よろしくお願い申し上げます。

そして、本年も皆さまのおかげで家族一同大過なく、楽しく過ごすことができました。厚く御礼を申し上げます。まことに有難うございました。それでは皆さん、良いお年をお迎えくださいませ(^_^)

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